乳酸とは?疲労や乳酸菌との関係性について解説

乳酸は日常でも耳にするものですが、体内でどのように働いているかあまり知らないという方は多いのではないでしょうか。

疲労を連想するかもしれませんが、最近ではエネルギーを作り出したり、筋肉の動きを助けたり、これら以外にも健康に役立つ作用がわかっている物質です。

今回は乳酸とはどのようなものか、また、疲労や乳酸菌との関係について説明します。

1.乳酸とは?

乳酸とは、解糖系と呼ばれる代謝経路で糖質が分解されたときに発生する物質であり、食品など体外にも存在しているものです。

人の体内では、筋肉中でエネルギーを作るときにグリコーゲンという糖が分解されたときに生成されます。またジョギングなどの有酸素運動よりも、短距離走などの無酸素運動でより多く作られます。

作られた乳酸は、中和されるとミトコンドリアにより酸化されてエネルギーとして再利用されますが、再利用される量よりも生成される量が大きくなると、体内に蓄積することになるのです。

また、食品においては発酵食品などに含まれています。医薬品がなかった時代には体力をつけるために発酵食品が食べられていたこともあり、三重県の郷土料理である「なれずし」や、北海道の「飯寿司」のように、長期保存を目的として乳酸発酵が利用されたものがあります。

2.乳酸と疲労の関係

激しい運動をしたあとに蓄積することから、乳酸は疲労物質と呼ばれてきました。

しかし最近では、乳酸の生成過程で発生する水素イオンにより、筋肉のpHバランスが酸性に傾くことが疲労の原因と考えられているのです。

また、疲れには乳酸ではなく、活性酸素が関係していることも判明しています。

活性酸素は体が酸素を燃やしてエネルギーを作るときに増える物質です。通常であれば体内の抗酸化が働いて除去されますが、ストレスや肉体の活動量が増加すると活性酸素が多く発生し、抗酸化が追いつかず体に残ることになります。

活性酸素により細胞がさびついてしまうため、栄養を取り込んだり、エネルギーを作ったりといった活動が弱くなり、疲れを感じるようになってしまうのです。

一方、乳酸は肝臓においてグリコーゲンという糖に合成されてエネルギーとして再利用されるなど、エネルギー源という側面があります。

また、乳酸は筋収縮に必要なカリウムが失われないようにする作用を持ち、筋肉の疲労防止や、新しい血管の生成・傷の回復・体内のエネルギー工場であるミトコンドリアの新生・遺伝子発現の調整など、健康に役立つ作用が複数発見されています。

3.乳酸と乳酸菌の関係

乳酸菌とは、発酵によって糖類から乳酸を作り出す微生物の総称です。人の体に良い影響を与えてくれることから、善玉菌の一つとして知られています。

乳酸菌は便通やコレステロール、免疫機能に良い影響を与えてくれる菌です。菌種によって共通する働きだけでなく、菌種ごとに異なった特徴も持っており、ピロリ菌を排除するものや免疫力を上げる作用のある細胞壁が厚いものなど、さまざまな種類が発見されています。

乳酸菌にはさまざまな種類が存在しますが、ビフィズス菌とは異なる菌です。ビフィズス菌は分類学的にはビフィドバクテリウム属という菌属であり、乳酸菌はラクトバチルス属やストレプトコッカス属などの菌属が当てはまります。

また、乳酸菌のなかでも生きて腸に到達する微生物はプロバイオティクスと呼ばれ、プロバイオティクスを増やす作用を持つ成分(オリゴ糖や食物繊維)を持つものをプレバイオティクスといいます。

乳酸菌そのものを体内に取り込むことを心がけたいものですが、乳酸菌のエサとなる栄養を摂ることも健康に良い心がけです。

乳酸菌が含まれる食品には、ヨーグルトやチーズといった発酵された乳製品、しば漬けなどの漬物、日本酒などがあります。

乳酸はエネルギー作りに、乳酸菌は健康に役立つもの

乳酸は、体内での糖の分解時に発生する物質です。

乳酸には、ミトコンドリアで酸化してエネルギーになる、筋肉の収縮に必要なカリウムが漏れ出すのを防いで筋肉の疲労を防ぐ、肝臓でグリコーゲンという糖に再合成されるといった働きがあります。

また、新しい血管やミトコンドリアを作るとき、傷の修復、遺伝子発現調節においても乳酸が役立っているのです。

なお、食事においては乳酸菌の発酵により糖から乳酸が作られ、食品に酸味をもたらします。

乳酸菌自体は便通や免疫に良い効果が期待できるので、積極的に食事に取り入れるとよいでしょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医