1.ビタミンB1が不足すると生じうるおもな症状
ビタミンB1不足により、中枢神経や末梢神経に影響が出たり、脳幹部に影響が出たりします。ビタミンB1が不足する原因は、長期的な食事からの摂取不足はもちろん、甘い物などの糖質が多い食品なども影響します。
ビタミンB1は糖質をエネルギーに変換するときに必要です。過剰に糖質が体内へ入るとビタミンB1を大量に消費され、糖質をエネルギー源としている脳や神経に機能障害を引き起こすのです。
日本人は、特に糖質が多い白米を主食としているので、中枢神経や末梢神経に影響が生じやすい傾向にあります。
1-1.中枢神経や末梢神経への影響で現れる症状
中枢神経や末梢神経へ影響が出ると体中の神経がダメージを受け、足元がおぼつかなくなったり、体がだるくなったりします。その他に足のむくみ・手足のしびれ・食欲不振になる場合もあるのです。
1-2.脳幹部への影響で現れる症状
ビタミンB1の不足によって、脳幹部といわれる脳の奥の部分で微小な出血が起こると、眼球の震えやふらつきなどが見られます。慢性化すると、記憶に異常が生じる状態に発展する場合もあるのです。
2.ビタミンB1の摂取目安量
各年代におけるビタミンB1の一日の摂取目安量は以下のとおりです。
性別 |
男性 |
女性 |
年齢 |
推奨量(mg/日) |
推奨量(mg/日) |
0~5カ月 |
※0.1 |
※0.1 |
6~11カ月 |
※0.2 |
※0.2 |
1~2歳 |
0.5 |
0.5 |
3~5歳 |
0.7 |
0.7 |
6~7歳 |
0.8 |
0.8 |
8~9歳 |
1.0 |
0.9 |
10~11歳 |
1.2 |
1.1 |
12~14歳 |
1.4 |
1.3 |
15~17歳 |
1.5 |
1.2 |
18~49歳 |
1.4 |
1.1 |
50~74歳 |
1.3 |
1.1 |
75歳以上 |
1.2 |
0.9 |
妊婦(付加量) |
- |
+0.2 |
授乳婦(付加量) |
- |
+0.2 |
※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が一日の必要量を満たすと推定される一日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3.ビタミンB1を多く含むおもな食材
ビタミンB1は、豚肉や魚介類・雑穀や豆類などに多く含まれています。
ビタミンB1を多く含むおもな食材は以下のとおりです。ぜひ、献立づくりにお役立てください。
【食品可食部100g中に含まれるビタミンB1含有量】
食品名 |
1食あたりの重量(g) |
ビタミンB1(mg) |
1食あたり |
100gあたり |
豚ヒレ肉(焼き) |
100 |
2.09 |
2.09 |
うなぎ(蒲焼き) |
80 |
0.60 |
0.75 |
たらこ(生) |
40 |
0.28 |
0.71 |
子持ちカレイ(水煮) |
100 |
0.25 |
0.25 |
玄米ごはん |
150 |
0.24 |
0.16 |
紅鮭(焼き) |
80 |
0.22 |
0.27 |
絹ごし豆腐 |
150 |
0.17 |
0.11 |
大豆(茹で) |
100 |
0.17 |
0.17 |
おから(生) |
100 |
0.11 |
0.11 |
ごま(乾) |
9 |
0.09 |
0.95 |
参考:文部科学省「食品成分データベース」
4.ビタミンB1を補う際のポイント
ビタミンB1は、日本人が主食とする白米や食パン・麺類には多く含まれておらず、不足しがちな栄養素です。そのため、ビタミンB1の特性を理解し、ビタミンB1を効率良く摂取しましょう。
4-1.アリシンを含む食材と併せて摂取する
ビタミンB1は、「アリシン」という栄養成分と一緒に摂ることで吸収率がアップし、効率良く摂取できます。
アリシンが含まれている食材は以下のとおりです。
4-2.水に溶けやすい性質を理解する
ビタミンB1は水に溶ける性質を持っています。そのため、ゆでたり煮たりすると、20~30%のビタミンB1が汁に流出してしまうので、ゆで汁・煮汁は捨てずに利用するとよいでしょう。
例えば、カレー、シチュー、スープ、味噌汁、鍋のあとの煮汁やゆで汁を利用すると、溶け出たビタミンB1も無駄なく摂取できます。
ビタミンB1不足の症状が出る前に積極的に補なおう
ビタミンB1は、私たちがイキイキと過ごすために欠かすことができない栄養素です。
ビタミンB1は糖質をエネルギーに変換するときに必要であり、不足すると疲れやすくなったり、体がだるくなったりなどの不調を引き起こします。
重症になると、手足のしびれや目の震え、足元のふらつき、記憶に異常が生じる場合もあるのです。
しかし、ビタミンB1は私たち日本人の食生活では不足しがちな栄養素でもあります。
ビタミンB1は、調理法によっても減ってしまうので、特性を活かして効率良く摂取するとよいでしょう。
また、不足しがちな栄養素のため、サプリメントで手軽に補うのも良い方法です。ぜひ、あなたに合った方法で健やかな毎日を目指しましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。