1.血管の種類とそれぞれの機能について
血管の種類は、大きく分けて動脈・静脈・毛細血管の3つです。ここでは、それぞれの機能を解説します。
1-1.動脈
動脈は、心臓から全身に血液を送り出す働きを持ちます。その働きにより、栄養や酸素が体中に運ばれます。
1-2.静脈
静脈は、全身を巡った血液を心臓に戻す働きを担っています。その働きにより、老廃物や二酸化炭素が回収されます。
1-3.毛細血管
動脈から細かく枝分かれし、全身に張り巡らされているのが毛細血管です。小さな細胞の一つひとつに栄養や酸素を届け、老廃物や二酸化炭素を回収する役割があります。
また、ウイルスなどの外敵が侵入した際に免疫細胞を送り出したり、体温を調節したりするのも、毛細血管の重要な働きです。
2.血管には血管内皮細胞というものがある
血管壁は外膜・中膜・内膜の3層構造となり、最も内側に存在するのが血管内皮細胞です。血管内皮細胞は血管を流れる血液に触れる位置にあり、おもに次のような機能を持っています。
2-1.血管壁のバリア機能
血管内を流れる血液中に悪影響をおよぼす成分があると、その成分が血管壁に侵入しないように防ぎます。
2-2.血管の活性化機能
血管内皮細胞は、一酸化窒素を生み出します。この一酸化窒素には、血管壁を広げて血圧を下げる働きや、血液を固まりにくくする働きがあります。
3.血管を健やかに保つポイント
血管を健やかに保つには、血管内皮細胞が正常に機能している必要があります。
血管内皮細胞をイキイキとさせるポイントは、次の3つです。
3-1.食事
食生活が乱れると、活性酸素が過剰に発生しやすくなります。活性酸素は、血管内皮細胞にダメージを与える物質です。
活性酸素を減らすために、緑黄色野菜などの抗酸化成分を含む食材を積極的に取り入れつつ、栄養バランスの良い食事を意識しましょう。
また、血圧が高い状態であることも、血管内皮細胞へのダメージにつながります。塩分の過剰摂取は高血圧を招くため、食事の際には減塩を心がけましょう。
3-2.生活習慣
ストレスにより心身に負担がかかると、活性酸素の産出が促され、血管内皮細胞のダメージにつながってしまいます。そのため、日頃からストレスを溜め込まないよう、適度に発散することが大切です。
併せて、睡眠時間をしっかりと確保し、心身の疲れを慢性化させないようにしましょう。
3-3.運動
適度な運動は、全身の血流をスムーズにし、血管内皮細胞を活性化させます。運動のなかでも、ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にするのがおすすめです。具体的には、中程度以上の運動量で、毎日30分以上行なうことを目標にしましょう。
運動するための時間を確保できない場合は、「電車に乗るときは目的地よりも前の駅で降りる」「家から遠いお店に徒歩で買い物に行く」など、日常生活に取り入れる方法もあります。
ウォーキングに加えて、筋肉の柔軟性を高めるストレッチや、息が上がらない程度の筋力トレーニングを行なうと、血管内皮細胞を活性化させる効果が高まりやすいでしょう。
生活を見直し血管機能を向上させましょう
血管には、心臓から全身に血液を送り出す動脈、全身を巡った血液を心臓に戻す静脈、細胞に栄養や酸素を届け、老廃物や二酸化炭素を回収する毛細血管の3つがあります。
血管を健やかに保つためには、悪い物質が血液を通じて血管壁に侵入しないように防いだり、血液を固まりにくくしたりする働きを持つ「血管内皮細胞」を活性化させるのがポイントです。
栄養バランスや減塩を意識した食事、ストレスや心身の疲れを溜め込まない生活習慣、毎日30分以上の適度な運動などの観点から、日々の生活を見直しましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。