体に「良い油」「悪い油」とは?油の働きについても解説

脂質、たんぱく質、炭水化物は「三大栄養素」と呼ばれ、人間の体に不可欠な栄養素です。そのなかの一つである脂質は、コレステロールや脂肪酸、油脂、グリセリンなどのことをいい、さらに油脂には常温で液体として存在するあぶら(油)と固体で存在するあぶら(脂)があります。

ただ、あぶらの種類によっては食べ物から摂る必要のないものがあり、むしろ過剰に摂取した場合に健康を害するケースもあります。

今回は、体に「良い油」と「悪い油」について説明し、油がどのように体の中で働いているかも解説します。

1.油のおもな働きとは

脂質は、体の中で分解されることでエネルギー源として利用されます。

また、細胞膜の材料になったり、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)などの体への吸収を助けたりと、多くの働きを持つのです。

脂質の種類はさまざまで、体の中では作ることができず、食べ物から摂らなくてはいけない「良い油」もあります。

2.体に良いとされている油

体に良いとされている油は必須脂肪酸と呼ばれ、体の中で作ることができず、足りなくなると体の調子が悪くなります。必須脂肪酸にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、ARA(アラキドン酸)などがあります。

ここではこれらの必須脂肪酸について詳しく見てみましょう。

2-1.DHA(ドコサヘキサエン酸)

DHAは魚に多く含まれる必須脂肪酸です。体の中では脳や神経、精子などに多く含まれており、年を重ねるごとに体から失われやすくなっていくため、意識して食べ物から摂る必要があります。

DHAは酸化されやすい性質があるため、β-カロテンやビタミンEなど抗酸化作用が高い成分を多く含む食べ物と一緒に摂るのが良いとされています。

2-2.EPA(エイコサペンタエン酸)

EPAはイワシなどの青魚の油に多く含まれている成分です。DHA同様人間の体にとってさまざまな良い働きがあり、血栓などに対して有用な効果があるとされています。

2-3.アラキドン酸(ARA)

おもに肉や卵、魚、母乳などに多く含まれている一方で、年を重ねるごとに体から少なくなっていくため、意識して食べ物から摂る必要があります。細胞膜を作るのに欠かせない成分の一つであり、脳や肝臓、皮膚などの体中の組織に含まれます。特に脳では、重要な機能の多くにアラキドン酸(ARA)が関与していることがわかっており、元気な脳を維持するために意識して摂取することが大切です。

アラキドン酸(ARA)はDHAと同様に酸化されやすい性質があるため、β-カロテンやビタミンEなどの酸化を抑える作用の高い成分を多く含む食べ物と一緒に摂るのがおすすめです。

3.摂りすぎると体に悪い油

食べ物から積極的に摂取したほうがいい「良い油」もあれば、食品から摂る必要がないと考えられている「悪い油」もあり、そのなかの一つがトランス脂肪酸です。

日頃からトランス脂肪酸を多く摂っていると、少なく摂っている場合と比べて病気のリスクが上昇することが明らかになっています。

トランス脂肪酸は天然に食べ物のなかに含まれているものと、加工食品などの人工的に作られたものがあります。天然に作られたものでは、牛肉や羊肉、牛乳、乳製品などにわずかに含まれます。人工的に作られたものではマーガリンやショートニング、そしてそれらから作られたパンやケーキ、ドーナツなどに含まれています。

体に良い油をバランス良く摂り、悪い油を摂りすぎないようにしましょう

油には体になくてはならない「良い油」と、摂りすぎることで体に害となる「悪い油」があることを紹介しました。

「良い油」には、魚に含まれるDHAやEPA、魚だけでなく肉にも含まれるアラキドン酸(ARA)が代表的です。これらは年齢を重ねるごとに体内から減ってしまいがちなので、食品から積極的に摂る必要があります。

一方で、「悪い油」に代表されるのは、トランス脂肪酸です。トランス脂肪酸はおもに加工食品に多く含まれているため、日頃から揚げ物や洋菓子などの摂りすぎには十分に注意することが求められます。

ここで紹介した油をしっかりと理解して、バランス良く摂るように心がけてみましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。