高齢者の運動機能が低下する原因とは?おすすめの運動も紹介

ほとんどの高齢者は、15歳から34歳までの若年者と比べると運動機能が低下しています。しかし、普段からどのような生活を送っているのかによって、機能の低下具合や速度はまったく違うものです。

では、どのような原因で高齢者の運動機能は低下してしまうのでしょうか。

今回は、運動機能が低下する原因や影響、運動機能を維持するためにおすすめの運動を紹介します。

1.高齢者の運動機能が低下してしまう原因とは

高齢者の運動機能が低下する原因は、おもに次の4つです。

  • 形態学的変化

  • 運動学的変化

  • 循環器変化

  • 神経感覚機能の変化

形態学的変化とは、身長の変化や円背などによる姿勢の変化、骨や関節の変化などを指します。運動学的変化とは、筋力や柔軟性、俊敏性、歩行動作などの変化のことです。筋繊維の数は加齢にともない減少するため、筋肉量も低下してしまいます。

循環器変化とは血圧や脈拍数、肺活量などの呼吸機能の変化、神経感覚機能の変化とは知能や感覚の変化をいいます。

その他、骨密度や骨量の低下なども運動機能の低下に関係しています。

2.高齢者の運動機能が低下するとどのような影響がある?

高齢者の運動機能が低下すると、次のような影響をもたらします。

  • QOL(生活の質)が低下する

  • ロコモが進行する

  • フレイルを招きやすい

  • 健康寿命が短くなる

QOLとは「日常生活の質」をいいます。運動機能が低下するとバランス機能や歩行機能が低下し、日常生活にさまざまな支障が出てしまいます。

ロコモとはロコモティブシンドロームのことで、歩いたり立ったりする移動機能が低下している状態です。

フレイルは、加齢によって心身が衰えた状態を指します。健康な状態と介護が必要な状態の中間に位置し、フレイルが進むと要介護状態になるおそれがあるため、注意が必要です。

健康寿命は、健康的に日常生活を送れる期間のことです。日本人男性では平均寿命と健康寿命との間に約9年、女性では約12年もの差があるといわれています。

3.高齢者におすすめの運動を紹介

高齢者が運動を行なう場合は、まず安全面に配慮しましょう。自分の体のレベルに合った強度で、無理のない範囲で行なうことが大切です。

膝や腰などに痛みがある方は、かかりつけ医に相談してから始めるようにしてください。

厚生労働省では、すべての高齢者に対して有酸素運動・筋力トレーニング・バランス運動を行なうことを推奨しています。

3-1.有酸素運動

ウォーキングやサイクリング、エアロバイク、水中歩行などの有酸素運動がおすすめです。有酸素運動は心肺機能を改善したり、骨粗しょう症を予防したりする効果が期待できます。

きつすぎない最高心拍数の40~60%くらいの中強度で、10分以上の運動を合計30分行ないましょう。頻度は、週に3~5回が目安です。

3-2.筋力トレーニング

筋力トレーニングは胸や背中、下肢など大きな筋肉をターゲットに行ないます。負荷は自分の筋力に合わせて「非常に軽い」~「やや重い」と感じる範囲で調節してください。

回数は8~12回(初期は10~15回)を、1~4セットくり返します。週に2~3回くらいの頻度で行なうとよいでしょう。

3-3.バランス運動

バランス運動とは、転倒を防いだり転倒にともなうケガを予防したりするために行なう運動です。真っ直ぐに立った状態でかかとの上げ下げをくり返すヒールレイズ(静的バランス)や、片足を大きく踏み出して腰を深く下げるフロントランジ(動的バランス)などがあります。

「かなり楽」~「ややきつい」程度の強さで、8~12回(初期は10~15回)を1~4セット行ないましょう。

運動機能が低下した高齢者の方は普段から体を鍛えよう

高齢になると、どうしても運動機能が低下してしまいます。筋力や柔軟性、肺活量などが衰えてしまうことが原因です。

運動機能が低下するとQOL(生活の質)の低下やロコモティブシンドローム、フレイルなどを招く原因となるため、普段から体を動かして予防していく必要があります。

有酸素運動や筋力トレーニング、バランス運動などを定期的に行なう習慣を身につけましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。