痰に血が混じる原因とは?
血痰が出た場合は緊急性を要する可能性も

痰が赤くなっていると驚いてしまいますよね。しかし、なぜ痰に血液が含まれて出てくるのでしょうか。

状態によってはすぐに病院を受診する必要があるケースもあり、注意が必要です。この記事では、痰に血が混じる血痰の原因や危険性について解説します。

1.痰に血が混じる原因とは

血液が含まれ赤くなっている痰を血痰と呼びます。血痰には、口や鼻、気管にできた傷や、肺の病気などさまざまな要因が隠されているため、原因をしっかり理解することが大切です。ここでは、痰の役割や血痰の原因について説明します。

1-1.痰の役割

痰とは、空気中の異物や細菌、ウイルスなどが体内に侵入するのを防ぐ粘液のことです。気道の中は、これらの異物をキャッチするために常に粘液で満たされており、免疫機能として作用しています。

通常の健康的な体であれば、喉に運ばれる粘液はごく少量のため、自然に飲み込まれて痰になることはほぼありません。しかし、感染症や炎症など何らかの異常がある場合、痰として出てきます。

出てきた痰の色は、透明や黄緑、赤いものまで体の状態に応じて変化するため、状態を把握するためには非常に重要です。一方で、細菌に感染している可能性が高いケースでは、黄色や緑黄色など色が付いています。

痰がうまく外に出せないと気道が狭くなるため、呼吸困難や息切れをすることがあります。さらに、酸素を肺の中に十分に取り入れられない状態が続くと、肺の酸素化能(機能)が低下するでしょう。痰を排出するために咳の回数が増えると、寝不足になったり、疲れが出たりすることもあり、生活の質が落ちる原因になります。

とはいえ、有害なものを体外に出す役割のある咳を、薬でむやみに止めるのはおすすめできません。

特に老化によって機能が低下し、咳をしにくくなっている高齢者は要注意です。痰の誤嚥を防ぐために、咳を出しやすくする薬を医師から処方されるケースもあります。そのため、咳止め薬を使用する場合は、医師に相談してから服用しましょう。

状況によっては、早急に医療機関で対応しなくてはならないこともあります。いつもと違うと感じた場合は、医療機関を受診することが大切です。

1-2.痰に血が混じる原因

痰に血液が混じるおもな原因には、以下の4つがあります。

  • ・強い炎症が起きている

  • ・口・鼻・気管などに傷がある

  • ・飲んでいる薬の副作用

  • ・肺に関連する病気

炎症が悪化して血液の混ざった赤っぽい痰になる場合は、体の内部が傷ついて出血しているケースが考えられます。出血が少量であれば、特に心配する必要はありません。

また、飲んでいる薬の副作用によって肺胞出血が起こり、血液が痰に混じることもあります。

さらに、肺の病気で血痰になるケースもあります。例えば、喫煙する方で咳が長く続いたり、赤い痰が出たりするときは、要注意です。

2.痰に血が混じっている場合は緊急性を要することも

痰に血が混じる原因にはさまざまなものがあります。炎症の悪化や肺からの出血、深刻な病気など緊急性を要するケースもあり、そのまま放置するのは危険です。

上記で述べた血痰でも粘り気のないサラッとした状態であれば、多量に出血している可能性があるため、すぐに医師に相談しましょう。また、肺胞出血が原因と考えられる血痰は、さまざまな薬が原因となるため、薬を飲んでいる期間に血痰が出たときは注意が必要です。

また、咳をともなう場合も注意しましょう。2週間以上続く咳は、肺や気管の重い疾患の可能性もあります。

病院を受診する際は、医師にご自身の症状や経過を詳しく説明できるように、記録しておきましょう。例えば、次のような点を記録することをおすすめします。

  • ・症状が出る時間帯

  • ・症状が出始めた時期

  • ・痰の色

  • ・胸の痛み

  • ・発熱や膿み

  • ・息切れや呼吸するときにゼイゼイ音がするかどうか

  • ・慢性疾患の有無

  • ・症状はいつもなのか、今回だけなのか

  • ・痰と咳がともなっているかどうか

これらの情報には、重要な病のヒントが隠されているため、医師に正確に伝えることが大切です。

痰に血が混じったら状況に応じて受診しましょう

痰は、体内に取り込まれた有害な物質を外に出す重要な役割があります。痰の色によって健康状態がわかるため、体からの大切なサインといえます。

もし痰に血が混じっている場合は、炎症の悪化や口や鼻などから出血している可能性、肺の病気などさまざまなことが考えられます。出血量が多かったり重篤な病気を患っていたりするケースでは、緊急性が高く早急に治療が必要です。

そのため、普段から痰の状態を確認し、健康状態を把握しておきましょう。少しでも違和感や不安を覚えたら、すぐに医師へ相談することをおすすめします。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。