1.ビタミンEについて
最初に、ビタミンEの特徴や体内での働きについて解説していきます。
1-1.ビタミンEとは
ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種です。4種類のトコフェロールと、さらに4種類のトコトリエノールの合計8種類が存在しています。脂質や細胞膜に多く存在しており、それ自体が酸化されることで多価不飽和脂肪酸の酸化を抑制する働きをするのです。
トコフェロールの種類にはα(アルファ)・β(ベータ)・γ(ガンマ)・δ(デルタ)の4つがありますが、なかでも体内で最も多く存在するのはα-トコフェロールです。
食品ではアーモンドなどの種実や小麦胚芽、植物油(サフラワー油・大豆油・コーン油)、穀類、野菜類、豆類、魚介類などに豊富に含まれています。
なお、光に弱い性質があるため、ナッツなどは日光を避けて保存するとよいでしょう。一方、熱や酸には強いため、調理することでの栄養損失はほぼありません。
1-2.ビタミンEの働き
ビタミンEは抗酸化力が強いビタミンです。体内で過剰になると老化や免疫機能の低下などを誘発する活性酸素を抑制する働きがあります。また、過酸化脂質の生成を抑制するのもビタミンEの働きです。
さらに、血液中にあるLDLコレステロールの酸化を抑えたり、赤血球が壊れるのを防止したりする作用、血流をスムーズにするなど、血液を健康に保つ役割もあります。
このように、ビタミンEは私たちの健康のためには欠かせない栄養素といえるでしょう。
2.ビタミンEを過剰摂取した際のリスクについて
ビタミンEを過剰に摂取すると、下痢や、血液が止まりにくくなるなどの症状が出るとされています。
しかし、実際には摂取量の2/3は体外に排出されることや、比較的体内に溜まりにくいビタミンであることから、通常の食事をとっている人であれば過剰症が起こることはほぼありません。
3.ビタミンEの耐容上限量とは?
先ほどもお伝えしたように、ビタミンEは、体のなかには溜まりにくいため、通常の食事をしていれば過剰症になることはほぼないといわれています。
しかし、食事の偏りなどで過剰に摂取した場合には健康障害の可能性も否定はできないため、耐容上限量が設定されています。
以下に耐容上限量を記載します。示されているのはα-トコフェロールの数値です。
耐容上限量(mg/日)
年齢 |
男性 |
女性 |
0~5(月) |
― |
― |
6~11(月) |
― |
― |
1~2(歳) |
150 |
150 |
3~5(歳) |
200 |
200 |
6~7(歳) |
300 |
300 |
8~9(歳) |
350 |
350 |
10~11(歳) |
450 |
450 |
12~14(歳) |
650 |
600 |
15~17(歳) |
750 |
650 |
18~29(歳) |
850 |
650 |
30~49(歳) |
900 |
700 |
50~64(歳) |
850 |
700 |
65~74(歳) |
850 |
650 |
75以上(歳) |
750 |
650 |
※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ビタミンEは適量を意識しましょう
ビタミンEは強い抗酸化力を持っています。
免疫機能の低下などの要因となる活性酸素の働きを抑制し、老化防止にも関与しているため、適量を摂ることが健康につながるでしょう。
また、ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種であるため、水に溶けにくく脂肪組織や肝臓に貯蔵されます。しかし、摂取量の2/3は体外に排出されることや、比較的体内に溜まりにくいタイプの脂溶性ビタミンであることから、通常の食事をとっている人であれば過剰症が起こることはほぼありません。
今回お伝えしたビタミンEを含む食品も参考にしていただき、食事から適量を摂りましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。