1.内臓脂肪と皮下脂肪の違い
そもそも、内臓脂肪と皮下脂肪はどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴について解説します。
1-1.内臓脂肪とは?
内臓脂肪とは、その名のとおり、消化管など内臓の周りにつく脂肪のことです。
内臓脂肪には血管が張り巡らされているため、必要になればすぐに血管を通って肝臓へ届き、肝臓から全身に送り出されて使われます。
脂肪のなかでは比較的、燃料として簡単に使える脂肪といえるでしょう。
1-2.皮下脂肪とは?
皮下脂肪は皮膚の内側につく脂肪であり、体を衝撃から守るクッションのような役割や体温を保つ働きなどがあります。
女性は男性よりも多くの皮下脂肪を蓄えていますが、それは妊娠・出産に備え臓器や赤ちゃんを保護するためです。
2.内臓脂肪や皮下脂肪が増えるとどうなる?
内臓脂肪または皮下脂肪が増えると、体へどのような影響があるのでしょうか。それぞれの場合に分けて説明します。
2-1.内臓脂肪が増えた場合
おもに内臓脂肪が増える肥満タイプを「内臓脂肪型肥満」といい、特徴としておなか周りが出やすいため「りんご型」とも呼ばれます。
内臓脂肪の面積が100平方センチメートル以上であると内臓脂肪型肥満とされていますが、CTスキャンなどで測定するほかに、判定基準としておなか周りのサイズも使われています。
女性の場合はおなか周り90cm以上、男性の場合は85cm以上であれば内臓脂肪面積が100平方センチメートル以上に相当するとされ、内臓脂肪型肥満と判定されるのです。
内臓脂肪型肥満は高血圧や脂質異常症、糖尿病などをもたらしやすくなったり、生活習慣病のリスクが高くなったりするため、早めの対策が大切だといえるでしょう。
2-2.皮下脂肪が増えた場合
皮下脂肪型肥満は、お尻や太ももに脂肪がつきやすいため、「下半身型」または「洋ナシ型」とも呼ばれています。また、皮下脂肪は内臓脂肪と比較すると落ちにくいという特徴があります。
女性の場合は妊娠や出産のときに重要な役割を持つ脂肪であるため、肥満度が高くない場合はあまり気にする必要はないでしょう。
ただし、皮下脂肪が増えすぎることで睡眠時無呼吸症候群や関節痛、月経異常を合併するおそれがあるため、肥満度が高い場合は改善が勧められています。
3.内臓脂肪型肥満・皮下脂肪型肥満の予防法
内臓脂肪型と皮下脂肪肥満それぞれの特徴についてお伝えしました。
ここからは、肥満を予防するための方法を食事・運動・睡眠の3つの項目に分けて解説します。
3-1.食事
そもそも人は、なぜ肥満になるのでしょうか。
私たちの体は、毎日の食事から摂るエネルギーを、生命維持や活動するためのエネルギーとして使っています。
この摂取したエネルギーと消費したエネルギーのバランスが合っていれば、肥満になることはありません。
しかし、摂取エネルギーが多すぎたり、消費エネルギーが少なすぎたりすると、余った分は脂肪として蓄えられていきます。これが肥満になるメカニズムです。
つまり、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回らないように食事をコントロールすることが肥満予防には大切であるといえるでしょう。そのためにも、消費エネルギーの範囲内でバランスの良い食事をすることが勧められています。
3-2.運動
運動も肥満予防において重要です。
運動不足によるデメリットは消費エネルギーが少なくなってしまうこと、また全身の筋肉量が落ちることにより基礎代謝が下がってしまうことがあります。
基礎代謝とは、私たちが生きるための体温維持・呼吸・心拍などに使われる最低限のエネルギー量のことです。この基礎代謝量が落ちることで、消費エネルギーがますます小さくなり、肥満の要因となります。
そのため、運動を継続することや日常的に体を動かすように意識してみましょう。
3-3.睡眠
睡眠が肥満と関係があるのかと疑問に思う人もいるかもしれません。
実は睡眠不足が続くと、「グレリン」という食欲を刺激するホルモンが増えて空腹感を感じやすくなるのです。さらに、満腹感を得られるホルモンの「レプチン」が減少してしまうため、満腹感を感じにくくなる傾向もあります。
そのため、睡眠不足は食べすぎにつながる可能性があるといえるでしょう。
また、一日の睡眠時間が6時間未満の人は肥満になる確率が高いといわれています。忙しい毎日でも、十分な睡眠時間を確保することが肥満予防につながるでしょう。
内臓脂肪と皮下脂肪が多い方は生活習慣を整えましょう
内臓脂肪と皮下脂肪はそれぞれ体にとって重要な役割を果たしています。そのため、無理な減量で必要以上に落とす必要はありません。
しかし、過剰に蓄えてしまうと生活習慣病やあらゆる病気のリスクを高める可能性もあるのです。
今回お伝えしたように食事・運動・睡眠の生活習慣を整えて、今だけでなく将来の健康も守りましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。