炭水化物はどれくらい摂ればいい?
炭水化物の働きと不足した場合の症状も解説

炭水化物はヒトにとって欠かせない栄養素の一つです。体内で分解されてエネルギーを産生しますが、過剰摂取すると脂肪として蓄積され、肥満の原因になる場合もあります。

一方で、炭水化物は摂らなすぎても良くありません。ダイエットで炭水化物の摂取量を減らそうとする方もいるかもしれませんが、炭水化物が不足すると集中力や判断力が低下するなどの弊害が起こるおそれがあります。

今回は、炭水化物の適切な摂取量と、炭水化物の働きや不足したときに起こる症状などを解説します。

1.炭水化物の働き

炭水化物の最も重要な働きは、生命活動の維持のために体内でエネルギーを産生することです。炭水化物には「糖質」と「食物繊維」の2種類があり、糖質は1gあたり約4kcalのエネルギーを産生します。

糖質にはブドウ糖やオリゴ糖、でんぷんなどさまざまな種類が存在しますが、体内ではおもにブドウ糖として存在しています。脳や神経、赤血球、酸素不足の骨格筋などは、通常、ブドウ糖以外のものをエネルギー源にすることができません。これらの組織へブドウ糖を供給することが、糖質の重要な役割です。

一方、炭水化物の一種である食物繊維は、大腸内で善玉菌のエサになって腸内環境を改善する働きがあります。食物繊維は消化酵素で分解できないため、基本的にはエネルギーを生み出す働きはありません。

2.炭水化物の食事摂取基準

炭水化物の一日あたりの摂取基準量は、男女とも年齢を問わず、一日の食事から摂取する全エネルギーの50~65%の範囲内と設定されています。そのため、炭水化物の適切な摂取量を計算するためには、一日のエネルギー量を把握しなければなりません。

エネルギーの必要量は以下、性別や年齢、身体活動レベルによって異なります。

<年齢、性別、身体活動別のエネルギー必要量(kcal/日)>

性別 男性 女性
身体活動レベル 低い ふつう 高い 低い ふつう 高い
0~5カ月 550 500
6~8カ月 650 600
9~11カ月 700 650
1~2歳 950 900
3~5歳 1300 1250
6~7歳 1350 1550 1750 1250 1450 1650
8~9歳 1600 1850 2100 1500 1700 1900
10~11歳 1950 2250 2500 1850 2100 2350
12~14歳 2300 2600 2900 2150 2400 2700
15~17歳 2500 2800 3150 2050 2300 2550
18~29歳 2300 2650 3050 1700 2000 2300
30~49歳 2300 2700 3050 1750 2050 2350
50~64歳 2200 2600 2950 1650 1950 2250
65~74歳 2050 2400 2750 1550 1850 2100
75以上歳 1800 2100 1400 1650
妊婦(付加量)初期 +50 +50 +50
妊婦(付加量)中期 +250 +250 +250
妊婦(付加量)後期 +450 +450 +450
授乳婦(付加量) +350 +350 +350


※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が一日の必要量を満たすと推定される一日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020 年版)

なお、身体活動レベルは、一日中ほとんど座っていることが多い場合を「低い」、座り仕事が多いが運動や散歩なども行なう場合を「ふつう」、立ち仕事や活発な運動習慣がある場合を「高い」とします。

上表から自分に該当するエネルギー量を見て、50~65%相当を炭水化物から摂取するのが適切です。

3.炭水化物が不足するとどうなる

炭水化物が不足するとエネルギーが欠乏し、集中力が低下したり判断力が鈍ったりするので注意が必要です。

炭水化物は消化吸収されておもに血液中のブドウ糖として存在しますが、血液中のブドウ糖が不足すると筋肉や肝臓に貯蔵されていたグリコーゲンが分解され、ブドウ糖を産生してエネルギー源にします。しかし、グリコーゲンも消費された場合には、エネルギー不足に至ります。

脳はブドウ糖以外のエネルギー源を使うことができないため、ブドウ糖の欠乏は意識障害などを起こすことがあります。

炭水化物は適量を摂取することが大切

炭水化物は、脳や全身のエネルギーのもとになる重要な栄養素です。

無理な食事制限などで炭水化物の摂取を減らし過ぎると、エネルギー不足となって集中力が低下し、日常生活に支障をきたすこともあるでしょう。

自分の一日あたりに摂取すべきカロリー量を把握して、全カロリーの50~65%の範囲内となるように炭水化物を摂取するのがおすすめです。

炭水化物の摂取が多すぎると肥満のもととなり、少なすぎるとエネルギー不足を引き起こします。適量を摂取して、健やかな毎日を過ごしましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。