1.何度からが低体温?
実は、低体温には具体的な定義はなく、体の表面温度が36.0度を下回ると低体温とするケースが多く見受けられます。しかし、体温には個人差があり、平熱は35.5~37.5度が正常と考えられています。そのため、35.5度を下回ると低体温とみなしてよいでしょう。
低体温になると、免疫力の低下によって風邪などの感染症にかかりやすくなります。これは、寒さによって体の表面が冷えることで体がストレスを感じ、脳から分泌されるホルモンや神経伝達物質によって一時的に免疫力が下がるためです。
その他、臓器や体の機能が低下することで関節、胃腸などの病気、肩こりや腰痛といった不調を引き起こす可能性があります。
低体温は冷え性と混同されがちですが、2つの症状は異なります。冷え性は高齢の女性に多くみられますが、寒くない状況であっても手足などが冷えてつらさを感じる症状です。例えば、暖かい室内にいるにも関わらず、指先が冷たく感じたり、布団のなかで足が冷えて眠れなかったりすることが挙げられます。
しかし、低体温と違って実際には体温は下がっていなかったり、手足を触っても冷たくなかったりすることもあります。冷え性の方は、手足の冷えに加えて肩こりや関節痛、不眠、胃腸の不調などをきたす場合も少なくありません。
2.低体温の原因
次のような状況は、低体温をまねくとされています。「低体温かも」という方は、自分にあてはまるものがないか確認してみましょう。
加齢や、食生活の偏りによる栄養状態の悪化、運動不足などは筋肉量を低下させます。筋肉が減ると基礎代謝が低下し、十分な熱を作り出せなくなり低体温を引き起こすことがあります。つまり、低体温を改善するには代謝を上げることが大切です。
甲状腺や下垂体、副腎といったホルモン分泌に関わる臓器の機能が低下すると、低体温の原因となる場合があります。低体温で悩んでいる方は、一度病院で検査を受けてみると原因が見つかるかもしれません。
また、低温環境は命に関わる状態につながりかねません。体表温度が低くなる低体温は病気ではありませんが、深部体温が35度以下になる低体温症になると体の機能を保てなくなります。深部体温は脳や心臓といった生命維持に関わる臓器の温度と連動しており、重度の低体温状態をそのままにしていると臓器の機能が低下して危険な状態に至ります。
例えば、山での遭難事故や水難事故、災害現場など、寒い場所に長時間いる、冷たい水につかったままでいると、命に関わる可能性があります。自然のなかでレジャーを楽しむ際は、防寒着や非常食を準備するなど万全の対策を行ないましょう。
3.生活習慣の変化も低体温に影響
およそ60年前の1957年に行なった研究では、日本人の平均体温は36.89±0.34度(わき下検温)でしたが、現在では36.10度と以前に比べて下がっています。すべてを同一条件で調査したわけではないため一概にはいえませんが、日本人は低体温化している可能性があります。
低体温化の原因として考えられるのが、基礎代謝の低下です。現代人は運動不足によって筋肉量が減り、体温の低下につながっていると考えられます。その他、激しすぎるダイエットや社会全体の高齢化、エアコン使用による体温調節機能が弱まっていることも低体温の原因と考えられます。
低体温を改善するには、運動習慣を身に付けて筋力を維持することが大切です。ウォーキングやスクワットといった無理のない運動で代謝を上げましょう。また、40度ほどのお湯での入浴や体を温める食材を活用して、体の外と内から温めるのもよいでしょう。生姜・発酵食品・根菜類を食生活に取り入れるのがおすすめです。
そして、体を冷やさないよう、部屋の温度はエアコンなどを利用して18度以上となるように設定しましょう。寒い季節に外出する際は、手袋や帽子、マフラーといった防寒具で冷えを防ぐのも効果的です。
低体温予防のためにはまず原因への対策から
生活環境や生活習慣の変化から、日本人の体温は昔よりも低くなっています。低体温は免疫力を下げ、さまざまな病気や不調をまねくため、改善することが大切です。
継続的な運動で筋肉量を保ち、体を温める食生活を心がけましょう。
物理的に体が冷えないよう適切な防寒着の利用や、お風呂で体を温めるのも有効です。検温していて、低体温と感じている方は思い当たる原因に応じた対策を始めてみましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。