ヘモグロビンの正常値は?
貧血と判断される検査値とヘモグロビン値が低くなる理由を解説

「ヘモグロビンの正常値はいくつなのだろう?」
「基準値の範囲内であれば、異常なしという意味なのだろうか?」
ご自身の血液検査の結果を見て、ヘモグロビンの数値が基準値に収まっているか否かで正常・異常を判定しようと考える方は多いかもしれません。

しかし、基準値は統計学的な手法で算出されたものであるため、体に異常がなくても少し基準値から逸脱してしまうケースもあります。今回はヘモグロビンの正常値や、ヘモグロビン値が低くなる理由を解説します。

1.ヘモグロビンの基準値と正常とされる値

ヘモグロビンの基準値と、「正常」と判断する際の数値について解説します。

1-1.ヘモグロビンの基準値

ヘモグロビンの基準値は、男性が13.0~16.6g/dL、女性が11.4~14.6g/dLです。しかし、厳密には「基準値内に入っていること」と「健常であること」は同一ではありません。なぜならば、ヘモグロビンの基準値を定めるときは、健常成人の検査値を集めたデータの分布を使用しているからです。平均値を中心に全データの95%を含む範囲(平均値プラスマイナス2SD)を基準値と定めているため、健常人の5%は基準値から外れてしまいます。

また、基準値は40~60歳代の検査結果をもとにしていることが多く、高齢者のようにデータ集団との年齢差が大きいと、異常がなくても基準値から少し外れてしまう可能性もあります。そのため、基準値の範囲から少し外れていても、必ずしも「異常」とは判断できません。

1-2.「正常」とされるヘモグロビン値

一般的には、成人男性や新生児で13g/dL以下、成人女性や学童で11.4g/dL以下、高齢者や乳幼児で11g/dL以下だと、「貧血」と判断されます。さらに、ヘモグロビン値が7~8g/dL以下になると、ほとんどの人に息切れやめまいなどの貧血症状が現れます。

基準値より少々下回っていても、経年的に数値変動が少なくて安定しており、他に疾患もない場合には、その人にとっての正常値と判断できるでしょう。しかし、ヘモグロビン値が仮に基準値内にあっても、短期間で急に低下しているようなケースでは、何らかの病気が隠れている可能性があるため、医療機関を受診して適切な診断を受ける必要があります。

2.ヘモグロビン値が低くなる理由

体内での鉄の必要量が増えたり、供給量が減ったりすると、鉄欠乏性貧血を起こしてヘモグロビン値が低下します。また、出血による鉄の喪失もヘモグロビン値が低くなる理由の一つです。偏った食事で鉄分摂取が少なかったり、ビタミンCなどの欠乏による鉄の吸収不良が起こっていたりすると、鉄の供給が不足しがちになるので注意してください。

その他、男性や閉経後の女性では、消化管出血による鉄分喪失が原因で貧血になっているケースも見られます。

ヘモグロビン値が異常な場合は早めに医療機関に相談しましょう

ヘモグロビンの基準値は男性が13.0~16.6g/dL、女性が11.4~14.6g/dLですが、この基準値から多少外れている場合でも、必ずしも「異常」とは限りません。

基準値は統計学的に算出された数値であるため、体に異常がなくても基準値をやや逸脱してしまうケースもあります。そのため、健康診断などで異常値を指摘された場合には、きちんと医療機関を受診して、鉄欠乏性貧血などの病気の有無を明らかにすることが大切です。

また、血液検査の結果は、経年的な推移を見るのも重要です。たとえ基準値内であっても、ヘモグロビン値の変化が大きい場合には医師に相談しましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。