「ビタミンE」の働きとは?
役割や含まれる食べ物、1日の摂取量について解説

ビタミンEは、美容に欠かせないビタミンともいわれますが、健康を維持するためにも大切な栄養素です。健康を維持するうえでも普段の食事などに気を遣い、ビタミンEを摂取するとよいでしょう。

今回は、ビタミンEの働きと含まれている食べ物、1日の摂取量について解説します。

1.ビタミンEとは

ビタミンEは、脂溶性ビタミンに分類され、8つの種類(4種のトコフェロールと4種のトコトリエノール)が存在します。また、体内に存在するビタミンEの90%がα-トコフェロールと呼ばれ、細胞膜や脂質に多く含まれており、多価不飽和脂肪酸の酸化を防ぎます。

2.ビタミンEのおもな働き

ビタミンEのおもな働きは、大きく下記の3つがあります。

2-1.不飽和脂肪酸の酸化防止

不飽和脂肪酸は、魚や植物の油に多く含まれている脂肪酸です。不飽和脂肪酸は細胞膜を構成したりするために必要で、体内で合成できない必須脂肪酸にあたるため、食品などから摂取しなければなりません。

しかし、不飽和脂肪酸は、熱、光、空気で酸化しやすい特徴があります。酸化すると過酸化脂質へと変化しやすくなり、細胞を傷つけてしまうので、過酸化脂質への変化は防ぐ必要があります。ビタミンEは、抗酸化作用によって不飽和脂肪酸の酸化を抑制する働きがあります。

2-2.活性酸素の働きを抑える

呼吸によって取り込まれた酸素の一部は、活性酸素へと変化します。活性酸素は、少量では免疫機能において重要な役割をはたしていますが、活性酸素が過剰に産生されると過酸化脂質を作ります。ビタミンEは、抗酸化作用があり、活性酸素の働きを抑制するビタミン「抗酸化ビタミン」です。過酸化脂質が作られるのを抑える働きも持ちます。

2-3.老化の防止

活性酸素の過剰産生や、酸化ストレスによる影響で老化が進行するといわれております。ビタミンEは、活性酵素の働きを抑制し、老化の防止につながるとされています。

3.ビタミンEが不足しやすい人の特徴

ここでは、ビタミンEが不足しやすい人の例を紹介します。

3-1.ビタミンEが不足しやすい人は?

ビタミンEは、通常の食生活では不足することはないとされています。ただし、脂溶性ビタミンに分類され、水に溶けにくい性質があります。そのため、脂質吸収障害が長く続いている方や無β-リポタンパク血症など脂質代謝に問題がある方は、ビタミンEが不足することがあります。

3-2.ビタミンE過剰症はある?

ビタミンEは、通常の食生活では過剰摂取が起こらないとされています。しかし、ビタミンEを過剰摂取してしまうと、体調に影響がでることもあります。そのため、サプリメントを飲む際には、用法・用量を守って飲むようにしましょう。

4.ビタミンEの1日の摂取量

ビタミンEの1日の摂取量について、目安量と耐容上限量は下表の通りです。目安量は、一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量で、耐容上限量は健康障害を起こすことがないとされる量です。

なお、2019年の国民健康・栄養調査では、男性では平均7.0mg/日、女性では平均6.5mg/日摂取しており、目安量以上、耐容上限量未満になっています。

性別 男性 女性
年齢等 目安量 (mg/日) 耐容上限量 (mg/日) 目安量 (mg/日) 耐容上限量 (mg/日)
0~5(月) 3.0 3.0
6~11(月) 4.0 4.0
1~2(歳) 3.0 150 3.0 150
3~5(歳) 4.0 200 4.0 200
6~7(歳) 5.0 300 5.0 300
8~9(歳) 5.0 350 5.0 350
10~11(歳) 5.5 450 5.5 450
12~14(歳) 6.5 650 6.0 600
15~17(歳) 7.0 750 5.5 650
18~29(歳) 6.0 850 5.0 650
30~49(歳) 6.0 900 5.5 700
50~64(歳) 7.0 850 6.0 700
65~74(歳) 7.0 850 6.5 650
75以上(歳) 6.5 750 6.5 650
妊婦 6.5
授乳婦 7.0


※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)

5.ビタミンEを含む食べ物

5-1.植物性食品

食品名 1食あたり の重量(g) α-トコフェロール(mg)
1食あたり
西洋かぼちゃ(ゆで) 100 4.7
アーモンド(フライ味付け) 15 3.3
ほうれん草(ゆで) 80 2.1
ブロッコリー(電子レンジ) 50 1.7
さつまいも(蒸し) 100 1.5

5-2.動物性食品

食品名 1食あたり の重量(g) α-トコフェロール(mg)
1食あたり
はまち(生) 80 4.4
うなぎ(かば焼き) 80 3.9
いわし缶詰(油漬) 40 3.3
たらこ(生) 40 2.8
さば缶詰(みそ煮) 90 1.7

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

ビタミンEは適量摂取しよう

ビタミンEは、細胞膜や脂質に多くあり、不飽和脂肪酸を防止したり、活性酸素の働きを抑えたりするほか、老化防止といった働きを持ちます。通常の食生活でビタミンEが不足することは基本的にありませんが、脂溶性ビタミンであるため、脂質の吸収や代謝に問題がある場合には欠乏症になる可能性があります。

ただし、ビタミンEを過剰摂取すると体調に影響がでる場合もあるので、違和感があればすぐに医療機関を受診するようにしましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。