肥満には2つのタイプがある?運動で肥満を解消する方法・注意点を解説

太ってしまった際、体重の増減ばかりを気にしている方は多いでしょう。しかし、体重の数値だけで肥満と判断することは尚早です。

肥満は万病のもとともいわれ、体のどこに脂肪がつくかによって、健康障害へのリスクが大きく変わります。

今回は「肥満の2つのタイプ」と「運動で肥満を解消する方法」「運動する際の注意点」について紹介します。

1.肥満とは?

肥満とは「脂肪が必要以上に体についた状態」です。摂取エネルギーが消費エネルギーを超え、不必要なエネルギーが脂肪として蓄積されることが肥満の原因として考えられます。

近年では、食の欧米化や運動不足などによって、肥満になる人が増加傾向にあるのです。

ここでは、肥満かどうかの判断基準と、2つの肥満タイプについて説明します。

1-1.肥満の定義

肥満・低体重の判定を表す指標としてBMIという体格指数が国際的に用いられています。

算出方法は体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}です。

BMI値の標準は18.5以上25未満で、25以上かつ脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態を肥満と定義しています。

ただし、BMI値は身長と体重から計算しており、筋肉質なのか脂肪過多なのかが加味されていません。あくまでも目安の一つと考えましょう。

1-2.肥満は「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」に分けられる

同じBMI値であっても、体のどこに脂肪がついているかによって健康へのリスクが変わるものです。

肥満には、筋肉の内側の腸まわりなどに脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」と、太ももやお尻などの下半身を中心とした皮下組織に脂肪が蓄積する「皮下脂肪型肥満」の2種類があります。

内臓脂肪型肥満は男性に多く、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常などの生活習慣病を引き起こすおそれがあるものです。また、BMI値が25未満であったとしても内臓脂肪型肥満になっている可能性もあるため、「隠れ肥満症」とも称されます。

皮下脂肪型肥満は女性に多く、月経異常、睡眠時無呼吸症候群、関節痛などを合併しやすいタイプの肥満です。内臓脂肪と比較すると皮下脂肪はなかなか落ちにくいという特徴があります。

なお、メタボリックシンドロームとは「内臓脂肪型肥満であり、高血糖・高血圧・脂質代謝異常のうち2つ以上を併せ持った状態」を指します。

2.肥満解消につながるおすすめの運動

肥満症の改善には、食事療法で摂取カロリーを減らすことはもちろん、継続的に運動をして消費カロリーを減らしたり、減量したりすることが大切です。

ここでは肥満症・メタボリックシンドロームの方を対象とした運動プログラムを紹介します。

減量には、有酸素運動で消費するエネルギー量を増やすことが重要です。それと並行して筋力トレーニングで運動効果を高め、今の体重の3~5%の減量と維持を目指しましょう。

以下の表から有酸素運動を1~2種、筋力トレーニングは下肢・体幹からそれぞれ選び、時間は90~120分(運動前後のストレッチを含む)行ないます。

2-1.有酸素運動

種類(右の中から1~2種類) ・自転車こぎ
・トレッドミル歩行(ウォーキング)
・水中歩行
強さ 低~中強度 楽~ややきついと思う程度
時間 中強度なら一日30~60分 週150~300分
頻度 できれば毎日実施する 運動量が十分なら週5未満でもOK

参照:厚生労働省「肥満症・メタボリックシンドロームの人を対象にした運動プログラム

2-2.筋力トレーニング

下肢 ・ダンベルスクワット
・レッグプレス
・椅子に座ったまま つま先上げ&踵上げ
体幹 ・ヒップリフト
・プランク
負荷の重さ 軽い~重い
回数・セット数 8~12回×2~4セット
頻度 週2~3回

参照:厚生労働省「肥満症・メタボリックシンドロームの人を対象にした運動プログラム

3.肥満解消に向けて運動をするうえで注意すること

ここでは肥満解消に向けて運動をするうえでの注意事項を解説します。

まず、健康診断などを受けて、脂質や血圧、血糖をはじめ健康障害がないことを確認してから行ないましょう。

もともと運動習慣がない場合は、強度を弱くして1回の時間も短くするところからスタートすることが大切です。

腰痛、ひざ痛などがある場合は、かかりつけ医に相談してから行ないましょう。有酸素運動は負荷のかかりにくいもの、筋力トレーニングは下肢を強化するものを選ぶようにしてください。

摂取カロリーが消費カロリーを超過しないように、食事のコントロールも併せて行ないます。

トレーニングは楽しむことが継続のカギです。慣れてきたら楽しく取り組める有酸素運動に変えて挑戦していくのもよいでしょう。

肥満解消のためには日常に運動習慣を取り入れましょう

肥満は健康を害する大きな要因となるものです。

肥満には、筋肉の内側の腸まわりなどに脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」と、下半身の皮下組織を中心に脂肪が蓄積する「皮下脂肪型肥満」の2種類のタイプがあります。

特に内臓脂肪型肥満は「隠れ肥満症」とも呼ばれ、BMIが正常値でも隠れ肥満の可能性があるため、注意が必要です。

いくつになっても健康な体で、活き活きと過ごしたいものです。

今回紹介した肥満解消につながる運動を取り入れて、スッキリした健康な体を目指しましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。