1.カロリーが不足すると「低栄養」の危険性あり
カロリーは、言い換えれば私たちの体に必要不可欠なエネルギーであり、炭水化物・タンパク質・脂質がその材料です。
カロリーが不足する原因には、食事量の不足や偏りが挙げられます。食事量の不足によって、エネルギー源が不足し、低栄養になるリスクが高まります。
低栄養とは、私たちが健康的に生きるうえで必要な栄養素が十分に摂れていない状態のことです。高齢者の場合、一般的には加齢にともなって食事量が少なくなり、偏りが起きやすいため低栄養になりやすい傾向にあります。
また、若い世代であっても、特にダイエット指向の強い女性は低栄養を招きやすいため、注意しなければなりません。
とはいえ、エネルギーを必要以上に摂りすぎると、肥満や生活習慣病につながります。そのため、バランスが整った食事を適切なカロリーでとることが大切です。
2.カロリー不足が引き起こすおもな症状
ここからは、カロリー不足によって、どのような健康リスクがあるのかを解説します。
2-1.体重減少
消費されるエネルギー量に対して摂取カロリーが不足していると、体重減少を招きます。痩せすぎや無理なダイエットは、骨をもろくするなど、さまざまな健康問題につながりやすく危険です。
特に、若い女性や妊婦が痩せすぎていると、生まれてきた子どもが肥満や糖尿病など将来生活習慣病にかかるリスクが高まると考えられています。
2-2.集中力の低下
脳のおもなエネルギー源となるブドウ糖が不足すると、集中力の低下を招きます。体内にはブドウ糖を大量に貯め込むことができないため、朝食をしっかりとらないと集中力の維持が難しくなります。
2-3.タンパク質不足
タンパク質は、エネルギーを作る栄養素の一つです。タンパク質が不足すると、免疫機能や体力の低下、貧血などさまざまな症状を招きます。
また、見た目が痩せていたとしても、脂肪が筋肉や骨よりも多い「隠れ肥満」の人がいます。これは、体に必要なエネルギーや、筋肉のもとになるタンパク質などの不足が要因の一つと考えられているのです。
2-4.炭水化物不足
炭水化物(おもに糖質)も、エネルギーを作る重要な栄養素の一つです。炭水化物を過剰に摂取すると中性脂肪の増加や肥満を招きますが、不足するとエネルギー源が足りず集中力の低下や疲労感が見られます。
また、ダイエット目的で炭水化物を制限する人もいますが、炭水化物を極端に減らすと低血糖を防ぐために、体タンパク質が分解され減少してしまいます。これは健康的な痩せ方とはいえません。
本来ダイエットとは、余分な体脂肪を減らすことです。体脂肪を燃焼するためには、燃焼のためのエネルギー源として十分な炭水化物が必要になります。
2-5.便秘
食事の量が少なすぎると、便の量や水分が減り、便秘になりやすいことがわかっています。また、野菜が少なく肉が多いなど、バランスの悪い食事も便秘を招く要因です。
食事は腸を刺激して、ぜん動運動を発生させることにつながります。特に、朝食はスムーズな排便を促す働きがあるため重要です。早起きして、時間の余裕を持って朝食をとれると理想的でしょう。
2-6.新型栄養失調
新型栄養失調とは、食事を制限するダイエットや食生活の偏りなどが要因となり、体に必要な栄養素を摂取できない状態です。特に、炭水化物やタンパク質、鉄、カルシウム、亜鉛、ビタミン類が不足しやすい栄養素とされています。
新型栄養失調によって、片頭痛や冷え、気分の落ち込み、便秘などの症状が起きる場合があります。
3.カロリー不足を解消するためにすべきこと
カロリー不足を予防するためには、どのようなことに気を付けたらよいのでしょうか。
3-1.自分のエネルギー必要量を把握する
カロリー不足を防ぐには、まず自分自身の推定エネルギー必要量を把握することが大切です。
一日に必要な推定エネルギー量は、身体活動レベルを年齢に対する基礎代謝量にかけて計算します。計算式は、以下のようになります。
一日に必要な推定エネルギー量=基礎代謝量×身体活動レベル
基礎代謝量や身体活動レベルは、以下の資料で確認ができます。一度、一日あたりのエネルギーはどのくらいが適正であるかを、チェックしてみましょう。
参考:日本医師会「1日に必要なカロリー」
3-2.カロリー&栄養不足を防ぐ食事をする
カロリー不足を防ぐためにも、朝食は必ずとるようにしましょう。一日2回の食事で必要なエネルギー量を摂ることは難しいためです。
また、体を健康に保つには、バランスの取れた食事が基本です。主食、副菜、主菜、乳製品、果物をバランス良く摂取する「日本型食生活」を心がけましょう。
国が提示する食事バランスガイドでは、毎日の食事を「主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物」の5グループに分け、グループごとに「つ(SV)」という単位を使って一日の必要量が示されています。
ただし、人それぞれ一日のエネルギー必要量が異なるため、必要に応じて調整が必要です。
以下は、エネルギーごとの食事量の目安です。
エネルギー |
主食 |
副菜 |
主菜 |
牛乳・乳製品 |
果物 |
1,400~2,000kcal |
4~5つ |
5~6つ |
3~4つ |
2つ (子どもは2~3つ) |
2つ |
2,200 ±200kcal |
5~7つ |
5~6つ |
3~5つ |
2つ (子どもは2~3つ) |
2つ |
2,400~3,000kcal |
6~8つ |
6~7つ |
4~6つ |
2~3つ (子どもは2~4つ) |
2~3つ |
各グループの量など詳細については、以下参考ページよりご確認ください。
参考:農林水産省『「何を」「どれだけ」材料と料理区分』
カロリー不足にならないように食事のバランスを意識しましょう
食事量が少なくカロリーが慢性的に不足していると、集中力の低下や便秘、新型栄養失調によるさまざまな症状などを招き、健康問題のリスクを高めてしまいます。
カロリー不足を回避するためには、自分にとって必要なエネルギーを知り、適正な食事をとることが大切です。
主食、主菜、副菜に乳製品や果物を適度に加えた「日本型食生活」は、自然とバランスの取れた食事になります。健康的な食生活を送れるように、日々の食事を見直してみましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。