メタボリックシンドロームを予防する食事・運動のポイントとは?

もうすっかり一般的に使われることが多くなった「メタボ」という言葉ですが、単に太っていることが「メタボリックシンドローム」に該当するかというと、実はそうではありません。

今回は、メタボリックシンドローム(以下、メタボ)の正しい意味や、診断基準・メタボを予防するための生活習慣のポイントを解説します。

メタボについての理解を深めて、健康的な体を目指しましょう。

1.メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは、日本語で「代謝異常症候群」という意味です。

ここでは、メタボの状態について詳しく解説し、放置するとどうなるのかを説明します。

1-1.内臓脂肪のほかに危険因子が組み合わさった状態

メタボは内臓脂肪の蓄積に加えて、脂質異常症・高血糖・高血圧が組み合わさっている状態のことをいいます。自覚症状がほとんどなく、放っておくと他の病気のリスクを高めてしまうのです。

こうしたリスクの源になっている「内臓脂肪型肥満」を改善すると、命にかかわる重大な疾患を減らすことができます。

また、メタボの人は、そうでない人に比べて年間の医療費に大きな差があります。例えば、60~64歳の場合、10万円前後も高いというデータがあるのです。
(参照:厚生労働省「保険者による健診・保健指導等に関する検討会(第7回)」)

健康と家計を守るためにも、メタボを予防することは大切です。

40歳を過ぎたら「メタボ健診」と呼ばれる「特定保健指導」や「特定健診」を毎年受けて、早めの対策をしましょう。

2.メタボリックシンドロームの診断基準

ここからは、メタボの診断基準となる具体的な数値を説明します。

2-1.腹囲

「腹囲」はメタボの診断基準の必須項目で、「内臓脂肪の蓄積」をチェックします。内臓脂肪の蓄積とは、CTスキャンという検査でお腹の輪切りの状態を見たときに、おへその位置の内臓脂肪面積が100cm2を超えている状態をいいます。

これに相当する簡易的な目安としてウエスト周囲径が採用されており、男性で85cm以上・女性で90cm以上です。

内臓脂肪型の肥満は、腸の周りに脂肪が過剰についている状態で、男性に多く見られます。「リンゴ型肥満」と呼ばれており、下半身よりもお腹まわりが大きくなるのが特徴です。

2-1.以下の条件に2つ以上該当する

  • ・血圧:上の血圧が130mmHg以上 かつ(または) 下の血圧が85mmHg以上

  • ・空腹時血糖値:110mg/dl以上

  • ・中性脂肪:150mg/dl以上 かつ(または) HDL-コレステロールが40mg/dl未満

参照:厚生労働省「メタボリックシンドロームの診断基準

3.メタボリックシンドロームを予防するためのポイント

「内臓脂肪型肥満」を防ぐことが、生活習慣病予防につながります。

内臓脂肪は食事でとったエネルギーよりも消費エネルギーが少ないときに蓄積されるため、食事や運動といった生活習慣を見直すことがメタボ予防には欠かせません。

3-1.食生活の見直し

食事を変えると、体も変わります。健康的な体をつくるためには、健康的な食生活を継続していくことが大切です。

主食・主菜・副菜をそろえて、栄養バランスの良い食事をとりましょう。

高血圧予防のために、減塩を心がけることも大切です。食塩摂取量の目安は、男性で一日8g未満、女性で一日7g未満となっています。

また、食べ方も大切です。食事はよく嚙んでゆっくり時間をかけて食べましょう。早食いをする人は、男女ともにメタボになるリスクが高くなる傾向があります。

次に、決まった時間に朝昼夕の食事をとりましょう。夕食後に間食をする人や、就寝前2時間以内に食事をする日が週に3回以上ある人は、メタボのリスクが上がるので注意が必要です。

3-2.運動習慣を身につける

運動不足による肥満はさまざまな生活習慣病の元凶となります。

メタボを予防するには、運動により肥満にならない努力をすることが大切です。また、今の体重から3~4%減らす程度のゆるやかな減量でも脂質異常症・糖尿病・高血圧などの改善に有効だといわれています。

おすすめの運動はウォーキング・ジョギング・サイクリングなどの有酸素運動です。これに加えて、ストレッチや筋力トレーニングを行なうことで運動効果がアップします。

運動は習慣的に行なうことが理想ですが、運動習慣がない人は毎日の生活習慣のなかで、運動量を増やすことがおすすめです。

例えば、エレベーターではなく階段を使う・座っている時間を減らす・家事をテキパキとこなすといったことに気を配るだけでも消費エネルギーが増加し、肥満予防になります。

3-3.しっかり睡眠時間をとる

夜遅くまで起きていると、口がさみしくなって、甘い物などを食べてしまうことはありませんか?

メタボと睡眠時間は一見関係ないようにも感じますが、実は寝不足によって食欲が増加することが知られています。寝不足で脳のパフォーマンスが低下すると、満腹ホルモンが減少し、食欲増進ホルモンが増えるのです。

睡眠時間が6時間未満の人は、7~9時間の睡眠時間の人に比べて30%も肥満になる確率が上がるというデータもあります。

寝不足により食欲が増して甘い物を食べ過ぎると、質の良い睡眠を促すメラトニンというホルモンの分泌を抑制するため、さらに寝不足になるといった負のスパイラルに陥ります。

寝不足によって食べ過ぎてしまわないように、睡眠時間をしっかりと確保することが大切です。

生活習慣を見直してメタボを予防しましょう

メタボの予防には、「内臓脂肪型肥満」にならないように気を付けることが重要です。そのためには、食生活の改善・適度な運動・適切な睡眠時間を確保しましょう。

食生活は、バランスの良い食事を3食きちんと食べること・よく噛んで味わいながら食べること・寝る前2時間以内には食べないようにすることを心がけます。

運動は、毎日続けることが大切なので、適度な運動を取り入れるのがおすすめです。ウォーキングなどの有酸素運動は、気分をリフレッシュするためにもよいでしょう。また、日常生活でテキパキと動くように気を付けることでも効果はあります。

適切な睡眠時間を確保することは、余計な食欲を抑え、食べ過ぎを防ぎ、肥満の防止につながります。寝不足によって食べ過ぎないように、十分な睡眠をとりましょう。

ぜひ、今回紹介したメタボ予防のポイントを参考にして、「メタボ」にならないよう気を付けていきましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医