1.血圧を下げることは大事?
高血圧は、生活習慣病で死亡するリスクのある因子のひとつです。血圧が高い状態を放っておくと、重大な病気を引き起こすおそれがあります。
高血圧は心臓や脳の血管に大きなダメージを与えるリスクがあります。さらに高血圧によって腎臓の血管が詰まると、腎臓のろ過機能が低下して腎不全になる危険性もあるとされています。
しかし、高血圧の初期では、ほとんど症状が出ません。気付かないうちに徐々に病状が悪化していき、いつの間にか重大な合併症を引き起こす可能性もあります。
このように、自覚症状がなく静かに命を脅かす高血圧は、「サイレントキラー」と呼ばれています。
2.血圧を下げるのにおすすめの運動
高血圧には、さまざまな病気につながるリスクがあるため、注意が必要です。血圧を下げるためには、運動療法や食事療法といった生活習慣の改善と薬による治療があります。
ここでは、運動療法について紹介します。
2-1.有酸素運動
一般的に血圧を下げる運動には、有酸素運動が推奨されています。有酸素運動で体を動かすことで血管内皮機能が改善でき、血圧を下げる効果が期待できるでしょう。
運動とはいっても、ハードである必要はありません。少しきつい有酸素運動を毎日30分以上行なうことが推奨されています。
例えば、次のような有酸素運動がおすすめです。
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・ 軽いジョギング
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・ ウォーキング
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・ 自転車
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・ 水中運動
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・ その他のレクリエーションスポーツ
運動をする場合は、事前に心血管の異常がないことを医師にチェックしてもらいましょう。そして、準備運動をしっかり行ない、自分の年齢や基礎体力、健康状態を見極めて運動量を決めることが大切です。
2-2.レジスタンス運動
血圧を下げるには、高齢者でもできるレジスタンス運動が向いています。レジスタンス運動とは、筋力や筋持久力向上を促す筋力トレーニングのことです。
例えば、次のようなトレーニングが該当します。
・ 椅子を使ったスクワット
・ かかと上げ
・ 腕立て伏せ
・ 上体起こし
特別なマシンや道具がなくても、自宅で手軽に行なえる運動もあるため挑戦しやすいでしょう。
運動する際は、息を吐きながら不要な力が体にかからないようにすることがポイントです。息を止めて体に力が入ると、血圧が上がってしまいます。
レジスタンス運動をする前には、体調に異変がないか確認することが大切です。例えば、発熱や食欲不振、体のだるさといった体調不良を感じている場合は、運動を避けましょう。その他に、熱中症警報が出ている日も運動は中止してください。
2-3.ストレッチ運動
有酸素運動のほかに、ストレッチ運動を組み合わせるのもおすすめです。ストレッチ運動には、関節を動かせる範囲を広くしたり、機能を向上させたりする効果が期待できます。そのため、準備運動などによいでしょう。
広い場所や専用の道具も必要なく、室内で手軽にできるのもうれしいポイントです。ジョギングや筋トレなどをして体を動かすことが苦手な方でも、ストレッチであれば取り組みやすいでしょう。
適度な運動で血圧を下げよう
高血圧は、深刻な合併症を引き起こすリスクの高い因子の一つであり、日本人の多くが高血圧です。しかし、自覚症状がほとんどないため、いつの間にか進行する恐ろしい面があります。高血圧予防のために、血圧を下げる運動を生活に取り入れてみましょう。
運動習慣がない方は、体への負担が少ない掃除や洗車といった日常的な行動量を増やすのがおすすめです。運動をする前には、健康状態と自分に合った運動量を見極め、準備運動をしてから行なうことが推奨されています。
また、血圧を下げるには、運動だけではなく食事や生活習慣の見直しも効果的です。毎日血圧を測定したり毎年健診を受けたりして、自分の状況を正確に把握することも意識しましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。