1.長寿のための食事とは?
まずは、長寿のために知っておきたい食事を解説します。
1-1.栄養バランスが重要
健康的な体を維持するためには、一日3食、栄養バランスの取れた食事を摂ることが重要です。
高齢者の場合、若い頃と比べると必要エネルギーは減少します。しかし、低栄養を防ぐためにも、次のような栄養素を積極的に食事へ取り入れましょう。
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・タンパク質
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・必須アミノ酸
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・必須脂肪酸
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・カルシウムや鉄分などのミネラル
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・ビタミン類
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・食物繊維
特に卵・肉・魚・大豆製品などに含まれる良質なタンパク質は、3食意識して摂取したい栄養素です。
食欲が低下して食べる量が減る高齢者ですが、これらの栄養素は若い世代と同じ量かそれ以上に摂取する必要があります。
食事量が少ない高齢者が十分な栄養素を摂取するためには、食材や調理を工夫することが大切です。
1-2.日本食は理想の食事
主食・主菜・副菜・汁物がそろっている一汁三菜の日本食は、必要な栄養素をバランス良く摂ることができる理想的な食事です。
例えば、主食はエネルギー源である炭水化物、主菜には筋肉や血液を作るタンパク質、副菜や汁物は健康的な体を維持するためにビタミンやミネラルをそろえるとよいでしょう。
以下は、一汁三菜の一例です。
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・主食:ごはん
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・汁:豆腐とわかめの味噌汁
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・主菜:魚の塩焼き
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・副菜:かぼちゃの煮物とほうれん草のお浸し
しかし、日本食は塩分が多くカルシウムの摂取量が少ないという課題もあります。
そこで、塩分の過剰摂取を予防するために、梅干しや漬物など塩分の多い食べ物の量に注意することが必要です。
さらに、カルシウム不足の予防のため、牛乳やヨーグルトなどの乳製品を摂取しましょう。
2.高齢者の一日の必要エネルギー量
高齢者には、一日どのくらいのエネルギー量が必要なのでしょうか。
ここでは、性別や年齢、日頃の活動量ごとに必要なエネルギー量を紹介します。
【男性】
身体活動レベル |
低い |
普通 |
高い |
65~74歳 |
2050 |
2400 |
2750 |
75歳以上 |
1800 |
2100 |
― |
【女性】
身体レベル |
低い |
普通 |
高い |
65~74歳 |
1550 |
1850 |
2100 |
75歳以上 |
1400 |
1650 |
― |
単位:kcal/日
参照:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
身体活動レベルが低い方とは、65~74歳の場合、座って過ごすことが多く運動量が少ない状態をいいます。75歳以上は、自宅にいてほとんど外出しない、もしくは高齢者施設で自立に近い状態で過ごしている方です。
身体活動レベルが普通の方とは、おもに座って過ごすものの、通勤や買い物など立って動くこともある状態のことです。75歳以上は、自立している方が該当します。
身体活動レベルが高い方とは、立ち仕事や運動することが多く、日頃から積極的に動いている状態を指します。
3.長寿を支える食生活のポイント
ここからは、長寿を支えるための食生活についてポイント2つを紹介します。
3-1.食欲を高める工夫が大切
高齢者の場合、運動量の低下や内臓機能の低下などから、食欲低下や低栄養になりやすいという特徴があります。
特に、一人暮らしや高齢者だけの世帯では、食事の準備が負担になり、食事への関心が薄れる傾向になります。
このような状態を防ぐためには、彩りや料理の見た目を良くして、視覚的に楽しめるようにすることが大切です。
また、誰かと一緒に食べる機会を作り、会話をしながら食事の時間を楽しむことも食欲増進につながります。
3-2.栄養はしっかり摂るよう心がける
長寿のためには、栄養をしっかり摂ることが大切です。
低栄養になると、血液中に存在するタンパク質が減少します。そうすると、免疫機能が低下するため、風邪などの感染症にかかりやすくなり、健康リスクが高まるでしょう。十分に栄養を摂取することが、長寿への鍵となります。
食事を見直して長寿を目指しましょう
高齢者になると、さまざまなことが原因で食欲が低下しがちですが、健康的な体を維持するためには、若い世代と同じか、それ以上の栄養が必要となります。
食事量が少なく低栄養の状態が続くと健康リスクが高まるため、一汁三菜を意識した食事を摂り、バランス良く栄養を摂取しましょう。また、彩りを良くしたり、誰かと食べたりすることで、食欲の増進も期待できます。
毎日の食事メニューや食べる環境を見直して長寿を目指しましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。