1.高齢者の睡眠にはどのような特徴があるか
高齢者の睡眠は、若い世代と比べて浅くなりやすいことが知られています。具体的には、なかなか寝付けなかったり、寝ている途中にトイレに行きたくなって目覚めてしまったり、早朝に目を覚ましたりするケースが多いでしょう。
大脳を休める「ノンレム睡眠」は睡眠の深さによって浅い状態と深い状態に分けられますが、高齢者では深いノンレム睡眠が減少し、浅いノンレム睡眠が増加する傾向が見られます。そのため眠りが浅くなり、尿意などで目を覚ましやすくなるのです。
また、加齢にともなって体内時計が変化し、体温調節やホルモン分泌・血圧など、睡眠に関わる生体機能リズムが前倒しになるため、早寝早起きの傾向が強まります。高齢者の睡眠には中途覚醒や早朝覚醒の特徴があるため、「眠れないけれど寝床でゴロゴロし続けてしまう」という傾向が多く見られます。
しっかり眠れないまま寝床でゴロゴロしてしまうのは、睡眠の満足度低下につながりやすい状況です。
2.高齢者の不眠(睡眠障害)の原因
健康な状態でも高齢者の眠りは浅くなりますが、さらに心身の病気やストレスなどの影響で、睡眠障害が引き起こされるケースもあります。
また、睡眠時無呼吸症候群や夜間頻尿、慢性疼痛なども原因の一つです。若い頃よりも活動量が低下してメリハリのない日常生活になったり、服用薬の副作用で不眠になったりすることもあります。自分の不眠の原因を知り、正しく対処することが重要です。
3.不眠(睡眠障害)の改善方法
高齢者の不眠を改善する方法を解説します。
3-1.生活リズムを整える
睡眠のリズムを整えるため、同じ時刻に毎日起床し、規則正しく一日3食の食事を摂るよう心がけましょう。起床後に太陽の光を浴びてしっかり目覚めることも重要です。昼寝をするなら20~30分程度にとどめ、夕方以降の昼寝はやめましょう。
眠る前に刺激になるものを避けたり、規則的な運動習慣を身につけたりするのも有効です。睡眠時間の長さにはこだわりすぎず、「日中の眠気に困らないならば問題ない」と捉えて、できることから一つずつ実践していきましょう。
3-2.就寝環境を整える
入眠しやすい就寝環境を整えることも重要です。寝る前は心身がリラックスできるよう、音楽鑑賞や読書など自分の好きなリラックス法を取り入れるのがおすすめです。夜は暗めの照明でゆったり過ごすと、体内時計の乱れを防ぐことにつながります。
体が沈み込むほどやわらかい布団や、骨を圧迫する硬すぎる敷き布団は体に負担がかかりやすいため避けて、適度に硬い寝具を選びましょう。
これらの工夫を取り入れても改善されない場合は、無理をせず医師に相談してください。なお、不眠の原因が睡眠時無呼吸症候群や、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)などである場合には、医療機関でそれぞれの病気に適した治療を行なう必要があります。
高齢者の不眠対策は生活習慣と就寝環境の改善から始めましょう
高齢者は眠りが浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が見られやすくなります。さらに、ストレスや疾患などが加わると深刻な睡眠障害につながるケースもあるので、注意が必要です。
起床時間を一定にして朝日をしっかり浴びる、寝る前は部屋の照明を暗めにするなど、快眠につながる生活習慣を取り入れていきましょう。不眠が長引く場合には、一人で悩まず医療機関に相談することが大切です。
快適な眠りのために、できることから一つずつ行動していきましょう。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医