「ビタミンB1」(チアミン)の働きとは?
役割や含まれる食べ物、一日の摂取量について解説

ビタミンは、体の健康や生理機能を保つために必要な栄養素です。体内で十分に合成できないため、食物などからの摂取が必要になります。ビタミンにはさまざま種類がありますが、ビタミンB群には8種類のビタミンがあり、それぞれが栄養素の代謝など重要な役割を担っています。

今回はビタミンB群のなかの一つ、ビタミンB1の働きや欠乏のリスク、摂取に必要な食べ物などを解説します。

1.ビタミンB1とは

ビタミンB1は水溶性のビタミンの一種となり、チアミンとも呼ばれている栄養素です。食品に含まれているものの多くは、チアミンモノリン酸(ThMP)という、リン酸が1つ結合した状態で存在しています。

ビタミンB1は、1910年に農学者・鈴木梅太郎氏によって米ぬかから発見されました。ビタミンは現在までに13種類が発見されていますが、ビタミンB1は最初に発見されたビタミンとして知られています。

2.ビタミンB1のおもな働き

ビタミンB1は炭水化物からエネルギーを産生するうえで、重要な役割を担っている栄養素です。ビタミンB1は体内に吸収されるとリン酸化され、おもにチアミン二リン酸(ThPPまたはThDP)の形で存在します。

これらは酵素の働きを助ける補酵素として、分枝アミノ酸や糖質の代謝などに関わっています。

3.ビタミンB1の一日の摂取量

ビタミンB1は、エネルギー産生において重要な栄養素です。不足しないよう、摂取基準を目安に適切な量を摂取する必要があります。

ビタミンB1の摂取量は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」で、年齢や性別ごとに一日の摂取基準が定められています。

ビタミン B1 の食事摂取基準(mg/日)※1,2

性別 男性 女性
年齢 推定平均
必要量
推奨量 目安量 推定平均
必要量
推奨量 目安量
0~5 (月) 0.1 0.1
6~11 (月) 0.2 0.2
1~2 (歳) 0.4 0.5 0.4 0.5
3~5 (歳) 0.6 0.7 0.6 0.7
6~7 (歳) 0.7 0.8 0.7 0.8
8~9 (歳) 0.8 1.0 0.8 0.9
10~11 (歳) 1.0 1.2 0.9 1.1
12~14 (歳) 1.2 1.4 1.1 1.3
15~17 (歳) 1.3 1.5 1.0 1.2
18~29 (歳) 1.2 1.4 0.9 1.1
30~49 (歳) 1.2 1.4 0.9 1.1
50~64 (歳) 1.1 1.3 0.9 1.1
65~74 (歳) 1.1 1.3 0.9 1.1
75以上 (歳) 1.0 1.2 0.8 0.9
妊婦 (付加量) +0.2 +0.2
授乳婦 (付加量) +0.2 +0.2

(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」より引用)
※1:チアミン塩化物塩酸塩 (分子量=337.3) の重量として示した。
※2:身体活動レベルⅡの推定エネルギー必要量を用いて算定した。
※特記事項:推定平均必要量は、ビタミン B1 の欠乏症である脚気を予防するに足る最小必要量からではなく、尿中にビタミン B1 の排泄量が増大し始める摂取量(体内飽和量)から算定。

なお、2019年の国民健康・栄養調査によると、ビタミンB1の平均摂取量は男性で1.03㎎/日、女性で0.87㎎/日となっています。

4.ビタミンB1を含む食べ物

ビタミンB1の摂取基準を満たすためには、何を食べればよいのでしょうか。
以下、ビタミンB1を多く含む食べ物を紹介するので、ぜひ日々の食事の参考にしてみてください。

4-1.肉類

食品名 ビタミンB1含有量
(100gあたりmg)
豚ヒレ(焼き) 2.09
豚ひき肉(焼き) 0.94
豚ロース脂身付き(焼き) 0.90
豚ボンレスハム 0.90

4-2.魚類

食品名 ビタミンB1含有量
 (100gあたりmg)
たらこ(焼き) 0.77
うなぎ(かば焼き) 0.75
むろあじ(焼き) 0.28
あゆ(焼き) 0.28

4-3.イモ、大豆類

食品名 ビタミンB1含有量
(100gあたりmg)
いんげんまめ(ゆで) 0.22
絹ごし豆腐 0.11
さつまいも(天ぷら) 0.11
さつまいも(蒸し) 0.11

4-4.野菜、果物類

食品名 ビタミンB1含有量
(100gあたりmg)
切り干し大根 0.35
枝豆(ゆで) 0.24
スイートコーン(電子レンジ) 0.16
温州みかん(生) 0.10

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

上表のとおり、ビタミンB1は豚肉、たらこ、うなぎなどに多く含まれています。偏食傾向がある人は不足してしまう可能性があるので、バランスの良い食生活を目指しましょう。

適切な量のビタミンB1は食事から摂取しましょう

ビタミンB1の欠乏を避けるためには、適切な量を食事から摂取することが大事です。今回の記事を参考に、一度ご自身の食生活を見直してみてはいかがでしょうか。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医