1.腸が不調になると現れる症状
腸が不調になると、便秘や下痢などの症状が現れる場合があります。生活習慣の見直しでは改善せず、医師に診てもらったほうが良い場合もあるため、症状ごとの特徴を理解しておきましょう。
1-1.便秘
便秘とは、大便が腸内で停滞し排便回数が少なくなることです。
便秘のおもな原因には、腸が不活発になること・運動不足・水分不足・排便の我慢などが挙げられます。その他、精神的なストレスが影響することもあります。
便秘が続くと、腹痛・吐き気・食欲不振・肌あれなどを引き起こすため、普段から食事や運動、ストレスに注意が必要です。
便秘は、大きく機能性・器質性・薬剤性・症候性の4種類に分かれ、一般的に多いのは機能性便秘といわれています。
機能性便秘はさらに、運動不足などで大腸の機能が低下して起こる弛緩性便秘、便を我慢し排便リズムが崩れて起こる直腸性便秘、ストレスで起こるけいれん性便秘の3種類があります。
器質性便秘は主に腹部の手術後や胃・腸の疾患による癒着や狭窄により発生するものであり、自然軽快する可能性が低いため医療機関の受診が必要です。
薬剤性便秘は、抗コリン薬や抗うつ薬などの薬の作用で、腸管の動きが抑えられることによって引き起こされる便秘のことを指します。
そして症候性便秘は、糖尿病や精神病などの全身性疾患が原因となって生じる便秘です。
1-2.下痢
下痢は、腸内の有害物質を出すために腸が過度に活発になることなどが一因となり、便が水っぽくなる症状です。急性・慢性の2種類があり、症状が1カ月以上続くと慢性下痢と呼ばれます。
急性下痢のおもな原因は暴飲暴食や刺激物の摂りすぎです。他には、細菌感染や心理的要因で発生することも多いです。
一方、慢性下痢の原因は炎症性腸疾患や乳糖不耐症などであり、腸に異常があると体重減少や発熱をともないます。
2.ストレスが腸の不調を招く、過敏性腸症候群とは?
過敏性腸症候群とは、ストレスや自律神経の乱れで腸が過敏になり、便通の異常を引き起こす病気です。胃腸自体には異常がなく、症状の現れ方により慢性下痢型・分泌型・不安定型の3タイプに分けられます。
慢性下痢型は、少しの緊張や不安により便意を感じ、激しい下痢を起こすものです。
分泌型では、強い腹痛が続き、大量の粘液が排出されます。
不安定型は、腹部の不快感と、下痢・便秘を交互に繰り返すものです。
3.腸の不調を改善する4つの方法
腸の不調を改善するために有効な方法を、4つに分けて解説します。今すぐできる具体的な方法も紹介するので、気になるものは取り組んでみてください。
3-1.ストレスを溜めず解消する
ストレスや自律神経の乱れは、腸の不調を引き起こす一因です。そのため、ストレスを溜めないようにすることが大切です。
3-2.症状に合わせて食生活を改善する
便秘の場合は、食物繊維が豊富な果物や野菜、麦飯などを摂取するほか、コップ2杯分いつもより多く水を飲むことを心がけましょう。
下痢の場合は、揚げ物などの消化の悪いものや香辛料などの刺激物は避け、煮物やスープといった温かく消化の良いものをしっかり噛んで食べるのがおすすめです。
3-3.生活習慣の見直し
腸の不調は、生活習慣と深く関係しています。一日3食を規則正しくとり、ウォーキングなどの運動や適度な睡眠により腸の調子を整えましょう。
3-4.腸内環境を整える
腸内には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3つが存在し、善玉菌が多いと免疫機能や腸機能が向上し、悪玉菌が多いと便秘や下痢になりやすくなります。
善玉菌は、ビフィズス菌・乳酸菌を含む、ヨーグルトや乳酸菌飲料などで摂取することが可能です。その他、野菜・果物・豆などの食物繊維やオリゴ糖を多く含む食品の摂取も、腸内の善玉菌の増加につながります。
悪玉菌は、タンパク質や脂質中心の食事・不規則な生活・ストレスなどで増加してしまうため注意が必要です。健康のためには、悪玉菌を減らし善玉菌を増やす生活を送りましょう。
腸の不調は規則正しい生活で腸内環境を整えることが大事
腸が不調になることにより起こる症状や、ストレスによって腸の不調を引き起こす過敏性腸症候群、これらの改善方法について説明しました。
腸の不調は、便秘や下痢などの症状を引き起こし、日常生活へ悪影響をおよぼします。過敏性腸症候群が原因で便秘や下痢が起こっている場合もあるため、ストレス管理にも注意が必要です。
生活習慣を見直すことにより改善が可能なこともあります。食生活や生活習慣、腸内環境の改善を心がけましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。