1.日本人は毎日どれくらい歩いているのか?
適切な歩数を見る前に、まずは現在の日本人が一日にどれほど歩いているのか解説します。
厚生労働省が発行している令和元年の「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、一日の平均的な歩数は男性6,793歩、女性5,832歩です。
さらに年代別に歩数の平均値を見ると、20~64 歳の場合は男性7,864歩、女性6,685歩。65歳以上になると男性5,396歩、女性4,656歩です。
平成21年から令和元年までの 10 年間では、男性の歩数はほぼ横ばいとなっています。しかし、女性の歩数は減少傾向にあるのが特徴です。
女性の歩数が男性より少ない原因としては、妊娠・出産・育児といった変化が起こりやすい点が挙げられるでしょう。
2.適切な歩数は一日8,000歩
一日あたりの理想的な歩数は約8,000歩であり、平均でおよそ20分の速歩きが推奨されています。
この結果は、群馬県中之条町で行なわれた65歳以上の全住民のうち寝たきりではない約5,000人を対象とした研究によるものです。
研究に参加したおよそ1割の住民には、歩数や活動の強度を24時間正確に記録できる身体活動計を使い、10年以上記録をつけました。
活動強度には、低・中・高のレベルがあり、活動の内容によって強度が異なります。
例えば、日常的な家事は低になり、買い物は中、速歩き散歩は高に該当することが多いでしょう。
活動強度が高くなると、活性酸素が細胞内で発生し、遺伝子にダメージを与えます。傷ついた遺伝子の修復に時間がかかると、糖尿病などの病気の原因になる可能性が指摘されています。
そのため、激しい運動をすれば健康に良いというわけではなく、中強度の適度な運動が推奨されています。
しかし、平均的な一日の歩数は男性で6,793歩、女性5,832歩であるため、現代人は男女ともに理想的な歩数を下回っているのが現状です。また、20~50代の80%は、運動不足を自覚しているという統計調査の結果もあります。
適切な歩数や活動強度は、健康的な体を維持するために、有効であることが群馬県中之条町の研究で明らかになりました。歩数と活動強度による健康状態の改善は、高齢者だけではなく、成人すべてに当てはまります。
そこで次の段落では、歩くことで期待できる効果について解説していきましょう。
3.【歩数別】歩くことで期待できる効果
一日の平均歩数と中強度の活動時間によって、さまざまな効果が期待できます。
ここでは、一日平均の歩数と活動強度ごとにどのような健康への効能があるのかを報告した文献の内容を紹介します。
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2,000歩
寝たきりの予防が期待できます。
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5,000歩
速歩き7.5分の場合、要支援や要介護状態の予防が可能です。入浴や食事など、他の人の介助を受けずに生活できる状態の維持が期待できます。
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7,000歩
速歩き15分では、血管が硬くなることや骨が脆くなることを防げるでしょう。
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7,500歩
速歩き17.5分の場合は、筋肉量の減少や体力低下を抑える効果が期待できます。
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8,000歩
速歩き20分では、生活習慣病の予防や75歳以上の場合はメタボリックシンドロームの予防が可能でしょう。
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9,000歩
速歩き25分は、血圧や血糖値が高くなるのを防ぐ効果が期待できます。
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1万歩
速歩き30分では、75歳未満の場合メタボリックシンドロームの予防に役立つでしょう。
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1万2,000歩
速歩き40分の場合は、肥満予防の効果が期待できます。ただし、1万2,000歩以上を40分以上速歩きすると、健康を害する可能性もあるため注意が必要です。
1,000歩でおよそ10分かかるとされているので、普段歩いている時間を10分伸ばすだけで、より健康的な毎日を過ごせるでしょう。
一日の適切な歩数が何歩なのかを把握し歩くことで健康的な毎日を過ごしましょう
健康的な体を維持するためには、一日あたり平均8,000歩、そのうち20分程度の速歩きが効果的です。激しい運動をすれば健康を維持できるわけではないため、適切な運動量を知ることが大切でしょう。
また、歩数と活動強度によって、さまざまな効果があります。日本人の一日の平均的な歩数は男性で6,793歩、女性5,832歩のため、理想的な歩数である8,000歩には足りていません。運動不足を感じている方は、一日10分歩く時間を増やすだけでも、より健康に近づけるでしょう。
今回紹介した歩数や活動強度を参考に、ぜひ健康的な運動習慣を手に入れてください。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医