目次
1.なぜHDL(善玉)コレステロールが低いといけないのか
脂質の一つであるコレステロールは、水に溶けにくい性質を持ち、血液中ではタンパク質とくっついた状態(リポタンパク)で存在しています。コレステロールにはHDLコレステロール(高密度リポタンパク、high density lipoprotein)とLDLコレステロール(低密度リポタンパク、low density lipoprotein)があります。
HDLコレステロールの特徴は、血液中の余分なコレステロールを回収して血管の柔軟性を保つことです。そのため、HDLコレステロールが少なくなると動脈の壁に溜まったコレステロールを集められなくなります。その結果、血管のしなやかさが失われたり、血液がスムーズに流れなくなったりするおそれがあります。
HDLコレステロールが40 mg/dLを下回ると低HDLコレステロール血症となり、脂質異常症の治療が必要です。
2.どのようなことでHDL(善玉)コレステロールは減るのか
毎日の食事のなかで脂質や中性脂肪を摂りすぎると、HDLコレステロール低値につながりかねません。また、肥満や運動不足もHDLコレステロールを減らす要因です。加えて、喫煙もHDLコレステロール値を低くすると考えられています。
ある研究結果では、内臓脂肪の割合に関係なく、たばこを吸っている人はHDLコレステロール値が低くなる傾向があると発表されました。
その他、病気の影響も考えられます。慢性腎不全や肝硬変、糖尿病、甲状腺機能異常ではHDLコレステロールが低い値を示すことがあります。健康診断などでHDLコレステロール低値を指摘されたときは、早めに専門医に相談しましょう。
3.HDL(善玉)コレステロールが低いと指摘されたら
HDLコレステロールが低いと言われたら、自分でできる次のような対策を試してみましょう。
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・禁煙する
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・肥満を解消する
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・運動する
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・食生活を見直す
禁煙はHDLコレステロール低値を改善できると見込まれます。さらに、喫煙は血管の詰まりをはじめとする心血管系疾患のリスクの一つです。喫煙習慣がある方は、健康のためにも禁煙を考えてみるのはいかがでしょうか。
また、肥満体型の方では、健康的な体重にするとHDLコレステロール値が上昇する可能性があります。健康のためにも、生活習慣を見直して標準体重の維持を目指しましょう。
適度な運動もHDLコレステロール増加につながります。ウォーキングなどの有酸素運動を生活に取り入れましょう。長時間の運動時間の確保が難しいときは、複数回に分けて運動しても大丈夫です。一日合計で30分以上の運動を、少なくとも週3日は行ないましょう。
HDLコレステロール低値を改善するには食事内容の見直しも重要です。食事内容では、脂質を摂りすぎないように配慮しましょう。その他、オレイン酸やDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などの摂取も有用です。
これらの不飽和脂肪酸は、HDLコレステロールを維持したまま、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを低下させます。オレイン酸はオリーブ油に、DHAやEPAはあじやさんまといった青魚に多く含まれています。このような食品を毎日の食事メニューに取り入れてみましょう。
HDLコレステロールが低い方は生活習慣を見直しましょう
HDLコレステロールは、血管の詰まりなどの予防に重要な役割を果たします。そのため、HDLコレステロール値が低いと指摘されたときは、生活習慣を見直す必要があります。
HDLコレステロールを増やすためには、禁煙を検討するほか、適度な運動を日々の生活に取り入れましょう。また、健康的な体重のキープや、食事内容を意識することも大切です。
HDLコレステロール値が低いと言われたら、生活習慣を整えて健やかな毎日を目指しましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。
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