サーカディアンリズムとは?
サーカディアンリズムの乱れで起きる症状と整え方

「サーカディアンリズム」とは24時間周期の体内リズムのことです。「夜にしっかりと寝られない」「夕方に眠くなる」など、睡眠でお悩みの方はこの「サーカディアンリズム」の乱れが生じているかもしれません。

ここでは、サーカディアンリズムとはどのようなものか、リズムの乱れによる影響はあるのかを解説します。また、リズムを整える方法も紹介しているので、睡眠に関する悩みがある方は参考にしてください。

1.サーカディアンリズムとは?

サーカディアンリズムとは、生物に存在する約24時間周期のことで、概日リズムとも呼ばれます。これは、睡眠の周期や体温・自律神経・免疫系・ホルモン分泌などの調節を担っているものです。

光や温度の変化がない環境でも機能し、生物それぞれにもとから備わっているものとして知られています。

このサーカディアンリズムは、体内時計が存在する脳内の視交叉上核(しこうさじょうかく)で、約2万個の神経細胞が相互に作用することで生み出されています。

2.サーカディアンリズムの乱れによる影響

サーカディアンリズムの乱れは睡眠障害を発症させ、長引くと体に悪影響を与える場合があります。

ここでは、サーカディアンリズムの乱れがおよぼす影響について解説します。

2-1.概日リズム睡眠障害

概日リズム睡眠障害とは、サーカディアンリズムが24時間周期に同調できず、睡眠障害を引き起こす病気です。

原因として考えられるのは、サーカディアンリズムを司る体内時計が約25時間周期で動いており、地球の周期とおよそ1時間のズレがある点です。

本来なら、このズレは光・食事・運動などの刺激で修正されますが、朝日を浴びず夜に照明のもとで過ごすことなどが多いと修正されません。

ズレが続くと望ましい時間に起床・覚醒できず、無理に覚醒しても頭痛・倦怠感・眠気などの不調をともなうことになります。

2-2.睡眠相後退症候群

睡眠相後退症候群は、入眠と覚醒が困難な状態が慢性的に続く睡眠障害です。

睡眠時間帯の異常が継続し、午前3時から6時の間で一定時刻に入眠することが多くなります。起床については、大事な予定があっても起きられない、または起床できても眠気や頭痛などの不調をともないます。

2-3.睡眠相前進症候群

睡眠相前進症候群は、夕方から眠気に襲われて20時頃に眠り、早朝に目覚めてしまう睡眠障害です。目覚める時間帯は2時から3時頃となり、そのあとは再入眠が難しくなります。

加齢にともなう生体リズムの周期の短縮が原因で、高齢者に多く見られます。

2-4.肥満、生活習慣病のリスク

サーカディアンリズムの乱れは、肥満や生活習慣病につながります。

ヒトは、昼の食事で脂肪を蓄えて、夜に糖や熱を生成し身体機能を維持するのが通常です。しかし、サーカディアンリズムが乱れると代謝のバランスが崩れ、肥満や免疫低下のリスクが高まります。

寝不足によって、食欲を抑制するレプチンというホルモンが減り、食欲を増加させるグレリンというホルモンが増えることもあります。つまり、糖尿病や生活習慣病のリスクが、寝不足により引き起こされていることがあるのです。

3.サーカディアンリズムを正常に整える方法

サーカディアンリズムの乱れは、規則正しい生活習慣や食事で整えられます。今すぐできる対策を紹介するので、無理のない範囲から生活に取り入れてみてください。

3-1.規則正しい生活を心がける

サーカディアンリズムを整えるには、規則正しい生活が基本です。朝起きて日中活動し、夜遅くなる前にしっかり眠ると体調を整えやすくなります。

生活リズムや体内時計の乱れがさまざまな不調の原因になるため、決まった時間に起床・就寝することが大切です。

3-2.規則正しい時間に食事をする

サーカディアンリズムは、食事による影響を大きく受けやすいものです。特に朝食の摂取は、体内時計のリセットと正常なリズムの維持に役立ちます。

朝食は起床後1時間以内に、夕食は朝食から12時間以内にとるのがおすすめです。

また、体内時計のリセットには糖・アミノ酸の両方が影響するため、朝食ではどちらも含むものを食べるとよいでしょう。そして、夜9時以降は脂が少ないものや野菜が多いものなど、軽い食事を選ぶことが大切です。

3-3.朝日を浴び、夜は光を抑える

光もサーカディアンリズムに大きな影響を与えます。

例えば、朝日は体内時計を早める一方、夜に蛍光灯などの光を浴びると体内時計が遅れます。そのため、起床後は朝日を浴び、寝る前の強い照明は控えましょう。

また、デジタル機器に含まれるブルーライトは体内時計を乱すため、寝る1時間前にはスマートフォンやテレビの使用を止めましょう。

3-4.睡眠前の運動と入浴

寝る前の運動・入浴は、快眠につながります。

運動で上昇した脳の温度が就寝時に下がることで睡眠を促すため、ランニングなどの有酸素運動を寝る3時間前に行なうのがおすすめです。

また、寝る2~3時間前に入浴すると、眠気を促す副交感神経が働きます。38~39度のお湯に30分浸かりましょう。

正しい生活習慣でサーカディアンリズムを整えましょう

サーカディアンリズムは、睡眠のリズムや健康を維持するために大切なものです。

不規則な生活でサーカディアンリズムが乱れると、さまざまな睡眠障害をはじめ、体の不調を引き起こす原因になります。そのため、規則正しい生活・食事を心がけ、朝日を浴びる習慣を身に付けることが大切です。

運動・入浴によっても、サーカディアンリズムを整えることができるので、日々の生活に取り入れて健康的な生活を維持しましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。