1.一汁三菜とは?
まずは、一汁三菜の基本について解説します。
1-1.一汁三菜について
一汁三菜とは、ごはん(主食)に汁物1品、おかず3品を加えた食事のことで、和食の基本的な献立構成です。おかず3品のうち、1品は肉や魚などタンパク質の豊富な「主菜」、残りの2品はおひたしや煮物のなどビタミン・ミネラルを多く含む「副菜」を用意します。
なお、和食は「和食;日本人の伝統的な食文化」として、2013年12月にユネスコの無形文化遺産に登録されました。一汁三菜にすると、一回の食事でさまざまな栄養素をバランス良く摂取できるため、理想的といわれています。
1-2.和食の「まごわやさしい」について
「まごわやさしい」は、和食で用いられる食材の頭文字をとって作られた合言葉です。豆類(ま)、ゴマ(ご)、ワカメなどの海藻類(わ)、野菜類(や)、魚(さ)、シイタケなどのきのこ類(し)、イモ類(い)の7つの食材を表しています。
これらの食材を使うと、炭水化物やタンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などをバランス良く摂取することが可能です。
2.一汁三菜のメリット
一汁三菜スタイルの食生活には、おもに4つのメリットがあります。
2-1.食事の栄養バランスを良くする
1つ目のメリットは、栄養バランスの良い食事をとれることです。栄養豊富な「まごわやさしい」の食材を使うことで、理想的な栄養バランスになるといわれています。
2-2.レシピが豊富
2つ目に、旬の食材を活かしたレシピが豊富なことが挙げられます。旬の素材はおいしくて栄養価が高いため、季節感を楽しみながら良質な栄養を摂取することが可能です。
2-3.発酵食品が豊富に含まれている
3つ目のメリットとして、一汁三菜の食事には納豆や味噌、酢など発酵食品が多く含まれていることがあります。発酵食品は腸内環境を整えたり、免疫力に働きかけたりするうえで有用です。
2-4.低脂肪・低カロリー
4つ目に、低脂肪、低カロリーのメニューが多い点も一汁三菜のメリットです。和食の調理法は焼く・煮るなど油分の少ないものが多く、さらに出汁のうまみを活用すれば動物性油脂を控えめにすることができます。
3.一汁三菜スタイルの食生活のポイント
一汁三菜の食生活を送る際には、次の2つのポイントに注意しましょう。
3-1.カルシウム不足にならないようにする
和食メインの食生活では、カルシウム不足に注意しましょう。和食には乳製品を用いるメニューが少なく、カルシウムの摂取量が少なくなりやすいからです。
カルシウムは小魚や緑黄色野菜にも含まれ、これらの食材は和食にもしばしば使われますが、カルシウムの吸収効率という観点では乳製品のほうが優れているといえます。そのため、一汁三菜の食生活を送る場合には、牛乳やヨーグルトなどの乳製品も積極的に摂取し、カルシウムを補いましょう。
3-2.塩分の過剰摂取に注意する
一汁三菜の食生活では、塩分を摂り過ぎないよう注意するのもポイントです。和食には、醤油や味噌など塩分濃度の高い調味料が多く用いられます。また、漬け物や梅干しなども塩分が多く、注意しないと塩分過剰になってしまいます。
塩分の過剰摂取は、高血圧などの発症リスクを高めることが知られているため、適量に留めることが重要です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人における一日あたりの食塩の摂取目標量は男性7.5g未満、女性では6.5g未満とされています。それに対し、実際の食塩摂取量は男性約11g、女性約9gと、男女ともに塩分が過剰な状態にあるのです。
一汁三菜スタイルの食生活で塩分を抑えるには、天然だしのうまみを活用するとよいでしょう。酢のように、塩分を含まない調味料を使うのも効果的です。
一汁三菜を意識して健康的な食生活を送りましょう
一汁三菜の食事ではさまざまな栄養素をバランス良く摂取でき、低カロリー・低脂質のヘルシーなメニューにすることが可能です。「まごわやさしい」の7種類の食材を摂取して、健康的な食生活を目指しましょう。
また、和食ではカルシウム不足や食塩の過剰摂取などに注意が必要です。乳製品をメニューに加えてカルシウムを補給する、だしのうまみを活用して塩分を控えめにするなどの工夫をすると、和食の弱点に対処できます。
日本の文化ともいえる和食を、日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。