ストレス発散できる運動とは?
ストレスと運動の関係性とセルフケアのコツ

近年は、老若男女問わずストレスを抱えている人が増えている状況です。それにともない、現代社会は「ストレス社会」と呼ばれることもあります。

ストレス発散にあたって、効果的な方法が「運動」です。適度な運動はストレスを和らげるだけではなく、筋肉や血管にも良い影響をもたらします。

今回の記事では、ストレスの概要を踏まえつつ、ストレスと運動の関係性や運動方法、セルフケアのコツを解説します。

1.ストレスの原因と心身に与える影響

前提知識として、まずはストレスの原因や影響を見ていきましょう。

1-1.そもそもストレスとは何か?

ストレスとは、外部からの圧力や刺激で緊張状態に陥ることです。心身にかかる圧力や刺激を「ストレッサー」、その影響が心理や行動に表れることを「ストレス反応」といいます。

ストレッサーの要因を大きく分けると、以下の3種類です。

  • ・物理的ストレッサー(気温・ニオイ・騒音など)

  • ・科学的ストレッサー(薬・酸素欠乏・公害物質など)

  • ・社会的ストレッサー(人間関係・職場環境・家庭環境など)

人によってストレスに対する強さは異なり、ストレッサーを重く受け止める人がいれば、あまり問題視しない人もいます。このストレッサーを抑制できないと、心身に悪影響が生じてしまいます。

なお、ストレスというものは、すべてが悪いわけではありません。良い出来事でもストレスになります。

1-2.心身に影響をもたらす3つのストレス反応

ストレスを受けると、以下のように心理面・行動面・身体面でさまざまなストレス反応が表れます。

心理面 イライラ、不安、気分の落ち込み、無気力、思考力の低下、集中力の低下、判断力の低下など
行動面 過食、拒食、飲酒量の増加、攻撃的な行動、吃音、引きこもり、仕事でのミス増加など
身体面 頭痛、肩こり、腹痛、腰痛、疲労感、食欲低下、便秘、めまい、睡眠障害など

2.ストレスと運動の関係性

冒頭でも触れたように、ストレス発散には運動が効果的です。

運動には、気分転換やリラックスをもたらす効果、睡眠リズムを整える作用があり、気分の落ち込みや自尊心の低下を良好にする効果も見込めます。実際に、精神疾患の治療においても、運動療法が導入されています。

ただし、過度な運動は逆効果になるため、一日20分程度を目安としましょう。

3.ストレス発散できる簡単な運動方法

ストレスを発散したい場合、以下の運動方法を実践してみましょう。

3-1.体をほぐす

職場でも手軽にできる運動として、体を軽く動かしてほぐす方法があります。いくつか紹介するので、ぜひ参考にしてください。

  • ・肩を上げて少し止めてから、息を吐きつつストンと落とす

  • ・首・肩の力を抜いたまま、首をゆっくり回す

  • ・イスに座って腰を伸ばしたまま、体を左右にひねって背もたれをつかむ

また、深呼吸もストレス解消につながるため、心身の緊張を和らげる方法としておすすめです。

3-2.軽い有酸素運動

ウォーキング・ランニング・サイクリングなど、適度な有酸素運動もストレス解消に効果的です。特にウォーキングは長く継続しやすいうえに、ふくらはぎの筋肉に作用して血流改善や疲労回復といった効果も見込めます。

ストレス解消につながる適切なウォーキングフォームは、以下のとおりです。

  • ・体を横から見て耳・肩・腰・骨盤が一直線になるよう、上半身をまっすぐ維持する

  • ・足を開いたとき、体の中心軸がぶれないようにする

  • ・かかとから着地する

  • ・目線を15mほど先に置く

運動習慣がない人の場合は、近所を散歩する程度から始めてもよいでしょう。

3-3.ストレッチやヨガ

ストレスを受けていると、交感神経が活発になって体は常に緊張状態にあります。

ストレッチやヨガを実践すれば、緊張した筋肉をほぐせるため、結果としてストレス解消につなげることが可能です。ヨガには、ストレスで乱れた自律神経を整える効果もあります。

おすすめの方法として肩・胸・背中をほぐす「呼吸筋ストレッチ」を紹介するので、以下の手順をそれぞれ3回程度実践してみてください。

【肩】

  • 1. 息を吸いながら、肩を上げる

  • 2. 息を吐きながら、肩を後ろに回して戻す

【胸】

  • 1. 手を後ろで組んで、ゆっくりと息を吸う

  • 2. 息を吐きながら、肩甲骨を寄せて胸を開きつつ、手を後ろ斜め下に伸ばす

【背中】

  • 1. 膝を軽く曲げて、手を胸の前で組む

  • 2. 息を吸いながら、腕を前に伸ばす

  • 3. 息を吐きながら、腕を戻す

その他、体の仕組みを使う「漸進性弛緩法(ぜんしんせいしかんほう)」という方法もあります。手・上腕・背中・肩・首・顔にそれぞれ力を入れて筋肉を緊張させ、そこから力を抜くと、全身をリラックスさせられます。

4.ストレスを溜めないセルフケアのコツ

ストレスを溜めないためには、セルフケアを行なうことが大切です。セルフケアのコツをまとめたので、こちらも参考にしてみてください。

4-1.自分のストレスサインを把握する

ストレスを受けると、イライラや不安が生じたり、頭痛や腹痛が起こったりするなど、何らかのサインが表れます。

このストレスサインを見過ごすと、心身の調子がさらに悪化する可能性もあるので、サインに気付いた時点で早めにケアしましょう。

4-2.睡眠をしっかりとる

ストレスで交感神経が活発になると、自律神経のバランスが乱れてしまい、浅い眠りが多くなります。十分な睡眠がとれないことも、ストレスにつながります。

睡眠をしっかりとるためには、運動を行なうとよいでしょう。運動には、睡眠リズムを整える効果があります。

さらに、質の良い睡眠をとるためには、以下のポイントも意識してみてください。

  • ・起床したら太陽の光を浴びる

  • ・休日の睡眠時間は、平日より2時間多い程度に抑える

  • ・朝食にタンパク質を摂る

  • ・睡眠の2時間前にぬるめの入浴を済ませる

  • ・睡眠の1時間前からテレビやスマートフォンは避ける

どれも簡単に取り組めるので、試してみるとよいでしょう。

ストレス発散には適度な運動を心がけましょう

現代社会はストレス社会と呼ばれているように、ストレスが身近に存在します。ストレスを発散させるためには、日頃から適度な運動を実践することが大切です。

ストレッチやウォーキングなど、負荷が軽い簡単な運動でもストレス解消の効果が期待できます。仕事の休憩時間や休日の空き時間に、取り入れてみてはいかがでしょうか。

また、日頃からセルフケアを行なって、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医