水分の取りすぎが高血圧をまねく?
水分と血圧の関係性について

水は人間の生命維持に欠かせませんが、過剰に摂取するのも良くありません。水分の取りすぎは、血液量を増やす方向に働いたり、血中のナトリウムと水分のバランスを乱したりする場合があるためです。

今回は、過剰な水分摂取が血圧に与える影響や一日に必要な水分量、適切な水の飲み方などについて解説します。

1.過剰な水分摂取が血圧に与える影響

水分を過剰に摂取すると、血液量の増加につながります。血液量が増えると、血液を全身に送るポンプである心臓は、たくさんの血液を送り出さなければなりません。そうして心拍出量が増加し、血圧が上昇します。

なお、腎臓は、血液中の老廃物をろ過して血液をきれいな状態に保ったり、過剰な水分や塩分を尿として排出し水分と塩分のバランスを維持したりしています。しかし、水分や塩分の取りすぎなどで血圧の高い状態が続くと腎臓に負担がかかり、腎機能の低下をまねくため注意が必要です。腎機能が低下すると、水分・塩分の排出がスムーズに行なわれず、血液量が増えてさらに血圧が上昇します。

このように、血圧が上がると腎臓に負担がかかって腎機能が低下し、その結果としてさらに血圧の上昇につながるという悪循環が生じるおそれがあります。血圧を適切に保つためにも、塩分・水分は適切な摂取量に留めましょう。

2.水分不足にも注意が必要

水分の取りすぎだけでなく、水分不足にも十分に注意しましょう。水分補給が不足すると血液に含まれる水分量も減ってしまい、血液がドロドロした高粘度の状態になって血管が詰まりやすくなります。

また、体内の水分は5%失われるだけで脱水症状や熱中症の症状が現れ、20%喪失すると重篤な状況に至ることが知られています。

脱水を起こすと体のだるさや口内の渇き、立ちくらみなどの症状が多く現れますが、脱水の初期には自覚症状が出ない人もいるため注意が必要です。脱水を避けるために、水分摂取をこまめに行ないましょう。

3.一日に必要な水分量

人体の約60%が水分で、成人が一日に排出する水分量は約2.5Lです。このため、適切な水分を維持するには、一日あたり約2.5Lの水分摂取が欠かせません。

一日に必要とされる約2.5Lの水分のうち、約1Lは食事中から得ることができ、約0.3Lは体内で生成されています。そのため、飲み水としては毎日1.2L程度を摂取しましょう。

水分を摂取するときは、一度に多くの量を飲むのではなく、こまめに飲むのがポイントです。1回あたりコップ1杯ほど(150~250ml)の水を、一日に6~8回摂取するのを目安としてください。起床時や運動後、入浴後や寝る前など、水分の失われやすいタイミングに合わせて水分補給を行なうことが大切です。

高血圧の方は水分の取りすぎに注意して健康を維持しましょう

成人では一日あたり1.2L程度の水分を、水などの飲み物から摂取する必要があります。必要量を超えて大量の水分を摂取すると、血圧の上昇などにつながる場合もあるので注意しましょう。

また、水分が不足すると脱水などを引き起こす危険もあるため、日頃から適量の水分摂取を習慣付けることが大切です。

健康的な毎日を送れるよう、こまめに水分摂取を行ないましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医