1.腸内フローラとは?
腸内フローラとは「腸内細菌の集団」を指します。正式名称は「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」です。
腸内にはおおよそ1,000種類の細菌が生息しており、数を合計すると100兆個以上にも達します。腸内細菌は菌種ごとに塊となって、腸壁に隙間なく密集して張り付いていますが、この様子が群生する「お花畑(flora)」のように見えることから、腸内フローラと呼称されることになりました。
また、腸内フローラは人によって構成が異なりますが、おもな要因は母親の腸内環境です。赤ちゃんは出産の過程で母親から腸内細菌をもらって、それを自分の腸内で増殖させていき、だいたい3歳までに腸内フローラの原型が形成されます。
なお、構成は基本的に一生変わることはありません。
2.腸内フローラを形成する菌の種類と働き
腸内フローラは大別すると「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」から形成されています。
善玉菌は乳酸や酢酸などを生成し、腸内を弱酸性に保つ役割を担っている菌です。腸内環境を酸性に傾けることで、悪玉菌が増えすぎないよう抑制しつつ、腸そのものを活性化できるので、健康づくりには欠かせない存在といえるでしょう。
悪玉菌は毒性物質を生成して、腸内環境をアルカリ性へと傾ける菌です。タンパク質・脂質メインの食事や不規則な生活によって増殖し、病気や食中毒を引き起こすケースも見受けられます。
ただ、タンパク質を分解し、便として処理および排泄する働きも持っているため、悪玉菌も体にとって必要不可欠な存在です。
日和見菌は上記に当てはまらない菌ですが、善玉菌・悪玉菌が争って優位になった側の菌と同様に働く特徴を持ちます。日和見菌を味方に引き込むことが、腸内環境を改善へと導くための必須条件といえるでしょう。
なお、これらの理想的な比率は、善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7です。
3.腸内フローラと健康の関係
腸内フローラは生活習慣病や肥満、花粉症といったアレルギー症状などにも影響します。
腸内フローラが整って善玉菌が増えると、病原菌・ウイルスによる感染症や食中毒の予防、病気の原因となる物質の産生抑制など、健康の維持・促進につながる効果を得られることが知られています。
また、善玉菌は各種ビタミン(B1・B2・B6・B12・Kなど)を腸内で産生することができます。これらのビタミンが十分にあれば、成長障害・皮膚炎などといった症状を予防することができます。
一方、腸内で悪玉菌が優位になると、便秘や下痢が現れる可能性が高まります。さらに、腐敗物や有毒ガスが発生すると、肌荒れの症状も引き起こされるため、腸内環境はきちんと整えたいところです。
腸内フローラの理解が腸活への第一歩
腸内フローラは腸内細菌の集団であり、さまざまな症状や病気に対して影響を及ぼすことが知られています。特に善玉菌が増えると多くのメリットを得られるため、食生活の見直しを行なうとよいでしょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。