脂肪燃焼のメカニズムとは?
効率的な運動方法やトレーニングについて解説

体型を維持するためにも、脂肪を落としたいと考える方は多いでしょう。脂肪燃焼を効率良く行なうためには、食事制限以外にも運動をする必要があります。

今回は、脂肪燃焼を効率良く行なうための運動方法やトレーニングについて解説します。

1.脂肪燃焼のメカニズムについて

一般的に、1日に消費されるエネルギーのだいたいの割合は、基礎代謝が最も多く約60%、次に身体活動量が約30%、食事誘発性熱産生(食事後の消費エネルギー量が増えること)が約10%です。

基礎代謝は筋肉量や体格によって変わり、食事誘発性熱産生は食事量や栄養素の種類によって変わります。そのため、基礎代謝量と食事誘発性熱産生には、あまり大きな変動がありません。

つまり、1日の消費エネルギーを増やすためには、身体活動量を増やすことが重要だといえるでしょう。

1-1.身体活動量とは

身体活動量とは、日常生活などで体を動かすことにより発生する運動量のことです。身体活動量は、日常的に行なう家事などによるものと、運動によるものに大きく分けられます。

身体活動量が多い方は、高血圧、糖尿病などの疾患にかかるリスクが低下することが知られています。そのため、身体活動量を増やすことは脂肪燃焼だけでなく、健康維持の効果も期待できるでしょう。

1-2.身体活動量を増やす要素は?

身体活動では、体格や活動時間、活動強度によって消費エネルギー量が変わります。そのため、身体活動による消費エネルギー量を増やすには、高い強度の活動を長時間行なう必要があります。

1-3.活動強度によって使用される栄養素が異なる

活動強度によって、消費エネルギー量だけでなく、身体活動に使用されるエネルギー源も変わります。

ウォーキングなどの強度の低い運動をすると、エネルギー源として脂肪を使用する割合が増え、ランニングやキックボクシングなどのように強度の高い運動の場合は、糖がエネルギー源として使用される割合が増えます。

1-4.高い強度の運動でも脂肪が使用される

上述のとおり、高い強度の運動をすると、筋肉や肝臓に蓄えられている糖がエネルギー源として使用されます。そして活動後には、筋肉や肝臓に糖を補填するために脂肪が使用されるのです。

そのため、身体活動による脂肪燃焼は運動時間や活動強度だけでなく、活動後の回復時にどのくらい脂肪が使われているかという点も、考える必要があるでしょう。

2.脂肪燃焼の効率を上げるポイント

脂肪を燃焼するためには運動をすることが重要ですが、ランニングなどの活動強度の高い運動を長時間行なうことは、あまり簡単なことではないでしょう。

できるだけ効率良く脂肪燃焼するにはどのようにしたら良いのか、脂肪燃焼の効率を上げるためのポイントを紹介します。

2-1.活動強度よりもエネルギー消費量が重要

脂肪燃焼を考えると、活動強度よりもどのくらいエネルギーを消費するかが重要だといえるでしょう。

活動強度の低い運動は、エネルギー源として糖よりも脂肪が使用されることが多いものの、多くのエネルギーを消費するためには、長時間行なわなければなりません。
一方、強度の高い運動は、短時間で多くのエネルギーを消費することができますが、エネルギー源として使用されるのは脂肪ではなく糖のため、脂肪燃焼率は低くなります。

2-2.運動時間は小分けでも問題ない

近年の研究では、運動によって消費されるエネルギーは運動時間の合計で変化することがわかってきています。例えば、1日30分の運動を行なう場合、30分の運動1回分と10分の運動を3回分では消費されるエネルギー量に差はありません。

また、「脂肪燃焼には1回20分以上の運動が必要」と言われていますが、20分未満の運動でも脂肪燃焼は起こります。

つまり、まとまった運動時間を確保できないときには、短い時間でできる運動を複数回行なえば問題ありません。

2-3.脂肪の種類によって燃焼の仕方が異なる

脂肪には、大きく分けて皮下脂肪と内臓脂肪の2種類が存在します。

皮下脂肪は皮膚の内側につく脂肪で、過剰エネルギーがゆっくりと蓄積したものです。体の表面をおおうクッションのような役割を持ち、衝撃や寒さから体を守っています。
一方、内臓脂肪は腸などの内蔵のまわりについている脂肪です。必要になった際には、内臓にはりめぐらされた血管から肝臓へすぐに移動し、全身へと送られます。

これらの脂肪がエネルギー源として必要になると、リパーゼ(脂肪分解酵素)によって分解され、血液中に放出されます。その際、皮下脂肪はエネルギーをゆっくり放出しますが、内臓脂肪は比較的早く燃焼するという点で異なるのです。

内臓脂肪が蓄積するとメタボリックシンドロームの原因になるので、健康を維持するためには減らしたいものですが、体型維持を考えたときには、皮下脂肪もある程度減らしたいところでしょう。

2-4.脂肪燃焼は継続が重要

脂肪燃焼のために運動をする場合には、個人の体力や環境に合わせて継続できるものを選択することが重要です。ランニングなどの運動強度の高いものは、筋力の少ない人や運動習慣のない人が行なうにはハードルが高いといえます。そのため、最初は、ウォーキングなどの運動強度の低い運動を日常生活に取り入れ、継続して行なうようにしましょう。

3.脂肪燃焼におすすめの運動方法3選

運動による脂肪燃焼は、有酸素運動を取り入れたほうが効果的です。有酸素運動とは、筋肉を動かすエネルギーとして糖や脂肪だけでなく、酸素も一緒に使用する運動のことです。
それに対し、筋肉を動かす際にエネルギー源として酸素を使わない、強度の高い運動は無酸素運動と呼ばれます。

有酸素運動は、サイクリングやジョギング、ハイキングなど屋外で行なわれる運動以外に、自転車トレーニングやエアロビクスなど屋内で行なえる運動もあります。ここでは、脂肪燃焼におすすめの運動を3種類紹介します。

3-1.サイクリング

サイクリングは先ほども触れているとおり、脂肪を燃焼する有酸素運動に分類されます。自分で負荷をコントロールしやすく、膝への負担も少ないため、あまり運動が得意ではない方でも始めやすいでしょう。

さらに、自転車は通勤や買い物をするための移動にも使用できるため、日常生活にも取り入れやすいのが特徴です。普段は、車で通勤や買い物をされている方は、近所の移動を自転車に切り替えることで運動時間を確保できます。

3-2.なわとび

なわとびは、体幹を使って行なう有酸素運動で、短時間のうちに大きなエネルギーを効率良く消費できるというメリットがあります。1分あたり120~160回跳ぶほどのスピードで10分間継続すれば、30分間早歩きを行なった場合と同等のエネルギーを消費することが可能です。

3-3.水泳

水泳は、バランス良く全身の筋肉を使用する有酸素運動です。水の抵抗を受けることで、ゆったりとした動きでも大きなエネルギーの消費につながるため、泳ぎが苦手な方も水中ウォーキングを行なえば、効率良くエネルギーを消費できるでしょう。
水圧によるマッサージ効果や、浮力によるリラックス効果も期待できます。

脂肪燃焼には自分に合った運動を長い時間行ないましょう

運動によるエネルギー消費量は、活動時間や活動強度によって決まります。そのため、脂肪燃焼においては、自分の体力にあった運動をできるだけ長い時間行なうことが重要です。

運動によるエネルギー消費量は、30分の運動1回と10分の運動3回で変わらないとされています。まとまった運動時間を確保できない場合は、1回数分の運動を複数回行なうことから始めましょう。

監修者情報

氏名:豊田早苗(とよだ・さなえ)
とよだクリニック院長。鳥取大学医学部卒。精神科・心療内科・内科・神経内科(認知症、物忘れ)の診療を担当している。総合診療医学会、認知症予防学会、精神医学会などに所属。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。