耳鳴りとは?3つの種類とおもな原因について解説

耳鳴りは、鳴っていないはずの音が聞こえる症状です。高齢者の症状と思われがちですが、若い世代でも発症するケースもあります。

耳鳴りは命に関わる症状ではありませんが、生活に支障をきたすこともあります。耳鳴りの原因は複数あり、それぞれ対処法も異なるため違いをしっかり確認しましょう。

今回の記事では耳鳴りのおもな3つの分類、若い世代も気を付けるべき耳鳴りの原因と対策を解説します。

1.耳鳴りとは

耳鳴りとは、実際には鳴っていないはずの音が耳の中や頭の中で聞こえる状態です。

聞こえる音はさまざまで、高音や低音など環境や精神状態などによっても異なります。耳鳴りの音をキーン、ジー、シャーなどと表現する人もいます。耳鳴りのなかで加齢によるものが最も多く、60~70代を中心に発症しますが、それ以上の年齢ではかえって減少する傾向があります。

日本で耳鳴りに悩まされている人はおよそ1,200万人いると推測されていますが、近年では研究や治療法の開発が進んで耳鳴りの9割以上は改善するようになってきています。

2.耳鳴りの種類

耳鳴りは症状によって大きく2つに分けられます。それぞれの特徴について見てみましょう。

2-1.他覚的(客観的)耳鳴

他覚的(客観的)耳鳴とは、実際に耳の周辺で音が発生しているものです。顎関節や耳の周りの筋肉が動く音や、耳の周りの血液が流れる音、息をする際に生じる音などがあります。これらの音は、オトスコープという音を確認する道具で調べることができます。

2-2.自覚的(主観的)耳鳴

自覚的(主観的)耳鳴とは、客観的には確認できない耳鳴りのことです。ほとんどの耳鳴りは自覚的耳鳴であり、多くは難聴との関連が示唆されています。

実際に、耳鳴りに悩む人の9割以上は難聴であると判明しています。難聴とは音が聞こえづらくなることであり、耳鳴りに悩む人のほとんどは音を聞くメカニズムに問題があるといえるでしょう。

聞こえづらい音があると、音を補おうと脳は過度に反応します。その結果、音がないにも関わらず「音が聞こえる」と勘違いして感じてしまいます。つまり、自覚的耳鳴りの原因の多くは、音が聞こえにくくなった状態を補完しようとする脳の働きなのです。

3.耳鳴りの原因

耳鳴りとは、雑音を抑える脳の作用がうまく機能していないことで起こります。耳鳴りを引き起こす原因には、いくつかの原因があります。

ストレスがたまりすぎると、「ストレスサイン」と呼ばれる心や体に不調が現れることがあります。体に現れるストレスサインには、肩こりや頭痛、不眠、下痢、便秘などのほか、めまいや耳鳴りが挙げられます。

イライラや不安といった心のストレスサインが同時に現れることもあります。自分なりのストレスサインが現れたときは、休養を取り、気分をリフレッシュさせるなど早めのセルフケアを心がけましょう。

左右どちらかの耳の聞こえが前触れなく突然、悪くなることもあります。ストレスや過労、睡眠不足が関わっているとされ、40〜60代の働き盛りの世代に多い傾向にあります。発症1週間以内に適切な治療を始めると、およそ9割で完治もしくは改善がみられます。

しかし、治療のスタートが遅くなると完治が難しくなるため、聞こえの異常に気付いたときは早めに病院を受診しましょう。

ヘッドホンやイヤホンで大きな音を聴き続けることも問題視されています。大音量にさらされ続けることで、内耳にある有毛細胞(音を電気信号に変換して脳に伝えるための細胞)が傷つき、壊れていくことで次第に音が聞こえにくくなります。

周りに音漏れするほどの音量でヘッドホンやイヤホンを使用したり、長時間聞き続けたりしていると症状悪化のリスクが高まります。有毛細胞が壊れる前であれば、耳を休ませることで回復が可能です。予防するためには、音量を下げたり、休憩しながら聞いたりするようにしましょう。

また、周りの音を低減するノイズキャンセリング機能の付いたヘッドホンを選ぶのもよいでしょう。

まずは自分の耳鳴りの種類を把握することが重要

耳鳴りとひと言でいっても、他覚的耳鳴と自覚的耳鳴とでは発症原因も異なれば対処法もまったく異なります。

まずは自分の耳鳴りの種類を確認して、それに合わせた対策が必要です。

耳鳴りは放置しておくと、難聴を悪化させてしまうこともあります。耳鳴りで生活に支障が出る場合は、早めに専門医に相談しましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。