食物繊維は炭水化物の一種?
炭水化物と食物繊維の関係性について解説

ヒトの消化酵素で消化できない食品中の難消化成分のことを食物繊維といいます。ですが、食物繊維が炭水化物の一種であることを、ご存じでしょうか。

炭水化物は消化の可否によって糖質と食物繊維に分類されますが、食物繊維は消化できないため、エネルギー源として活用できない種類の炭水化物ということになります。

しかし、糖質と食物繊維には異なる特徴や役割があり、糖質だけでなく食物繊維も適切に摂取することが大切です。

今回は炭水化物と食物繊維の関係や、炭水化物を健康的に摂取するためのポイントなどを解説します。

1.炭水化物と食物繊維の関係

炭水化物とは炭素と水素の化合物のことであり、食品から摂取したのちに消化吸収されてエネルギー源になる「糖質」と、消化されない「食物繊維」に分けられます。

糖質は分子構造によってさらに細分化され、最小単位の単糖のみからなる「単糖類」、単糖が2~10個程度結合した「少糖類」、さらに多数結びついた「多糖類」に分類されます。

多糖類には「消化性多糖類」と「難消化性糖類」があり、難消化性糖類と呼ばれるものは、食物繊維の仲間です。

食物繊維は消化されないまま大腸まで到達し、便の体積を増やして便通を良くしたり、腸内細菌を増やして腸内環境を改善したりする働きを持っていることが明らかにされています。

2.炭水化物と食物繊維の食事摂取基準

一日の食事から摂取する炭水化物の基準量は、性別を問わず全エネルギーのうち50~65%に収まる量です。厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020 年版)によると、身体活動レベル「ふつう」程度の自立している者の場合、30~49歳成人では、一日あたりの推定エネルギー必要量は男性2700kcal、女性2050kcalです。
(参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」)

そのため、一日あたりのエネルギー必要量50~65%を炭水化物から摂取する場合には、男性1350~1760kcal程度、女性1025~1330kcal程度を炭水化物由来とするのが理想です。
炭水化物1gからは約4kcalのエネルギーが産生されるため、重量換算すると30~49歳の男性は約340~440g、女性は260~330g程度の炭水化物を摂取するのが望ましいでしょう。

一方、一日あたりの食物繊維の摂取基準は、18~64歳では男性21g以上、女性18g以上であり、65歳以上においては男性20g以上、女性17g以上と設定されています。

なお、実際には平均18.4g程度しか摂取できていない調査結果もあり、生活習慣病を予防するには、成人では食物繊維を24g以上摂るのが理想的とされています。

3.健康的な炭水化物の摂り方

食品のなかに含まれる炭水化物の量は、糖質と食物繊維の量の合計値です。健康的に炭水化物を摂るには炭水化物の量だけでなく、「どの食品から摂取するか」という点にも注意しなければなりません。具体的には、食物繊維やビタミン、ミネラルなども一緒に摂れる雑穀やいも類などを意識的に食べると良いでしょう。

砂糖や甘味類のように甘いものや、精製度の高い穀類などはビタミン、ミネラルが少なく血糖値を急激に上昇させやすいため、過剰摂取にならないように注意する必要があります。参考に、精製度の高い穀類と低い穀類の100gあたりの炭水化物量および食物繊維量を表で紹介します。

<米>

食品名 白米(うるち米) 発芽玄米
炭水化物(食品100gあたり) 37.1g 35.0g
食物繊維(食品100gあたり) 1.5g 1.8g

参考:文部科学省「食品成分データベース

<パン>

食品名 食パン 全粒粉パン
炭水化物(食品100gあたり) 46.4g 45.5g
食物繊維(食品100gあたり) 4.2g 4.5g

参考:文部科学省「食品成分データベース

<麺>

食品名 ゆでうどん ゆでそば
炭水化物(食品100gあたり) 21.6g 26.0g
食物繊維(食品100gあたり) 1.3g 2.9g

参考:文部科学省「食品成分データベース

炭水化物を摂るときは、食物繊維の量も意識しよう

食物繊維は炭水化物の一種ですが、消化できずに大腸まで到達する物質です。糖質と一緒に食物繊維を摂ると、糖質の吸収速度を抑えて健康的に炭水化物を摂取することが可能になります。

現代人の多くは食物繊維の摂取量が不足しており、日頃の食事で意識的に食物繊維を摂り入れる工夫が重要です。主食を玄米や全粒粉パンなどに切り替えると、食物繊維の量を増やすことができます。無理なく食物繊維を増やして、健康的な食習慣に切り替えていきましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医