脂質は摂りすぎも不足も体に良くない?
一日の摂取目安量について解説

脂質は三大栄養素の一つで、人体のエネルギー源としてとても大切なものです。しかし、「脂質の摂りすぎに注意しよう」といわれることが少なくありません。一方で、摂取量が少なすぎるのも問題となることがあります。

今回は、脂質の摂取量が私たちの体におよぼす影響について見ていきましょう。目安となる摂取量も紹介しているので、参考にしてみてください。

1.脂質の摂りすぎはなぜ良くないのか

脂質の摂りすぎが良くないといわれるのは、次のような影響が出る可能性があるためです。

  • • HDLコレステロールが減る

  • • LDLコレステロールや中性脂肪が増える

  • • 脂質異常症や肥満のリスクが高まる

  • • 血管の弾力性が低下する

  • • 高血糖や高血圧を引き起こす

HDLコレステロールは血管に蓄積されたコレステロールを回収するため「善玉」、LDLコレステロールは逆にコレステロールを増やしてしまうため「悪玉」と呼ばれています。脂質を摂りすぎてしまうと、HDLコレステロールの減少とLDLコレステロールの増加が起き、肥満や生活習慣病につながるおそれがあります。

脂質異常症や肥満はメタボリックシンドロームの要因にもなり、心臓や血管に負担をかけてしまうこともあるため、注意が必要です。

また、脂質が体内に溜まってくると、インスリン分泌の低減や血管の収縮を招き、高血糖や高血圧を引き起こす原因にもなります。

2.脂質は不足しすぎても体に良くない

脂質の摂りすぎは、健康にさまざまな影響を与えることで知られていますが、不足しすぎても健康を損なうことがあるため注意が必要です。

脂質の不足は、次のような影響をもたらすことがあります。

  • • 免疫機能が低下して体の抵抗力が落ちる

  • • エネルギー不足によって疲れやすくなる

  • • 細胞膜や血管壁が弱まる

脂質の一種であるコレステロールは免疫機能にも関係しているため、摂取量が不足すると体の抵抗力が落ちてしまうことがあるでしょう。

脂質は、少量でエネルギーを多くつくり出せる特徴があることから、脂質の摂取量が減るとエネルギー不足につながる可能性もあります。

また、コレステロールは、体内で細胞膜などの成分として使われているものです。そのため、脂質が不足すると細胞膜や血管壁が弱まるおそれがあります。

3.脂質は一日にどれくらい摂取するのが理想か

脂質は細かく分けると、飽和脂肪酸やn-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸などの種類があります。一日に摂取する目標量や目安量は次のとおりです。

性別 年齢等 脂質の目標量
(エネルギーの総摂取量に占める割合)
飽和脂肪酸の目標量
(エネルギーの総摂取量に占める割合)
n-6系脂肪酸の目安量
(g/日)
n-3系脂肪酸の目安量
(g/日)
男性 18~29歳 20~30% 7%以下 11g 2.0g
30~49歳 10g 2.0g
50~64歳 10g 2.2g
65~74歳 9g 2.2g
75歳以上 8g 2.1g
女性 18~29歳 20~30% 7%以下 8g 1.6g
30~49歳 8g 1.6g
50~64歳 8g 1.9g
65~74歳 8g 2.0g
75歳以上 7g 1.8g


飽和脂肪酸の摂りすぎは、コレステロールの増加や循環器系の罹患リスクを高めることがあるため、注意しましょう。

一方、n-6系脂肪酸やn-3系脂肪酸は血管の弾力性を保つほか、血圧の低下やLDLコレステロールの減少が期待できる成分です。健康を維持するためにも、上記の目安量を毎日摂れるように意識しましょう。

脂質の摂りすぎに注意し、適度な摂取量を心がけましょう

脂質の摂りすぎは脂質異常症や肥満、血管の弾力性低下などを引き起こす原因です。一方で摂取量が不足すると、免疫機能の低下やエネルギー不足などを引き起こすことがあります。

摂りすぎも不足しすぎも体には良くないため、適度な摂取量を心がけることが大切です。脂質の摂取量に気を配る生活を送れば、生活習慣病の予防にもつながるでしょう。

健やかな毎日を過ごすためにも、脂質の摂取量についてあらためて意識してはいかがでしょうか。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医