1.酸化とは?
酸化とは化学反応の一種で、酸素原子が何らかの分子に結びつくことを指します。人間が食べ物として取り入れた栄養素からエネルギーを作りだすためには、酸化すなわち栄養素を燃やすことが不可欠です。
体内に取り込まれた酸素の一部は、活性酸素に変化します。活性酸素は反応性の高い(他の物質を酸化させやすい)酸素のことを指し、細胞伝達物質や免疫機能として働きます。
このように生命維持に欠かせない酸素ですが、過剰な活性酸素は細胞を傷付ける作用もあり、病気を引き起こす要因の一つです。
その他、細胞を傷付けたり死滅させたりする作用で、活性酸素は老化を早める一因にもなります。
2.酸化により起こる「酸化ストレス」の原因とは
活性酸素が過剰になり、抗酸化力とのバランスが崩れると「酸化ストレス」が生じます。酸化ストレスが体に与える影響と、酸化ストレスを増やす原因を見ていきましょう。
2-1.酸化ストレスとは
過剰な活性酸素は体を傷付けるおそれがあるため、体内には活性酸素から体を守るシステム(抗酸化防御機構)が備えられ、これにより活性酸素のバランスは保たれています。
そして、このシステムでは対処できないほどの活性酸素が作り出され、バランスが崩れている状態が酸化ストレスです。
酸化ストレスの状況下では、細胞内のDNAやタンパク質なども酸化します。酸化された分子が体内にたまっていくと、さまざまな病気の引き金になると考えられているため、注意が必要です。
したがって、健康で長生きするためには、過剰な活性酸素の攻撃力を減らすことが大切といえるでしょう。
2-2.酸化ストレスの原因
酸化ストレスを高める原因には、次のようなものが挙げられます。
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・紫外線、放射線
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・大気汚染
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・喫煙
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・薬剤
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・古い油や加工食品の摂りすぎ など
また、適度な運動は体に良いとされていますが、体に負担をかけすぎる運動はかえって酸化ストレスを発生させてしまいます。その他、心身のストレスも酸化ストレスを高める原因の一つです。
3.酸化に負けない生活習慣
酸化ストレスに対処するためには、体の抗酸化力を高めることが大切です。ここでは、体を酸化から守る体内システムの解説と、抗酸化力を高めるための生活習慣のポイントを紹介します。
3-1.生体に備わっている抗酸化防御機構
人間の体には、活性酸素から身を守る抗酸化防御機構があり、活性酸素が過剰に作られるのを抑えたり、受けたダメージの回復を行なったりしています。
なお、抗酸化防御機構には、体にもともと備わっている内因性のものと、食品やサプリメントで摂取する外因性のものがあります。
内因性の抗酸化防御機構であるスーパーオキシドジスムターゼやグルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼなどは体内に存在し、体の内側から酸化を防ぐ抗酸化酵素です。これらは年齢を重ねるにつれて減少するため、食品に含まれる外因性の抗酸化物質を補わなければなりません。
食品に含まれるおもな抗酸化物質には、ビタミンA・C・E、カテキン類、カロテノイド類などがあり、活性酸素の無害化や活性酸素の影響を受けた細胞の回復を促す作用を持ちます。加齢による抗酸化力の衰えは止められませんが、食生活や生活習慣の改善で酸化に対抗することは可能です。
3-2.酸化を予防する生活習慣
酸化ストレスを抑えるためには、栄養バランスが整った食事を摂り、十分な睡眠、適度な運動習慣を心がけることも大切です。
食事については、抗酸化ビタミンや抗酸化成分を豊富に含む食品をバランス良く摂りましょう。
抗酸化ビタミンにはビタミンA・C・Eが、抗酸化物質にはポリフェノール(カテキン、アントシアニン、大豆サポニン)などが挙げられます。それぞれを多く含む食品は次のとおりです。
抗酸化ビタミン・抗酸化成分 |
食品 |
ビタミンA |
モロヘイヤ・にんじん・西洋かぼちゃ |
ビタミンC |
アセロラ・赤ピーマン・ネーブル |
ビタミンE |
アーモンド・西洋かぼちゃ・うなぎ |
アントシアニン |
ブルーベリー、赤ワイン |
カテキン |
緑茶 |
大豆サポニン |
大豆、納豆、豆乳 |
参照:全国健康保険協会「■体がサビついている!?抗酸化食品のすすめ」
抗酸化食品を取り入れてサビつかない生活を送りましょう
人間が生きていくうえで酸素は必要な物質ですが、体内で過剰に産生された活性酸素は細胞などに悪影響を与えて病気のリスクを高めるほか、体の老化を促します。
上記のような作用があることから、活性酸素には悪いイメージを抱いてしまうかもしれませんが、活性酸素は感染から身を守る、細胞間のシグナル伝達を行なうなど有益な作用も持っています。
つまり、大切なのは活性酸素の除去ではなく、体の抗酸化力を強めることです。抗酸化食品を摂取して生活習慣を整え、酸化への抵抗力を高めましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。