「ビタミンD」の働きとは?
役割や含まれる食べ物、1日の摂取量について解説

ビタミンDは体をすこやかに保つうえで欠かせないビタミンです。ビタミンD不足は骨などの健康に影響をきたす可能性があるため、日頃から意識的に摂取することが大切です。

今回はビタミンDの働きや摂取目安量、ビタミンDの不足や過剰によって起こりうる不調について解説します。

1.ビタミンDとは

ビタミンDは脂溶性ビタミンの1種です。人体にとって重要なビタミンDは、高い生理活性を示す植物由来のビタミンD2と、動物由来のビタミンD3の2タイプに分けられます。

ビタミンDを摂取するには2つの方法があり、1つ目は食品からビタミンD2やD3を摂取する方法です。もう1つの方法として、日光(紫外線)を浴びて皮膚からビタミンD3を合成することができます。体内のビタミンDは肝臓・腎臓で代謝を受けて活性化し、カルシウムやリンの代謝に関わって骨を強くしたり、血液中のカルシウム濃度を適切に維持したりする機能に関わります。

2.ビタミンDのおもな働き

ビタミンDのおもな働きは、「強い骨を維持すること」と「血液中のカルシウム濃度を一定に保つこと」です。そして、ビタミンDは小腸で骨の重要な成分であるカルシウムとリンの吸収を促進します。

また、ビタミンDは「カルシトニン」や「副甲状腺ホルモン(パラトルモン)」というホルモンと協力しながら血液中のカルシウムなどの濃度を調節して、一定に保っています。カルシウムは骨だけでなく筋肉や神経でも重要な働きをするため、人体が正常に機能するためにもビタミンDは大切です。

3.ビタミンDが不足すると生じうる症状

ビタミンDが不足すると、小腸でカルシウム・リンを十分に吸収することができなくなります。特に高齢者では、長期間ビタミンD不足が続くと、骨密度が低下して骨折のリスクが高まることに注意が必要です。

ビタミンDが不足する原因として、食事から摂るビタミンDの不足や、摂取したビタミンDの消化管からの吸収不良、腎臓でのビタミンDの活性化の不調などが考えられます。
また、日照不足もビタミンDの不足につながります。例えば、積雪寒冷地域に住む完全母乳栄養児では、日照を受ける機会が少ないと、ビタミンD不足を起こしやすくなることが知られています。強い骨を維持するために、食事や日光浴でビタミンDを取り入れるよう意識しましょう。

4.ビタミンDの1日の摂取量

ビタミンDの摂取量の目安は、成人では男女ともに8.5μgです。ビタミンDの目安量は厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」に示されており、前版(2015年版)から最新の2020年版への改定にともなって、1日あたりの目安量が5.5μgから8.5μgへと引きあげられています。

ビタミンDの1日当たりの目安量と耐容上限量を、年齢ごとに紹介します。

性別 男性 女性
年齢 目安量 耐容上限量 目安量 耐容上限量
(μg/日) (μg/日) (μg/日) (μg/日)
0~5(ヶ月) 5 25 5 25
6~11(ヶ月月) 5 25 5 25
1~2(歳) 3 20 3.5 20
3~5(歳) 3.5 30 4 30
6~7(歳) 4.5 30 5 30
10~11 (歳) 6.5 60 8 60
12~14 (歳) 8 80 9.5 80
15~17 (歳) 9 90 8.5 90
18~29 (歳) 8.5 100 8.5 100
30~49 (歳) 8.5 100 8.5 100
50~64 (歳) 8.5 100 8.5 100
65~74 (歳) 8.5 100 8.5 100
75以上 (歳) 8.5 100 8.5 100
妊婦 8.5
授乳婦 8.5


※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)

ビタミンDの目安量は、日照によって皮膚で合成されるビタミンDの量を考慮して設定されています。日本人の食事摂取基準によると、「この値を一律に適用するのではなく、夏期又は緯度の低い地域における必要量はより低い可能性を考慮するなど、ビタミンDの特質を理解した活用が求められる」とされています。

5.ビタミンDを含む食べ物

ビタミンDの豊富な食品の例を紹介します。

5-1.動物性食品

食品名 1食あたりの重量(g) ビタミンD (μg)
1食あたり 100gあたり
しろ鮭(焼き) 80 31.2 39
べに鮭(焼き) 80 30.4 38
うなぎ (かば焼き) 80 15.2 19
さんま(焼き) 100 13 13
さば缶詰(水煮) 90 9.9 11
鶏卵(生) 60 2.3 3.8

(文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに作成)

魚肉にはビタミンDが多く含まれており、特に鮭やうなぎ、さんまなどはビタミンDが豊富です。貝やエビにはほとんど含まれていません。また、魚肉に比べて少ないものの、鶏卵にもビタミンDが含まれています。

5-2.植物性食品

食品名 1食あたりの重量(g) ビタミンD (μg)
1食あたり 100gあたり
あらげきくらげ(油炒め) 30 11.4 38
まいたけ(油炒め) 30 2.3 7.7
まいたけ(ゆで) 30 1.8 5.9
エリンギ(ゆで) 30 0.8 2.6
ぶなしめじ(ゆで) 30 0.3 0.9

(文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに作成)

きのこ類はビタミンDが豊富で、特にきくらげには多く含まれています。比較的安価で低カロリーであり、食物繊維も豊富であるため、日頃の食事に取り入れやすい食材なのではないでしょうか。

ビタミンDで骨と健康を保ちましょう

ビタミンDは骨の健康に関わる重要なビタミンです。不足すると骨が弱くなったり、さまざまな体調不良につながったりする可能性があります。ビタミンDは魚肉やきのこ類に豊富に含まれているため、意識的に摂るとよいでしょう。また、日光浴をすることも皮膚でのビタミンDの生合成を促すために大切です。

ビタミンDは食事で補うことができますが、不足している場合には日光浴をしたり、サプリメントで補うようにしましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医