1.老化とは
生まれてから成長を続けてきた体は、あるときに成熟期を迎えます。この時期から生じる生理機能の衰えが、一般的に「老化(生理的老化)」と呼ばれるものです。
本来、働きが低下した細胞は排除されて新しい細胞が補充されますが、年齢を重ねると細胞が入れ替わりにくくなったり、細胞の数が減ったりして、生理的老化が進行します。
1秒、1分、1時間……と、時間の流れは誰にとっても同じです。しかし、体が変化するスピードは同じではありません。同じ日に生まれた人同士でも、体の成長速度に個人差があるように、老化の進行速度も人それぞれ異なります。
さらに、成長や老化が進む速度は、体内でも組織・細胞ごとに差があります。そのため、「体内の細胞を比較すると、Aの部位とBの部位では老化の進行具合がまったく違う」というケースも起こりうるでしょう。
なお、自然現象である生理的老化に対し、ケガや病気などがきっかけで進行する老化を「病的老化」といいます。
2.生理的老化にともなう体の変化
生理的老化は、さまざまな要因が影響し合って起こります。
要因の一つに挙げられるのが、「活性酸素の蓄積による体のさび」です。一般的に、活性酸素を取り除く抗酸化酵素の働きは40歳代から衰える傾向にあるため、生理的老化のスピードは40歳代以降に増すと考えられています。
生理的老化の進行によって生じるのが、外観上の変化・臓器の機能の衰退・感染防御機能の低下です。外観上の変化では、皮膚のしわ・シミ・たるみ、白髪などの発生が見られます。
臓器の機能の衰退では、次のような症状を自覚するようになるでしょう。
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・もの忘れをする
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・就寝時にトイレの回数が増える
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・耳が聞こえづらくなる
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・夕方に目が見えにくくなる
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・坂道や階段をのぼると息切れする
これらの変化は、年齢を重ねていけば誰にでも起こるものです。
3.生理的老化の4つの特徴とは
生理的老化の特徴を端的に表すものとして、「シュトレーラーの4原則」が知られています。
その内容は、次のとおりです。
1 |
普遍性 |
生理的老化は、誰にでも普遍的に起こるもの。自分だけ不老不死を願っても、生理的老化を避けることはできない。 |
2 |
内在性 |
生理的老化は、遺伝的にプログラムされているもの。生理的老化が進行しないよう環境を改善しても、限界がある。 |
3 |
進行性 |
生理的老化が進んだら、もとに戻ることはない。 |
4 |
有害性 |
ヒトにとって、生理的老化は有害であり、一般的に有益とは考えられない。 |
生理的老化における4つの特徴を把握し健やかな日々を過ごしましょう
生理的老化のスピードは、個々人で異なり、さらには体内の組織・細胞にも差があります。しかし、白髪が増える、小さなもの忘れをする、耳が聞こえづらくなるなどの体の変化は、生理的老化により誰にでも起こるものです。
また、生活環境の見直しなどにより老化の進行速度を遅らせられたとしても、限界があります。
したがって、生理的老化を拒まずにその特徴を理解して、健やかな日々を過ごせるように工夫することが大切といえるでしょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。