脳の構造や部位、デフォルトモードについて詳しく解説

運動や思考、感覚、記憶、言語など、私たちの脳にはさまざま機能が備わっています。具体的に、どのような部位がどういった機能を担っているのか疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。

ここでは、脳の基本的なことから構造やそれぞれの役割、近年知られているデフォルトモードについて解説します。

1.脳とは?

人間の脳では、1,000億個にもおよぶ神経細胞が連携して回路を形成し、それぞれが電気信号を発信・受信して働いています。

全体像としては、運動や思考を司る大脳皮質、感情に関係する大脳辺縁系、体温やホルモン調節をする脳幹の大きく3つに分かれています。

脳の構造はとても複雑で、現在でも明らかにされていないことが少なくありません。思考や認知、脳の部位ごとの機能について不明な点は、現在でも多く残っています。

2.脳の構造とそれぞれの役割

ここからは脳について、大脳皮質・大脳辺縁系・脳幹の3つに分けて説明します。

2-1.大脳皮質

大脳皮質は「人の脳」と呼ばれ、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚といった五感や、運動・言語・思考など高度な機能を司っていて、脳の外側にあります。およそ140億個の細胞があり、前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉などが存在している部位が大脳皮質です。

前頭葉は思考や記憶の中枢であり、体を動かすための運動野や発語の中枢であるブローカ野、脳内の保存されている情報を集めて物事の計画や意思決定を行なう前頭連合野が存在しています。

頭頂葉は、刺激や痛みを感じるための感覚野、計算や文字の読み書きといった機能が備わっている部位です。

そして、側頭葉には聴覚の中枢やウェルニッケ野とよばれる言語理解の中枢が、後頭葉には視覚の中枢が存在しています。

つまり、人間の脳が高度な機能を持つのには、大脳皮質が非常に大きな役割を果たしています。

2-2.大脳辺縁系

大脳辺縁系は「馬の脳」と呼ばれ、喜怒哀楽などの感情や記憶を司る部分です。生きるための判断や働きを担い、危険なことに遭遇したら逃げる、食べ物があれば口にするなど、その後の結果の良し悪しに関係なく、素早い判断を行なうときに働く部位です。

また「記憶の司令塔」と呼ばれる海馬も、大脳辺縁系にあります。勉強して覚えたことなどは一度海馬に保存され、そのなかでも古い記憶は大脳皮質に保存されます。

一方で、海馬はとても繊細な部位です。そのため、強い心理的ストレスを受けたり酸素不足になったりした際には、海馬にダメージが現れることがわかっています。

2-3.脳幹

脳幹は「爬虫類の脳」と呼ばれ、体温調節・ホルモン分泌・呼吸などの生きるために基本となる働きや、反射・摂食・性行動など本能的な行動を司っています。

脳幹に分類されている部位は、間脳・中脳・橋・延髄です。

間脳には、視床や視床下部が存在しています。視床は皮膚などから伝わった情報を大脳皮質に伝える部位で、視床下部は体の生理活性に必要なホルモンやペプチドなどを作り出す部位です。

中脳は、姿勢反射や瞳孔反射における重要な部位です。間脳と橋に挟まれた場所に存在し、上丘部分が視覚の反射、下丘部分が聴覚の反射の中枢となっています。

そして橋と延髄は、さまざまな神経核の中継を行なう部位です。延髄には、呼吸・血圧・心拍・嚥下・嘔吐・角膜運動の中枢も存在しています。

3.脳のデフォルトモードとは

何も行動していないときにも、人間の脳は盛んに活動しています。これは、近年発見された脳のシステムで「脳のデフォルトモード」と呼ばれるものです。

このデフォルトモードの活動状態を観察すると、知能や性別、精神的な疾患の有無などの確認が可能と考えられています。

基本的なことは未解明な点もありますが、デフォルトモードは記憶を思い出したり、これからの行動計画を立てたりする際に役立つシステムです。

一方で、デフォルトモードが活発になると、嫌な記憶が思い起こされて限度を超えたときにうつ状態になるおそれがあります。脳の領域間のつながりに問題があるとデフォルトモードに異常が生じ、精神疾患につながりかねないことが示されているのです。

脳には複数の機能があり今でも未解明なこともある

脳の構造や部位、機能、デフォルトモードについて解説しました。

脳には1,000億個にもおよぶ神経細胞が存在し、多数の部位がさまざまな機能を持って複雑に連携しています。

部位は大きく3つに分けられ、大脳皮質では五感・運動・思考が、大脳辺縁系では感情や記憶が、脳幹では呼吸・ホルモン調節・体温など生命維持のための働きがそれぞれ備わっています。

近年では、脳のデフォルトモードといわれるシステムが存在し、安静にしているときも脳が活発に働いていることが判明しました。

脳にはいまだに解明されていない部分がありますが、デフォルトモードの解明により、精神疾患に関する研究が進んでいます。このように脳の仕組みが解明していけば、関連する疾患の有効な治療法の発見につながるでしょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。