起立性低血圧のおもな症状|原因や予防方法を解説

ソファからパッと立ち上がったときに、立ちくらみを経験された方もいるのではないでしょうか。または、食後に座ってゆっくりしているときに、意識が飛びそうになる感じがするケースもあるかもしれません。

このような症状は、起立性低血圧を起こしている可能性があります。

この記事では、起立性低血圧の概要や症状について解説し、生活のなかで起きやすいタイミングや予防法などを紹介します。

1.起立性低血圧とは?

はじめに、起立性低血圧がどのようなものかを解説します。

1-1.起立性低血圧の概要

起立性低血圧とは、立ち上がったり体を起こしたりした際に立ちくらみ・めまいを起こすなど、急激に血圧が下がる状態のことです。普段の血圧が正常な方でも、生じる場合があります。

具体的には、いきなり起立して、最高血圧(収縮期血圧)が「20mmHg以上」もしくは最低血圧(拡張期血圧)が「10mmHg以上」低下する場合、起立性低血圧と定義されます。

1-2.起立性低血圧が起こりやすいタイミング

起立性低血圧が起こりやすいタイミングを知っておくと、思わぬ事故を防止できます。次のような場面では、起立性低血圧に注意しましょう。

  • 入浴後

    浴槽に浸かると体に水圧がかかり、手足の末端から血液が押し戻されるので、血圧が高くなりますが、浴槽から出ると水圧がかからなくなり、再び血液が手足に流れます。

    その際、体が温まって末梢血管が開いていると、急激に手足に血液が移動して全体の血圧が低下してしまうのです。

  • 食後

    食後は、食べ物の消化のために胃腸などの消化管に血流が集中するので、血圧が下がりやすくなります。血糖値の上昇で血圧が下がるという研究もあるため、食後1~2時間は低血圧に注意しましょう。

  • 就寝後

    就寝時は副交感神経が優位になっているほか、長時間横になっていることで、血管の調整能力が低下しています。夜間にトイレに行こうと起き上がる際などに、起立性低血圧の危険性が高まります。

  • 排便後

    排便のために力を入れると副交感神経が興奮状態になり、血管が拡張しやすいことが、起立性低血圧の原因です。座っている時間が長くなることも原因の一つです。

2.起立性低血圧のおもな症状

起立性低血圧では、起立時や長時間立っているときにめまいや立ちくらみを感じ、重症の場合は、立ち上がった瞬間に失神することもあります。長く椅子に座っているだけで血圧が下がるケースもあるので、注意が必要です。

その他、起立性低血圧の症状として、頭痛や腹痛、動悸、食欲不振などが見られることもあります。

3.起立性低血圧が起こる原因とは

起立性低血圧は、自律神経の調節機能がうまく働かないことが原因です。自律神経に影響を与えるものとしては、運動障害や加齢、遺伝的な体質、ストレスなどが挙げられます。

自律神経には交感神経・副交感神経の2種類があり、それぞれがバランスを取りながら体内の調整をしています。血管の調節も、自律神経が担っている働きの一部です。起立時には重力に従って血液が下肢に集中しますが、通常は足に血液が溜まらないよう、立ち上がったときに血管を収縮させて調整しています。

しかし、自律神経の調節機能がうまくいかず血管の調節に影響が出ると、上半身への血流を保つのが難しくなり、立ちくらみやめまい、失神が生じてしまうのです。

4.起立性低血圧を予防する方法

起立性低血圧がまったく起こらないようにするのは難しいといわれていますが、起こりやすいタイミングでの対処法を知っておくと、予防につながるかもしれません。ぜひ、自分に合った予防法を探してみてください。

4-1.足を動かしてうっ血を予防する

歩行時は下肢の筋肉が動いてポンプの働きをし、血液を循環させているため、起立性低血圧は起こりにくくなっています。注意したいのは、ただ立っていたり座っていたりするときです。

座っている時間が長くなる場合は、うっ血しないようにときどき動かしましょう。

4-2.姿勢を変えるときはゆっくり行なう

起立性低血圧を起こしやすい方は、血管調節能力が低下しています。そのため、いきなり姿勢を変えると血圧の調整が間に合いません。特に、寝ている状態から座ったり立ったりする場合、座った状態から立つ場合など高い姿勢に移行する際は、ゆっくりと動くようにしましょう。

また、同じ姿勢のままで長くいた場合も血圧が下がりやすくなっているため、注意してください。

起立性低血圧の症状や起きやすいタイミングを理解し予防に役立てましょう

起立性低血圧は、立ちくらみや失神から転倒などの事故につながりやすいため、できるなら発生しないようにしたいものです。

今回紹介したように、生活のなかで起立性低血圧が起きやすいタイミングはいくつかあります。そのタイミングを押さえておけば、事故の防止や自分に合った予防策の工夫に役立つでしょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。