「銅」の働きとは?役割や含まれる食べ物、一日の摂取量について解説

身の回りのさまざまな製品に含まれている銅は、私たちの身体機能の維持に不可欠な要素でもあることはご存知でしょうか。銅は人間の体内に約80~100mg存在する、微量必須ミネラルの一つとされています。

今回は、人体の生命維持に必要なミネラルの銅について、その役割、摂取すべき目安量、含有する食品などを解説していきますのでぜひ参考にしてください。

1.銅とは

銅の概要についてここでは紹介します。

1-1.銅は微量必須ミネラルの一種

銅は、古来よりさまざまな武具や生活用品に用いられてきた金属として知られていますが、同時に人体の血液、骨格筋、骨などに存在する微量必須ミネラルでもあります。銅は人体に約80~100mgが含まれており、非常に微量ではあるものの私たちの生命維持に重要な役割を担っています。

1-2.銅には広範な生体内反応を触媒する働きがある

生体内で起こるさまざまな化学反応は、酵素と呼ばれるたんぱく質の働きにより促進されますが、銅は体内でたんぱく質と結合し銅酵素として作用し、酸素の運搬など諸反応の触媒として機能します。具体的には、鉄代謝、エネルギー生成、細胞外マトリクスの成熟、活性酸素除去、神経伝達物質の産生などを助けています。

1-3.銅不足の影響について

銅が不足すると、体にさまざまな不調が現れることがあります。

ただし、日本人の銅の摂取状況は良好であり、よほど偏った食事をしていない限りは十分な量の銅が摂取されているため、銅不足に対してあまり心配する必要はありません。

2.体内における銅のおもな働き

体内における銅のおもな働きには、以下のようなものがあります。

2-1.貧血の予防

貧血に効果のある成分といえば鉄が有名ですが、銅はヘモグロビンの合成を高めて貧血を予防する効果があります。鉄を十分に摂取しているのに貧血症状が改善されないという方は、銅が不足している可能性も考えられます。

2-2.骨や血管壁の強化

血管壁や骨の強化に関わる重要な物質にエラスチンがありますが、銅にはこのエラスチンの生成を促進する作用があります。

2-3.酵素の働きの補助

銅には、酵素の補因子または賦活剤として作用することで、酵素の働きを補助する働きがあります。それにより、酸素の運搬、神経伝達物質の代謝、活性酸素の除去などの反応がスムーズに起こるようになります。

2-4.皮膚や髪の毛の健康維持

銅には、老化を引き起こす活性酸素を分解する作用があります。過剰な活性酸素の産生を防ぐことで、酸化ストレスによる人体への悪影響を抑えられるでしょう。

また、銅にはメラニン色素の生成を助ける働きもあるため、黒く健康的な毛髪の維持も期待できます。

3.銅の1日摂取目安量

銅は微量必須ミネラルであるため、銅の1日推奨摂取量が成人男性で0.8mg、成人女性で0.7mgと、必要摂取量が少ないことが特徴です。また、銅の1日摂取量の上限は成人で7mgとされており、これを超える量を摂取すると過剰症を発症するおそれがあるので注意しましょう。

3-1.多くの食品に含まれているので、通常の生活ではあまり不足の心配はない

銅はさまざまな種類の食品に含まれており、必要摂取量も微量であるため、通常の食生活であれば銅不足になる心配はないでしょう。ただし、偏食傾向のある方は注意が必要なので、バランスのとれた食生活を心がけることが大切です。

3-2.銅の過剰摂取で生じうる症状

銅の過剰摂取は、通常の食事で起こることはほとんどありませんが、遺伝的疾患がある方には生じることがあります。また、酸性の食品を盛り付けた銅製品の食器から溶け出した銅を摂取した場合などでも、生じることがあるので気を付けましょう。

なお、過剰摂取で見られる症状としては、下痢、嘔吐、貧血、肝障害などがあります。

4.銅を含む食べ物

日本人の標準的な食生活であれば、十分な量の銅を摂取することができるため、それほど心配する必要はありません。ただし、これまで偏った食生活をしてきたなどの理由で銅不足が気になる方は、以下の食品を意識的に摂取することをおすすめします。

4-1.銅が多く含まれる食品

・ほたるいかのくん製:100g中12.00mgの銅を含有
・干しエビ:100g中5.17mgの銅を含有
・ココア:100g中3.80mgの銅を含有
・湯葉:100g中3.27mgの銅を含有

4-2.主要栄養素のバランスのとれた献立が大切

ここまで何度か説明してきたように、バランスのとれた食生活を心がければ銅不足になることはありません。日頃から食生活が偏りすぎないよう、バランスよくさまざまな食品を献立に取り入れるように意識することが大切です。

健康の維持に欠かせない銅

普段はあまり意識することのない銅ですが、私たちの健康を維持するうえで重要な役割を持っているミネラルです。バランスのとれた食生活を心がければ、適切な量の銅を維持することができるため、偏食生活が偏りすぎないように注意してください。

また、銅不足が疑われる方は、この記事で紹介した食品を意識して取り入れてみましょう。

監修者情報

氏名:豊田早苗(とよだ・さなえ)
とよだクリニック院長。鳥取大学医学部卒。精神科・心療内科・内科・神経内科(認知症、物忘れ)の診療を担当している。総合診療医学会、認知症予防学会、精神医学会などに所属。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。