1.収縮期血圧と拡張期血圧の違い
血圧とは、心臓からの血液が血管に流れる際に血管壁へかかるの圧力のことで、血圧計での測定では必ず2つの数字が表示されます。
2つの数字のうち、大きいほうが最大血圧を示す「収縮期血圧」です。心臓が収縮して血液を全身に送り出した際に血管壁にかかる圧力のことで、一般的には「最高血圧」とも呼ばれています。
一方、数字の小さいほうが最小血圧を示す「拡張期血圧」です。心臓が収縮して血液を送り出したあと、血液を再び送ろうとして心臓が拡張した際に血管壁にかかる圧力を指します。圧力が最も低下している状態であり、「最低血圧」や「下の血圧」とも呼ばれます。
2.収縮期血圧と拡張期血圧はどちらが重要か
先述のとおり、収縮期血圧と拡張期血圧は血圧計で測定すると必ず表示されますが、一体どちらの値をより気にしたほうが良いのでしょうか。
結論から述べると、どちらか一方が重要ということはなく、収縮期血圧と拡張期血圧は両方とも重要です。日本高血圧学会では、高血圧の診断基準を「医療機関で計測した際の収縮期血圧が140mmHg以上、もしくは拡張期血圧が90mmHg以上」と定めています。
血圧の数値を見る際には、収縮期血圧の高さが気になる人が多いようですが、拡張期血圧の数値にも気を付けなければなりません。
血管系疾患のリスクを測定する際にも、収縮期血圧と拡張期血圧の一方ではなく、両方の数値を用いることが望ましいとされています。
なお、私たちの心臓は1分間で平均およそ70回、一日ではおよそ10万回も収縮しますが、血圧の数値は心臓の収縮状態や季節・環境の変化などによって変動します。そのため、血圧の測定はできるだけ同じ条件で継続的に行なうことが大切です。
3.収縮期血圧と拡張期血圧の差はどれくらいが良いのか
収縮期血圧の数値から、拡張期血圧の数値を引いて求められる差を「脈圧」といいます。例えば、収縮期血圧が125mmHg、拡張期血圧が80mmHgであれば脈圧は「45」です。
脈圧は40~60が正常値とされ、この差が大きくなるほど、血管の弾力性が失われる可能性が高いといえます。
血管は、年齢を重ねるとともにしなやかさが低下して硬くなる傾向にあるため、収縮期血圧は年々上昇しやすいといわれています。
一方で拡張期血圧は、大動脈が年齢を重ねるとともに硬くなって進展性が低下することで末梢血管抵抗が下がり、年々低くなるケースもあります。
そのため、定期的に血圧を測定し、脈圧が正常値よりも大きくなっていたら注意しましょう。
血圧の改善において、肥満である人はまず減量が有効といわれています。また、減塩・適度な運動・質の良い睡眠・ストレス解消などを行ない、生活習慣を整えることも大切です。
生活習慣を整えても血圧の改善が見られない場合には、医師に相談しましょう。
収縮期血圧と拡張期血圧の数値には日頃から注意しましょう
収縮期血圧と拡張期血圧の値は、どちらが高すぎても高血圧と診断されます。そのため、収縮期血圧だけでなく、拡張期血圧の値にも気を付けましょう。
また、収縮期血圧と拡張期血圧の差から算出できる脈圧は、40~60の間で収まっていれば正常値です。もしこれよりも大きな値であれば、血管の弾力性が失われている可能性が高い状態といえます。
血圧を改善するためには、生活習慣を整えるのが効果的です。できるだけ同じ環境で血圧を定期的に測定し、高血圧を予防しましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。