炭水化物とは?
おもな働きと摂取量の目安、炭水化物を多く含む食品を紹介

近年は「糖質制限」などの影響もあり、炭水化物を避ける風潮がありますが、炭水化物は私たちが生きるうえで欠かせない栄養素です。

今回は、炭水化物とはどのような栄養素で、体のなかでどのような役割を担っているのかを解説します。そのうえで、適切な摂取目安量や炭水化物を含む食品についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

1.炭水化物とは

炭水化物とは、エネルギーの素となる栄養素であり、脂質・タンパク質と並ぶ「三大栄養素」です。

炭水化物は、体内に吸収されてエネルギー源になる「糖質」と、消化吸収されずエネルギーにならない「食物繊維」に分けられ、糖質はさらに「単糖類」「少糖類」「多糖類」に分類されます。

炭水化物の具体的な分類は、下記のとおりです。

炭水化物 糖質 糖類 単糖類 ブドウ糖・ガラクトース・果糖
二糖類 ショ糖(砂糖)・麦芽糖・乳糖
少糖類 オリゴ糖
多糖類 でんぷん・デキストリンなど
糖アルコール ソルビトール・キシリトール
その他 アセスルファムK・アスパルテーム・ステビアなど
食物繊維 セルロース・ペクチン・ヘミセルロースなど

参照:国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「炭水化物と糖類について

2.炭水化物のおもな働き

炭水化物の最も重要な役割は、私たちの「エネルギー源」になる「ブドウ糖」を、体内の各組織に供給することです。炭水化物のうち、「糖質」は、体内に入ると1gあたり約4kcalのエネルギーをつくり出します。

ブドウ糖をエネルギー源として利用しているおもな組織は、以下のとおりです。

  • ・脳

  • ・神経組織

  • ・赤血球

  • ・腎尿細管

  • ・精巣

  • ・酸素不足の骨格筋 など

特に、脳は昼夜問わず、ほぼ一定の速度でブドウ糖をエネルギー源として使っており、一日約120gものブドウ糖を消費するとされています。

そのため、炭水化物が不足すると、疲労感や注意力の散漫、判断力の低下などが起こる可能性があるのです。炭水化物の不足状態が続くと、意識障害にまでおよぶ懸念もあります。

また、糖質不足が続くと、エネルギーを補うために筋肉をはじめとするタンパク質を分解してしまいます。その結果、筋肉量が減って基礎代謝量も低下し、太りやすく痩せにくい体質になってしまう場合もあるので注意しましょう。

しかし一方で、炭水化物を過剰に摂取すると、エネルギーとして使われなかった糖質が中性脂肪として溜まり、肥満など生活習慣病の原因となりかねません。

よって、炭水化物は少なすぎず、多すぎず、適量を摂取することが大切です。

なお、炭水化物のうち「食物繊維」は、腸内細菌によって発酵・分解されることで、1gあたり0~2kcalのエネルギーをつくり出すとされています。しかし、炭水化物中の食物繊維量はごくわずかで、炭水化物全体に由来するエネルギーに占める食物繊維由来のエネルギーの割合は微量です。そのため、摂取エネルギーを計算する際には、「食物繊維=エネルギーゼロ」として考えてもよいでしょう。

3.炭水化物の一日摂取量の目安

炭水化物の摂取目安量は、厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」に示されており、一日の総エネルギー量の50~65%相当が理想的だとされています。

とはいえ、それがどのくらいの量なのかイメージしにくいと思うので、具体的な例を挙げてみましょう。

一日の摂取エネルギーが2000kcal(活動量の少ない成人女性の必要エネルギー量は1400~2000kcal/日)の場合、50~65%に相当するエネルギー量は1000~1300kcalとなります。

炭水化物は「1g=4kcal」なので、計算すると一日に摂取すべき炭水化物量は250~325gです。さらに、これを一日3食で割ると、1食あたり83~108gの炭水化物の摂取が理想的だといえます。

炭水化物を多く含む食品を次の章で解説しているので、1食につき何をどのくらい食べたら良いかの参考にしてみてください。

4.炭水化物を多く含む食品

炭水化物は、雑穀類、いも・でんぷん類、砂糖などの甘味料類・果物類に多く含まれています。

炭水化物の摂取目安量を満たすにあたって、砂糖や果物などの甘いものは血糖値を上げやすいので、雑穀やいも・でんぷん類を多く摂るのがポイントです。

分類 食品名 食品100gあたりの炭水化物量(g) 1食分の目安量(g) 1食分の炭水化物量 (g)
雑穀類 コーンフレーク 83.6 40 33.4
ライ麦パン 52.7 60 31.6
レーズンパン 51.1 60 30.7
食パン 46.4 60 27.8
ごはん 37.1 100 37.1
スパゲッティ(ゆで) 32.2 80 25.8
そば(ゆで) 26.0 170 44.2
そうめん(ゆで) 25.8 100 25.8
いも・でんぷん類 緑豆はるさめ(乾) 87.5 15 13.1
さつまいも(蒸し) 31.9 200~250 63.8~79.8
じゃがいも(蒸し) 18.1 150~200 27.2~36.2
甘味料類 砂糖 99.3 9 8.9
はちみつ 81.9 21 17.2
果物類類 レーズン 80.3 13 10.4
干し柿 71.3 35 25.0
いちごジャム(高糖度) 63.3 23 14.6
バナナ(生) 22.5 200 45.0
りんご(生) 16.2 250 40.5

毎食適量の炭水化物を食べることが健康への近道

炭水化物は、私たちが生きるうえで欠かすことのできない栄養素です。特に、脳の重要なエネルギー源としての役割を担っています。

そのため、炭水化物が不足すると、疲労感・判断力の低下・注意力の散漫などが現れ、生活に支障が出る可能性があります。

糖質制限ダイエットを行なっている方も多いかもしれませんが、糖質を極端に減らしてしまうと筋肉量と基礎代謝量が低下するため、太りやすく痩せにくい体質になってしまう場合もあるのです。

ただし、炭水化物の過剰摂取は肥満などの生活習慣病を招くので、摂り過ぎも良くありません。今回紹介した摂取目安量と食品を参考に、適量を摂取することを心がけてみてください。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医