1.葉酸について
妊娠している方の強い味方である「葉酸」は、私たちの体内でどのような働きをしているのでしょうか。まずは、葉酸の働きや一日の摂取の目安量について解説します。
1-1.葉酸とは?
葉酸(化学名:プテロイルモノグルタミン酸)は、水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種です。野菜などの食材に含まれているほか、サプリメントや加工食品にも使われています。
どちらも葉酸ではありますが、食材に含まれている葉酸(以下、食事性葉酸)は、サプリメントなどに使われている葉酸に比べ、体内に吸収されにくい性質をもつのが特徴です。サプリメントなどに添加されている葉酸は人為的に合成されているので、効率良く葉酸を摂取できるようになっています。
そのため、日本では妊娠可能な年齢の女性に対し、食事だけではなくサプリメントなどの栄養補助食品からも葉酸を摂るよう推奨しています。
1-2.葉酸の働き
葉酸は、おもに細胞の増殖に関わっている栄養素です。胎児の成長において重要な役割をもちます。
また、葉酸は赤血球産生などの造血機能にも関係しているため、葉酸を摂取すれば貧血の予防にも役立つでしょう。
1-3.葉酸の一日の摂取量(18~69歳)
厚生労働省発表の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で推奨されている葉酸の摂取量を見ると、18~69歳の成人における一日の摂取目安量は240μgです。
ただし、妊娠前後の女性は胎児の成長に葉酸が必要なため、葉酸をより多く摂取しなければなりません。そのため、妊娠する1カ月以上前~妊娠3カ月の間は、食事だけでなくサプリメントなどを使い、一日400μgの葉酸を摂取するよう推奨されています。
また、18~69歳の成人における葉酸の耐容上限量は、一日900~1,000μgです。しかし、野菜などの自然食品から摂取した葉酸が耐容上限量を超えた場合は、過剰症の心配はないとされています。
参考厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2.葉酸を多く含む食べ物
葉酸は、最初にほうれん草から見つかったことで「葉の酸」と名付けられました。そのため、野菜にしか含まれていないと思われがちですが、肉類や魚介類などの食品にも含まれています。
葉酸が多く含まれている食品を以下に紹介するので、ぜひ毎日の食事づくりの参考にしてみてください。
食品名 |
100gあたりの成分量 |
焼きのり |
1900μg |
パセリ(乾) |
1400μg |
玉露茶 |
1000μg |
ブロッコリー(焼き) |
450μg |
たたみいわし |
300μg |
枝豆(ゆで) |
260μg |
ほうれん草(生) |
210μg |
アスパラガス(ゆで) |
180μg |
卵黄(生) |
140μg |
ひきわり納豆 |
110μg |
豆乳 |
28μg |
参考:文部科学省「食品成分データベース」
3.葉酸をおいしく摂取できるおすすめレシピを紹介
先ほど紹介した食品を含め、葉酸を摂取できる食品を使ったおすすめのレシピを2品紹介します。ぜひ、試してみてください。
3-1.ゆで豚の納豆ドレッシング
葉酸を含む、ほうれん草やひきわり納豆を使った一品です。食材をゆでる際には、ほうれん草、豚肉の順にゆでると調理鍋が1つで済みます。
【材料】(2人分)
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・しゃぶしゃぶ用の豚肉 150g
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・ほうれん草 1/2束
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・ひきわり納豆 1パック
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・ぽん酢 大さじ2.5
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・サラダ油 大さじ1
【作り方】
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1. 鍋に入れた水を沸騰させ、ほうれん草をゆでます。ほうれん草に火が通ったら、粗熱を取るために冷水につけます。
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2. 1の鍋で豚肉を1枚ずつ入れてゆで、豚肉の色が変わったら取り出します。
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3. ゆでたほうれん草を4cm程度の長さに切り分けます。
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4. ひきわり納豆とポン酢、サラダ油を混ぜて、ドレッシングをつくります。
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5. 豚肉とほうれん草を皿に盛り付け、4のドレッシングをかけて完成です。
3-2.アスパラガスの味噌マヨサラダ
パセリ・アスパラガス・卵と、葉酸を含む食品が多く使われているため、より葉酸を摂取しやすいでしょう。レシピを少しアレンジし、ハムやツナ缶を加えるのもおすすめです。
【材料】(2人分)
【A】
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・白味噌 小さじ1
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・マヨネーズ 小さじ2
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・レモン汁 適量
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・塩 適量
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・こしょう 適量
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・パセリのみじん切り 適量
【作り方】
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1. アスパラガスの根元は硬いため、皮むき器で取り除いておきます。
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2. 塩(分量外)を加えた熱湯に1を入れ、食べやすいやわらかさになるまでゆでます。その後、アスパラガスをお湯から取り出して冷水につけたら、水分を拭き取ります。
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3. ゆで玉子と2のアスパラガスを、それぞれ食べやすい大きさに切ります。
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4. 【A】を混ぜ合わせたら、3と和えます。
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5. 皿に4を盛り付け、パセリのみじん切りを散らして完成です。
不足しがちな葉酸は日頃から積極的に摂取しよう
葉酸は、細胞の増殖や骨髄の造血機能に関わっているほか、胎児の成長などにも関わる大切な栄養素です。
葉酸を多く含む野菜の摂取量が少ない現代では、意識的に食習慣を変えなければ不足することが考えられます。特に、妊娠の可能性がある方や妊娠中・授乳中の方は葉酸の必要量が増えるため、サプリメントなどもプラスして意識的に摂取することが大切です。該当する方は、用法用量に注意しつつサプリメントも検討してみてはいかがでしょうか。
ぜひ、今回紹介した葉酸を多く含む食品やレシピを参考にして、普段の食事などに取り入れてみてください。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。