テレワークは健康にどのような影響がある?
起こりうる不調と対処法を解説

近年、新型コロナウイルスへの対策やワークライフバランスの実現を目的として、テレワークが急速に普及してきました。

情報通信技術を有効活用して、通勤などの負担をなくせるのがテレワークの大きな魅力ですが、非対面化によるコミュニケーション不足や身体活動量の低下など、いくつかのデメリットも存在します。そのため、テレワークがもたらしうる不調をきちんと把握することが欠かせません。

今回は、テレワークに関連する健康問題と対処法を解説します。

1.テレワークによる健康問題1:人と接する機会が減ることで生じうる不調

テレワークの環境が整うと、オンライン会議や通話による連絡が増え、その分顔を合わせて相手とやりとりする機会が減っていきます。直接対話ができないため、意思疎通の困難さからメンタル不調をきたす場合があります。

具体的にどういった不調が生じるのか、またその対処法について見ていきましょう。

1-1.生じうる不調

上司や関係部署などと情報共有する際、テレワークではパソコンの画面越しや音声のみでのやりとりとなるため、正確な伝達が難しくストレスを感じる場合があります。

本来、コミュニケーションとは話す情報そのものだけでなく、表情や声のテンポなど非言語的な要素が重要です。しかし、テレワークでは非言語コミュニケーションに含まれる意図などが、伝わりづらい状況に陥りがちです。

また、対面できない分「用意周到に仕事をこなさなければならない」という気負いが生じたり、感情面の共有の難しさから不安を覚えたりすることもあるでしょう。精神的な緊張状態が続くことから、気分の落ち込みや不眠、集中力・注意力の低下などの不調につながる場合もあります。

1-2.対処法

テレワークによるメンタル不調を未然に防ぐには、できるだけ上司や同僚とコミュニケーションの機会を持ち、不安感を和らげる意識を持つことをおすすめします。業務以外の話題を持ったり、メンタル不調を感じた場合は上司に相談できたりすると理想的です。

コミュニケーション不足から、職場での自分の価値を見いだせなくなってしまうケースもあるので、メンタル不調を軽視せず、誰かと接点を持ちましょう。

2.テレワークによる健康問題2:運動不足により生じうる不調

テレワークではオフィスへ足を運ぶことがなく、通勤や勤務中の移動がなくなるため、運動不足による不調が起こりやすくなります。

2-1.生じうる不調

テレワークによって活動量が低下し、筋力が衰えるリスクがあります。座りっぱなしの時間が増えると、特に下半身の筋肉量が減少しやすくなり、腰に負担がかかる姿勢を長時間取り続けていれば腰痛のリスクも増えるため対処が必要です。

座位で血流が長時間停滞し続けると、深刻な場合は深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)を起こす危険さえあります。

2-2.対処法

座りっぱなしにならないよう、こまめに体を動かすことを意識しましょう。

目安としては、30分に1回の頻度で立ち上がって体を動かすようにすると、効果的とされています。仕事中にストレッチなど取り入れたり、スキマ時間に散歩したりするのがおすすめです。エコノミークラス症候群の予防として、水分補給も欠かさないようにしましょう。

3.テレワークによる健康問題3:パソコン操作により生じうる不調

テレワークではパソコンなどを介した業務量が増えるため、パソコン操作特有の不調が出やすくなります。

3-1.生じうる不調

ずっと同じ姿勢でパソコン作業を続けていると、首や肩のこりがひどくなったり、腰痛に悩まされたりしやすくなります。眼精疲労によって頭痛が出たり、ドライアイや視力低下を起こしたりする人もいるので注意が必要です。うつむきがちな姿勢を続けていると、手指や腕のしびれが出る人もいます。

3-2.対処法

パソコン作業にともなう負担を軽減するには、目の使い過ぎを避けることが重要です。パソコン作業は連続しすぎず、1時間に10~15分は休むようにしましょう。

室内と手元の照明の差を少なくし、モニターに照明器具の光が映りこまないようにするのも、目の負担軽減に役立ちます。

テレワークによる不調は健康に気遣った生活で予防しよう

新型コロナウイルスへの対処として定着してきたテレワークは、ライフワークバランスを確立するうえで有用な手段といえます。その一方で、心身へ不調をもたらすリスクもあるため注意が必要です。

メンタルの不調や筋力低下、眼精疲労などの不調は、未然に防いだり、不調が出始めた時点ですぐに対処したりすることが欠かせません。

テレワークのメリットを十分に引き出しながらも、心身の健康を気遣って安心の毎日を過ごしましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。