1.リン酸塩について
リン酸塩はリンを含む物質で、人体に存在するほか、食品添加物としても利用されています。ここでは、リン酸塩の体内での働きと、食品添加物としてのリン酸塩の作用について解説します。
1-1.リン酸塩とは
リンとは、人体に不可欠なミネラルの一つです。体内ではカルシウムに次いで多く存在し、成人体重のおよそ1%を占めています。
体内にあるリンの85%は、マグネシウムやカルシウムと結び付いたリン酸塩(リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム)として歯や骨に存在しています。
また、カリウムと結合したリン酸塩(リン酸カリウム)は細胞内や血液、リンパ液などに含まれます。このようにリン酸塩は、骨として体を支えたり、細胞の浸透圧を維持したり、エネルギー産生に関わったりするなど、体内でさまざまな働きをします。
1-2.食品添加物としてのリン酸塩について
リン酸塩は、食品添加物としても利用されています。1976年に食品添加物として認可されたリン酸塩は、食品の保水性や結着性を向上させるほか、肉類の発色を安定に保つ効果があります。
2.リン酸塩を多く含む食品
リン酸塩は食品添加物として使用されているため、加工食品に多く含まれています。リン酸塩を多く含む食品は、以下のとおりです。
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・ハム、ソーセージ
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・練り製品
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・清涼飲料水
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・スナック菓子
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・インスタント食品 など
リンを摂り過ぎるとカルシウムの吸収を邪魔し、反対にカルシウムを摂り過ぎるとリンの吸収を低下させます。そのため、カルシウムとリンは、同じくらいの量になるように摂取するとよいでしょう。普段の食生活に加工食品が多い人は、注意が必要です。
3.リン酸塩を過剰摂取するとどうなる?
リンは健康や生命を維持するために必要であり、骨や歯の形成やエネルギー産生に関わるミネラルです。リンが不足すると、脱力感や筋力低下などの症状がみられます。しかし、食品添加物としてリン酸塩が多用されているため、現代ではリンの欠乏よりも過剰摂取が問題となっています。
リン酸塩の過剰摂取は、カルシウムや鉄の吸収を阻害します。カルシウムの吸収量が下がると、骨がもろくなるおそれがあり、鉄の吸収が下がると、貧血を引き起こすこともあり、注意が必要です。また、腎機能や副甲状腺の機能が低下している人は血液中のリン濃度が上昇しやすくなるため、気を付けましょう。
日本人の食事摂取基準では、18歳以上の成人が一日に摂るリンの目安量を男性1,000mg、女性800mgとしています。また、耐容上限量は18歳以上の男女いずれも3,000mgです。
しかし、令和元年国民健康・栄養調査によるとリンの摂取量は1,006.9mgであり、目安量を超えていることがわかります。知らぬ間にリン酸塩を摂り過ぎていないか、食事内容を確認してみましょう。
リン酸塩を避けるためには、加工食品よりも生鮮食品を選んだり、リン酸塩不使用の商品を利用したりするとよいでしょう。また、加工食品を調理する際は下ゆでしたり、麺のゆで汁を捨てたりすると、リン酸塩を減らすことができます。
「リン酸塩を摂り過ぎているかも」と思い当たる方は、ぜひ食材選びや調理方法を工夫してみましょう。
リン酸塩を摂り過ぎていないか食生活を見直しましょう
リンは骨や歯を形成するなど体に必要不可欠な栄養素ですが、摂り過ぎると鉄やカルシウムの吸収を妨げるなど悪影響をおよぼします。
リンはリン酸塩として食品添加物に利用されているため、加工食品や外食中心の食生活では過剰摂取となるおそれがあります。
健康を保つためには、適切な量の栄養素を摂取することが重要です。リン酸塩の摂り過ぎになっていないか、毎日の食事メニューをチェックしてみましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。