1.腸の働き、役割について
腸の主な役割として、食べ物の消化・吸収が挙げられますが、これ以外にもさまざまな役割が備わっているのをご存知でしょうか。腸には「小腸」と「大腸」があり、それぞれに異なる役割があるのです。
小腸は、胃で胃酸と混和され、かゆ状に消化された食べ物が通り、成人で6~7mほどの長さがあります。小腸からも消化液が出ていますので、食べ物をより細かく消化し栄養素を吸収する役割を担っているのです。
大腸の長さは成人で約1.5m~2mほどですが、その中に約1,000種類の腸内細菌が住み着き、人と共に生きているのです。大腸は、水分やナトリウムなどを吸収する器官となり、便の硬さを調整しながら肛門へと運ぶ役割を担います。
また、腸には免疫システムが多く集まっており、口から病原細菌やウイルスなどが入ったときに戦うメカニズムを持ちます。これを「腸管免疫(ちょうかんめんえき)」といい、腸内には体全体の6割の免疫細胞があると言われています。さらに腸は「経口免疫寛容(けいこうめんえきかんよう)」という働きもします。これは食物アレルギーに対して過剰に反応しないように働く免疫の仕組みなのです。
このように、腸は消化吸収や排せつだけではなく、病原細菌の発見や攻撃などの免疫作用も持つ器官なのです。
1-1.大腸の腸内細菌について
先ほど大腸の腸内細菌は約1,000種類あることをご紹介しましたが、これらは大きく分類すると「善玉菌」「悪玉菌」、そのどちらでもなく最も多く腸内に存在する「中間の菌」という3つのグループに分かれます。
善玉菌は、体に有益な菌となり、乳酸菌やビフィズス菌などが代表的です。食べ物のカスを食べることで酸やガスを作り、悪玉菌の働きを弱めて腸の蠕動運動を助けたり、菌によってはビタミンを作り出したりします。
また、悪玉菌は、大腸菌やウェルシュ菌といった食中毒を発生させる菌や腐敗菌を指します。悪玉菌は善玉菌と好む環境が違うため、善玉菌の働きが活発なときは増殖できない性質があります。
2.腸内環境が悪くなると…
善玉菌が作り出した、乳酸や酢酸などによって腸内が酸性となり、悪玉菌の増殖が抑えられ、腸の運動が活発化します。一方、タンパク質や脂質が多い食事や不規則な生活、ストレス、便秘などによって腸内に悪玉菌が増えてしまう可能性があります。
善玉菌によって腸内が酸性であれば、便の色が黄色や黄色がかった褐色となり、匂いがあっても悪臭ではなくなります。しかし、便の色が黒く悪臭がある場合は、腸内細菌のバランスが悪くなっていることが考えられます。
また、肥満、糖尿病などと、腸内細菌には密接な関係がありますので、善玉菌が多い腸内環境を整えることが重要なのです。
3.腸内環境を悪くさせる生活習慣
前述の通り、悪玉菌は、タンパク質や脂質が多い食品を好むため、食事の栄養バランスが偏ると腸内環境が脅かされます。また、ストレスや運動不足、不規則な生活リズム、冷えによっても善玉菌の動きや腸の動きが弱まり、悪玉菌が増殖しやすくなってしまうため注意が必要です。
4.腸の働きを維持する食ベ物
腸内環境を整えて腸の働きをより良くするためには、食事も重要です。食物繊維や糖質を含む野菜類・果物類・豆類・いも類などは、善玉菌の栄養となり、ヨーグルト・乳酸菌飲料・納豆・漬物は、善玉菌として腸内で直接働いてくれますので、積極的に摂ることをおすすめします。
このような食事に加えて、便秘などによる悪玉菌の増加を防ぐため、規則正しい日常生活や適度な運動、排便を心がけましょう。
生活習慣や食生活を見直して腸内環境を整えよう
偏った食事や不規則な生活習慣によって腸内環境が悪化し、病気になりやすくなるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。腸内環境を整えるためには、善玉菌が多い腸内環境を整えることが重要です。
日ごろから生活習慣や食生活を意識し、腸から健康で美しい体づくりを目指しましょう。
監修者情報
氏名:河村優子(かわむら・ゆうこ)
アンチエイジングをコンセプトに体の中と外から痩身、美容皮膚科をはじめとする様々な治療に取り組む医師。海外の再生医療を積極的に取り入れて、肌質改善などの治療を行ってきたことから、対症療法にとどまらない先端の統合医療を提供している。