1.深呼吸で心臓(胸部)が痛む原因
胸の周辺や心臓に出る痛みのことを、胸痛(胸部不快感)といいます。胸のあたりが痛むため「心臓に問題があるのでは」と、不安に思う方が多いかもしれません。
しかし、胸が痛む原因は多岐にわたります。
1-1.胸痛はさまざまな疾患の症状が考えられる
胸痛が起こる原因としては、次の疾患が代表的です。
血管系疾患 |
・大動脈解離
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消化器疾患 |
・逆流性食道炎 ・胃・十二指腸潰瘍 ・胆石症 ・急性膵炎
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呼吸器疾患 |
・胸膜炎 ・自然気胸
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皮膚疾患 |
・帯状疱疹
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その他 |
・肋骨の骨折
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深呼吸をしたときに痛みが特に強くなる場合は、自然気胸の疑いがあります。自然気胸とは、肺に小さな穴が開いて空気が漏れてしまう疾患のことです。
また、食事のあとに胸痛が生じる場合は、胃・十二指腸潰瘍や胆石症やなど消化器系の疾患が考えられます。
1-2.痛みの原因が見つからない「胸痛症候群」
胸痛があっても、心臓や呼吸器の異常が見つからないケースもあります。このように原因がわからず発生する胸痛は、胸痛症候群と診断される場合があります。
胸痛症候群は、刺すようなピリピリ、チクチクとした痛みが出やすいことが特徴です。10代や20代の若い女性に見られやすく、時間の経過とともに落ち着くことが多いといわれています。
まれに、胸痛のあとにしばらくして発疹ができ、原因が明らかになることもあるため、本当に原因がないのか診察してもらうことが大切です。
2.深呼吸で心臓(胸部)が痛む場合は医師に相談を
深呼吸をしたときに胸が痛む場合、自然気胸など緊急性の高い疾患が隠れていることがあります。そのため、胸痛が気になるときは、早めに医療機関を受診することが大切です。
2-1.早期に医療機関を受診する
胸痛とともに、呼吸困難や冷や汗、吐き気やめまいなどの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
自分で病院に向かうのが難しかったり、明らかにいつもと違う様子が見られたりする場合は、救急車を呼びましょう。強い圧迫感や裂けるような痛みがある場合も、早急な受診が必要です。
緊急性がないと思われる場合でも、症状が長時間継続するなどいつもと何か違うと感じたら、早めに受診をするようにしてください。受診して異常がないと言われたにもかかわらず、胸の痛みが続くときは、心療内科や整形外科の受診も検討してみましょう。
2-2.医療機関を受診する前にまとめておくこと
いつ・どのように・どういった状況で胸の痛みが出やすいのかが、診断の鍵となることがあります。医療機関を受診するときは、簡単で構わないので次の項目についてメモをしておくと便利です。
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・いつから痛み始めたか
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・どのような痛みがあるか
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・どれくらい痛みが続いているか
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・呼吸の仕方や姿勢で痛みに変化があるか
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・痛み以外に気になる症状があるか
深呼吸をすると心臓が痛い場合は早めに医療機関を受診しましょう
深呼吸をしたときに胸が痛いと感じる場合は、肺に小さな穴が開く自然気胸が原因であることが考えられるでしょう。
しかし、自然気胸以外にも症状として胸の痛みが生じる疾患は、数多くあります。血管系の疾患が原因であったり、消化器や呼吸器、皮膚疾患が原因であったりとさまざまなため、まずは痛みの原因を明らかにすることが大切です。
胸の痛みには、まれに重大な疾患が隠れていることもあります。痛みが気になる場合は、なるべく早めに医療機関を受診するようにしましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。