高齢者にみられる脱水症状とは?
脱水症状の原因や予防法について解説

水分の摂取が不足したり、大量の汗をかいたりしたときに起こる脱水症状。体内の水分が不足すると、通常はのどの渇きや立ちくらみなどの症状が現れますが、高齢者の場合は自覚症状がないまま脱水が進行してしまうケースもあるので要注意です。

今回は、高齢者に多く見られる脱水症状の特徴や原因、予防法などを解説します。

1.高齢者にみられる脱水症状について

脱水症状とは、体の水分不足(脱水)にともなって現れる症状のことです。具体的には、口の渇きや倦怠感、立ちくらみ、めまいなどが起こります。そのほかに、皮膚や舌の乾燥、微熱、食欲低下、意識障害、頻脈なども代表的な症状です。

人体の約60%は水分で構成され、そのうち5%を失うと熱中症や脱水の症状が現れ、10%の喪失では循環不全や筋肉のけいれんが発生します。

そのため、脱水症状が見られた場合にはしっかりと水分を補給しましょう。なお、高齢者の場合、脱水の初期では症状がはっきりと現れないこともあるので、注意が必要です。

2.脱水症状の原因とは?

脱水症状の原因は、体内の水分量バランスの乱れです。水分を多く失ったり、水分摂取量が少なくなったりする、あるいは両方が同時に起きたりすると脱水症状が現れます。

水分を多く失うのは、汗をかきすぎる、下痢や嘔吐で体内の水分を排出してしまうのがおもなケースです。

一方、水分摂取量が少なくなってしまうのは、トイレに行く回数を減らすため飲水を控える、のどの渇きに気付かず水分補給がおろそかになるなどのケースで見られます。

高齢者は喉の渇きを感じにくくなり、水分をあまり摂取しなくなる傾向がある点に注意が必要です。また、加齢によって皮下組織や筋肉に保有する水分が少なくなるのも、高齢者が脱水を起こしやすくなる原因です。

3.高齢者の脱水症状を予防するには

高齢者の脱水症状を予防するには、水分補給が欠かせません。

3-1.水分の多い食事を心がける

成人は、一日に2.5L以上の水分を飲み物や食事などから補給しなければなりませんが、高齢者では飲み物を多量に摂るのは難しい場合もあります。そのため、高齢者は水分量の多い食事を意識するとよいでしょう。

もやしやトマトのような水分が豊富な食材を使うと、効率良く水分を摂ることができます。一日3食の食事に加えて、お茶を飲んで一息入れる習慣を作るのもおすすめです。

3-2.入浴前後・就寝前・起床後にも水分補給をする

入浴前後と就寝前、起床後には意識的に水分補給をしましょう。入浴時や就寝中には、無自覚のうちにたくさん汗をかくので、水分が失われやすくなります。水分を摂取するときは、一気に飲むのではなく、少量をゆっくりと飲むように意識しましょう。

大量に発汗したときや下痢・嘔吐などの場合は、水分とともにナトリウムやカリウムなども失ってしてしまうため、経口補水液やスポーツ飲料を摂り入れるのが効果的です。ただし、糖分、ナトリウム、カリウムなどの摂取制限のある方は、これらの飲料を摂取する前に主治医に相談しましょう。

また、心臓や腎臓の持病がある人は厳密な水分管理が必要なケースもあるので、主治医の指示に沿って水分補給を行なうことが重要です。

高齢者に起きる脱水症状を正しく理解し、日ごろから対処しましょう

高齢者は、のどの渇きを自覚しづらくなって水分摂取のタイミングを逃してしまったり、多めの飲水が困難であったりするため、脱水症状を起こすリスクに注意が必要です。

また、高齢者は軽度の脱水が起こった際にも、自覚症状が出づらい傾向にあります。

こまめな水分補給を習慣づけ、食事からも水分を確保するなどの対策をとって、脱水を予防していきましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医