1.運動しないとどうなるのか
運動しない生活が続くと、体にどのような影響があるのでしょうか。
1-1.筋力の低下をまねく
運動不足が続くと、体力や全身の持久力が低下し、体の活動量が減少します。活動量が減ることで、さらなる筋力・筋持久力の低下や、体力・全身持久力の低下もまねきかねません。
その結果、歩く・立つなどの移動能力が低下し、仕事や家事・外出・趣味による活動の機会が減るなど、生活の質も低下します。精神的にも、ふさぎ込みやすくなってしまうでしょう。
1-2.肥満や生活習慣病のもとになる
運動量が不足していると、運動による消費エネルギーと、食事から得る摂取エネルギーのバランスが崩れてしまい、肥満をまねきやすくなります。肥満のなかでも特に「内臓型肥満」は、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高くなるといわれています。
1-3.ロコモティブシンドロームのリスク因子となる
運動不足がまねく筋肉の衰えによって骨折や転倒をしやすくなり、介護リスクが高くなる状態を「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」と呼びます。
ロコモを放置すると、だんだんと寝たきりなどの介護が必要な状態につながり、生活の質が低下してしまうため注意が必要です。
2.日本の運動習慣の現状について
運動習慣のある人は、男女ともに高齢者が多く、若い世代のほうが運動習慣のある人が少ない傾向にあります。なお、ここでいう「運動習慣のある人」とは、週2回以上・1回30分以上の運動を1年以上継続している人です。
日常生活において活動量を大きくするには、歩く機会を増やすことが効果的とされています。
理想的な歩数は一日あたり1万歩と考えられていますが、日本人の男女ともに、目標歩数には足りていない現状があります。
歩数は2008年~2017年までの10年間で、男女ともほとんど増減は見られていません。
歩くことを中心とした運動量の増加は、生活習慣病のリスクを下げることが期待されているため、意識して歩数を増やせるとよいでしょう。
3.【年代別】身体活動量の基準
身体活動量とは、生活活動と運動による活動量のことです。ここからは年代別に、理想的な身体活動量について解説します。
65歳以上
横になったままや座ったままでなければ、どのような運動でも良いので、強度を問わない身体活動を毎日40分行ないます。
例えば、ラジオ体操10分+歩行20分+植物の水やり10分などです。
18~64歳
3メッツ以上の強度の身体活動を毎日60分行ないます。具体的には、歩行30分+ストレッチ10分+掃除20分などの活動です。
メッツとは運動や身体活動の強度を表す単位のことで、安静時を1としてその何倍のエネルギーを消費するかで活動強度を示しています。
18歳未満
楽しく体を動かすことを毎日60分以上行なうことが推奨されています。
なお、健康診断などで何かしらの異常が見つかった場合には、保健指導や医師の指導のもとで安全に気を付けて運動をしましょう。
健康のために適度な運動を心がけましょう
運動の継続は筋肉量だけでなく、消費エネルギーの増加にもつながるうえ、肥満予防にもなりえます。
また、適度な運動は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病予防のためにも大切です。
毎日時間をかけて運動することは大変かもしれませんが、まずは厚生労働省も薦めているように今よりも10分多く体を動かすことから始めてみましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。