1.腸内には細菌が生息している
ヒトの腸内にはおよそ1000種類、数にして100兆個もの腸内細菌が生息しています。
腸内フローラとも呼ばれている腸内細菌には、善玉と悪玉、どちらでもない中間の菌(日和見)の大きく3つのグループに分かれています。なかでも、一番多く存在しているのは中間の菌で、次に多いのが善玉菌、悪玉菌は少数です。
この3グループの菌は、互いに密接な関係を持ちながらバランスを取り合っています。
悪玉菌は、脂質やたんぱく質が多い食事、不規則な生活、ストレス、便秘などによって腸内に増えやすく、悪玉菌が増えていくと健康状態に影響するといわれています。
体の健康を保つためには、腸内に生息するビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の割合を増やすことが大切です。
2.腸内細菌を調べる「腸内細菌(腸内フローラ)検査」とは?
腸内フローラとは、私たちの腸内に生息する腸内細菌の集合体のことです。
近年、腸内フローラは私たちの健康に密接に関係していることが研究で明らかにされており、腸内フローラの乱れによりさまざまな病気にかかる可能性が高まることもわかってきています。
この腸内フローラの状態を自宅で調べることができるのが、「腸内フローラ検査」です。検査結果をもとに、自身に合った生活習慣の改善が期待されています。
3.腸内細菌(腸内フローラ)検査で何がわかるのか
腸内フローラ検査の結果をもとに、自身に合った生活習慣を見直すと、さまざまな病気のリスクを軽減できます。
腸内フローラ検査でわかることは、以下のとおりです。
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・腸内フローラのバランス(菌バランス)
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・腸内細菌の種類の多さ(菌の多様性)
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・健康維持や増進に関わりの深い菌
このような結果をもとに、自身の健康維持や増進に役立てることができるでしょう。
4.腸内環境を改善・維持するためのポイント
ここからは、腸内環境を整えるために気を付けたい生活習慣を紹介します。
4-1.食事で善玉菌を増やす
腸内環境は食べたものが大きく影響するため、食生活には気を付けましょう。
腸内環境を整えるための食事のポイントは、以下の3つです。
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善玉菌を摂る
善玉菌そのものを摂取することで、腸内の善玉菌を増やしましょう。
具体的には、ビフィズス菌や乳酸菌を含むヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆、漬物などの発酵食品を摂取することです。
これらの菌は腸内に長く住みつかないといわれているため、毎日続けて摂ることが望ましいでしょう。
また、生きていない善玉菌でも有効な生理作用が期待できるといわれています。
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オリゴ糖や食物繊維を摂る
オリゴ糖や食物繊維は、食事から摂ると消化・吸収されずに大腸まで達し、腸内にもともと存在する善玉菌のエサとなることで善玉菌を増やす働きがあります。そのため、善玉菌と併せて摂るとよいでしょう。
オリゴ糖が多く含まれる食品は、大豆、ごぼう、玉ねぎ、ねぎ、にんにく、アスパラガス、バナナなどが挙げられます。
食物繊維はごぼう、玄米、豆類、いも類、納豆、かぼちゃ、キャベツ、海藻、きのこ類などに多く含まれています。
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脂肪やたんぱく質は摂りすぎない
腸内環境を良くするためには、悪玉菌を増やさないことも大切です。
悪玉菌は肉類などに含まれる脂肪やたんぱく質をエサとしているため、これらを摂りすぎないように気を付けましょう。
4-2.運動習慣をつける
腸内環境を整えるためには、腸自体を動かすような習慣をつけることも大切です。
適度な運動は筋肉を動かすことにつながり、腸内にある便の動きをサポートします。
腹筋や体の深部にある腸腰筋は便を送りだす筋肉です。これらを鍛えるためにも、ウォーキングや下半身の運動を習慣にすることを心がけましょう。
日常生活でも、少しの心がけで運動量を増やすことはできます。エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使ったり、いつもより遠い店まで歩いて買い物をしたり、通勤のときにひと駅前で電車を降りて歩いたりしてみましょう。
4-3.睡眠を取る
十分な睡眠を取ることは腸内のリズムを整うことにつながります。
朝、目覚めたらコップ一杯の水や白湯をとると腸管に刺激を与えられるため、習慣にできるとよいでしょう。
腸内環境の状態を検査することが健康につながる
体の健康を維持するためには、腸内に生息している腸内細菌のなかの善玉菌を増やし、悪玉菌を増やさないような生活習慣の見直しが大切です。
「腸内フローラ検査」を利用すれば、腸内細菌の状態を知ることができます。
検査を受けるだけでなく、これまでの生活習慣を振り返り、できるところから食事や生活習慣の改善を行ないましょう。
今回紹介した腸内環境を整えるための食事・運動・睡眠も参考にしてみてください。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。