1.中性脂肪(トリグリセリド)とは
中性脂肪とは、体の体脂肪の大半を占め、一般的には「脂肪」とも呼ばれる物質です。また、食品に含まれる油脂も、大部分は中性脂肪なのです。この「中性」の意味は、酸性とアルカリ性のどちらでもなく中間的な性質であることを表わしています。
中性脂肪は、ブドウ糖が不足した場合にエネルギー源として使われるため、人間の生命活動に重要な栄養素です。
ただし、体内に取り込んだエネルギーが余った場合、肝臓で糖質から中性脂肪が合成され、皮下脂肪として蓄えられてしまいます。そして、食品から中性脂肪を摂り過ぎてしまうと体内に中性脂肪として合成され、肥満や生活習慣病(糖尿病・脂質異常症など)の原因になってしまう恐れがあるのです。
1-1.中性脂肪の基準値
中性脂肪は、健康診断などで血液検査から数値を知ることができます。健康な人の中性脂肪の基準値は、空腹時で30~149mg/dl(デシリットル)となります。体質などによって中性脂肪が高めに推移する人もいますが、肥満傾向の人ほど中性脂肪の数値は高くなります。
食後10~12時間ほど経過後、基準値よりも高い中性脂肪が検出されると「高トリグリセライド血症」とされます。この症状は、中性脂肪やコレステロールの代謝に異常がある状態のことを指します。なお、高トリグリセライド血症は、メタボリックシンドロームを診断する際の基準(医学系の学会が定めた診断基準)にも盛り込まれています。
1-2.中性脂肪が増えることによって引き起こされる病気・症状
中性脂肪が基準値より高い状態である高トリグリセライド血症は「脂質異常症」の一つです。
1-3.脂質異常症とは
以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、2007年に「脂質異常症」と改名されました。脂質異常症は、総コレステロール、悪玉コレステロール、中性脂肪のいずれかの値が高い場合、もしくは、善玉コレステロールの値のみ低い場合に該当します。
2.中性脂肪を増やさない生活習慣
中性脂肪の数値が高い傾向があるのは、肥満気味の人です。肥満気味の場合は、体重を標準体重に近づけることが大切です。標準体重は、身長(m)×身長(m)×22(BMIの基準値)で計算できますので、ご自分の標準体重を計算してみてください。
中性脂肪を増やさないための生活習慣として、「節度ある適度な飲酒量にする」「暴飲暴食を控える」「適度な運動」「ストレスをため過ぎない」などが挙げられます。
3.中性脂肪を増やさない食生活
脂質異常症の予防の基本は、食生活などの生活習慣を改善することです。次のような改善にぜひ取り組んでみてください。
3-1.脂質の摂り方
中性脂肪を増やしやすい食品であるバタ-、生クリ-ム、脂質の多い部位の肉や脂身を控えましょう。植物油や魚油に含まれる不飽和脂肪酸は血中コレステロールを下げる働きがあるため、比較的安心して摂ることができます。
3-2.糖質の摂り方
糖質も中性脂肪の材料となるため、糖質が高いケーキやお酒、ソフトドリンクなどは控えめにすることをおすすめします。
3-3.アルコールの摂り方
また、中性脂肪は、過剰な糖質から合成されますが、それにはアルコールも材料となります。お酒は休肝日を設けながら節度ある摂取(アルコール20g程度)を心がけることをおすすめします。
3-4.脂質の吸収を抑える食材
食物繊維には糖質や脂質の吸収を抑える働きがありますので、食物繊維を多く含む野菜類やキノコ類、海藻などを積極的に摂り入れてみましょう。
生活習慣を見直して中性脂肪を正常値に近づけよう
中性脂肪は、大きな疾病のリスクにつながる重要な値であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
健康診断などで高い数値が出てしまった場合などは、正常値に近づくように食生活や生活習慣を見直しましょう。また、早期発見のためにも、健康診断を定期的に行うことをおすすめします。
監修者情報
氏名:河村優子(かわむら・ゆうこ)
アンチエイジングをコンセプトに体の中と外から痩身、美容皮膚科をはじめとする様々な治療に取り組む医師。海外の再生医療を積極的に取り入れて、肌質改善などの治療を行ってきたことから、対症療法にとどまらない先端の統合医療を提供している。