ADLが低下するとどうなる?ADL低下の原因と予防方法を解説

高齢者が自立して元気に暮らすためには、ADLの維持が重要です。ADLが低下すると、活動性などが下がり、やがて寝たきり状態につながるおそれがあります。

ADLを低下させる原因にはさまざまなものがありますが、いずれにしても早い段階から対策をすることがADL維持には大切です。

今回の記事では、ADLとは何かについて解説するほか、ADL低下の原因と予防方法を紹介します。

1.ADLとは?低下するとどうなるのか

ADLとは、移動や排泄、食事そして入浴などといった日常生活動作(Activities of Daily Living)のことです。

もともとADLは、リハビリテーションにおいて患者の機能障害や治療の効果を測るために開発された考え方ですが、最近では高齢者における生活機能の指標として使われるようになってきました。

ADLは身体機能・認知機能・精神面・社会環境などと影響し合っています。そのため、どれか一つでも機能が衰えると、連動してADLの低下へとつながりかねません。

例えば、体力や筋力といった身体機能が衰えると、ふらつきや転倒を引きこしやすくなります。その結果、活発に行動することが難しくなり精神的に塞ぎこみがちになるでしょう。また、運動や思考、他者とやりとりする機会が少なくなると、体や脳の働きが衰え、寝たきりへのリスクが高まるとされています。

高齢者がいつまでも元気に自分らしく生活するためには、ADLの維持が大切です。

2.ADLが低下する原因

ADLが低下する原因には、加齢や・病気・薬の副作用などが挙げられます。糖尿病をはじめとする生活習慣病・関節疾患などの整形疾患の病気は、ADLの低下に影響をおよぼす要因です。

また、歩くのが難しくなったり、忘れっぽくなったりなどの加齢にともなう変化もADLの低下を招くおそれがあります。高齢者がはつらつとした毎日を続けるためには、早めの対策でADL低下を防ぎましょう。

3.ADLの低下を防ぐ方法

ADLの低下を防ぐ方法は、いくつかあります。

3-1.リハビリテーション

ADLに効果的だとされるリハビリテーションには、大きく分けて理学療法・作業療法・言語療法の3つがあります。

理学療法では体力向上や筋力増強のために、立位・歩行訓練や関節可動域訓練などを実施します。また、自立した生活をサポートするための装具の作成や、杖や歩行器などの導入・調整なども理学療法の一環です。

作業療法では、日常生活動作訓練や認知機能の改善などを行ないます。そして言語療法は、コミュニケーション訓練のほか、嚥下機能訓練などによって言語機能の回復や維持を目指すリハビリテーションです。

3-2.病気の治療や環境改善

ADLの低下が病気によるものの場合は、原因となっている病気の治療を行ないます。

そのほか、福祉用具の利用・家屋の改修・介護保険サービスの導入など、自立生活を送りやすいように環境を整えることもADLの改善に有用です。

3-3.積極的な社会活動

適切な運動や十分な栄養摂取に加えて、家事や趣味といった日常生活をこれまで同様に送ることもADLの低下予防につながります。

また、高齢者のADLを維持するためには、家のなかに閉じこもらずに積極的に外へ出て行くことも必要です。生きがいや社会的な役割を意識できる居場所があると、ADLの低下予防へつながるといわれています。

ADLの低下を予防していつまでもイキイキとした笑顔の日々を

高齢者が健やかに自分らしく生きるためには、日常生活動作とも呼ばれるADLの維持が欠かせません。ADLが低下すると、体や脳の働きが衰え、寝たきり状態へとつながるリスクが高まります。

ADLを低下させる原因としては、加齢・病気・薬の副作用などが挙げられますが、適切なリハビリテーションや、環境の調整、病気の治療などを行なうことでADLは改善可能です。また、生きがいを見つけ、社会的な役割を担うことも大切です。

今回紹介した内容を参考にADLの低下を防ぎ、高齢者になってもイキイキとした毎日を送ってください。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。