ピロリ菌の影響を受けやすい悪い食べ物・避けるべき食べ物とは?
おもな症状や悪化要因についても解説

「ピロリ菌」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?最近テレビや雑誌で取り上げられることもあるため、ご存知の方も多いかもしれません。

ピロリ菌は、胃の内部に生息することがある菌です。

では、ピロリ菌に感染すると、どのような影響が出るのでしょうか。今回は、ピロリ菌が引き起こす症状や、ピロリ菌による影響を受けづらくする方法などについて解説します。

1.ピロリ菌とは?

ピロリ菌は、正式にはヘリコバクター・ピロリ菌といい、胃に生息できる特徴を持つ菌のことです。胃のなかは胃酸により強い酸性の状態にあるため、通常の菌は生息できない環境にあります。

しかし、ピロリ菌はアンモニアを尿素から生成し、周囲の胃酸を中和して身を守ることができるため、胃に生息し続けられるのです。

どのようにしてピロリ菌に感染するのかは、まだ明らかになっていませんが、免疫機能が十分に発達していない幼児期までに、食べ物や飲み物を経由して感染すると考えられています。そのため、上下水道が整備されていない地域・国では、感染率が高まるともいわれています。

とはいえ、日本の感染者も少なくありません。日本でも衛生状態が悪い時代に乳幼児期を過ごした世代の感染率が高く、50代以上の方では約7~8割がピロリ菌に感染しているといわれています。若い世代の感染率は減少していますが、人数に換算すると約6,000万人が感染していると考えられています。

2.ピロリ菌が引き起こすおもな症状と悪化要因

ピロリ菌は、毒素やアンモニアなどを生成して、胃の粘膜を傷付けてしまいます。さらに、胃酸から胃を守るために分泌される粘液の量を減少させ、胃がダメージを受けやすい状態にしてしまうのです。その結果、ピロリ菌に感染すると胃炎になることがあります。

ピロリ菌に長期間感染していると、胃炎がさらに進行して慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの疾患を引き起こすこともあるため、注意が必要です。

ピロリ菌に感染したとしても、必ず疾患につながるわけではありません。ただし、喫煙者や日頃から塩分の多い食事を好む方、ストレスが多い環境で生活している方はリスクが高まることがわかっています。

3.ピロリ菌の影響を受けやすい悪い食べ物・避けるべき食べ物

感染を防ぐことも大事ですが、ピロリ菌の影響を受けづらい環境を作ることも心がけたいものです。食事に関しては、塩分の多い食べ物が胃の環境を悪化させるといわれています。

3-1.塩分の多い食べ物はできるだけ避ける

塩分の多い食事は、胃の表面を守っている粘液を減らし、ピロリ菌による胃への影響を大きくする要因の一つです。塩分の大量摂取につながる食品としては、カップ麺やインスタントラーメン、梅干しがあります。

塩分の摂取目標量は、男性で一日に7.5g未満、女性で6.5g未満です。しかし、カップ麺はスープまですべて飲み干すと、1食あたり4.0~7.0gもの塩分を摂取することになります。
カップ麺を食べるなら、スープはできるだけ飲まないようにするなど工夫しましょう。

3-2.塩分の過剰摂取を避ける工夫

塩分の過剰摂取を避けるためにも、次のことを心がけましょう。

  • ・カップ麺のスープは全部飲まないようにする

  • ・減塩食品を選ぶ

  • ・香辛料やレモンなどを利用して調味料の使用量を減らす

  • ・味噌汁は具をたくさん入れて汁の量を減らす

  • ・昆布やかつおなどの出汁を使う

  • ・ソースやケチャップなどはかけずにつけて食べる

  • ・弁当に付属しているソースは無理に全部使わない

ピロリ菌から胃を守って健康に過ごそう

ピロリ菌とは、胃に生息して胃炎などを起こす要因となる菌です。50代以上の方では約7~8割が、このピロリ菌に感染しているといわれています。

感染したからといって、必ず何か症状が出るわけではありませんが、胃の粘膜に悪影響を及ぼし、胃炎や胃潰瘍などの疾患を引き起こすことがあります。また、ピロリ菌による影響は、塩分の多い食品の摂取によりリスクが上がるといわれています。

カップ麺のスープは全部飲まずに残したり、味噌汁に具をたくさん入れて汁の量を減らしたりすることで、控えめな塩分摂取を心がけましょう。

ピロリ菌に感染してしまっても、服薬治療で胃の除菌を行なえるため、胃の症状で気になることがあれば早めに医療機関を受診するようにしましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。